エルフさんが通ります

るーるー

お酒の力

「な、なんでよ! 戦いなさいよ!」
「やぁですよぉ、私にお得なことがぁないしゃないですか」


 こんなわけのわからないことで決闘ばかり受けていたら私の予定は決闘まみれになってしまうじゃないですか。


「それにぃ、あなたのいう決闘って自分が勝つまでやめないじゃないですか。正直、里にいる時から死ぬほどうざかったです」
「う、うざかったって」
「口から出る言葉はやたらと族長の孫だ、勇者の血筋だといってますが本人はただのヘタレですし、才能はあっても……」
『リリカ?』


 ああ、なんだかお酒が入ってるせいか口がとんでもなく滑らかに動きますね。加えて里での思い出が思い出されますね。
 なんの気なしにベシュの後ろに控える二人に目をやります。


「ああ、そっちの二人はオーランドとガルムでしたか。オーランド、三本目、四本目の腕の調子はどうです? ガルムは筋肉は落ち着いたようですね」


 この二人は私の薬の実験…… 協力者でしたね。二人とも生きているようで何よりです。


「リリカ、今回は君には鳩は来てないはずだろ?」


 苦々しいと言わんばかりの表情を浮かべながらもオーランドが問うて来ます。鳩? なんですかねそれ。


「鳩がにゃにをさすかは知りませんがかんけいないんじゃないんですぅか?」
「そう願いたいものだ。我々としても君を相手にするのは非常に面倒だ」
「きらわぁれてますねぅ!」
「適正な判断だと思うが?」


 相変わらず堅苦しい喋り方ですね。その堅苦しい生き方のついでにとなりの爆弾娘をなんとかして欲しいんですがね。


「オーランド、今は私とリリカが喋ってるのよ!」
「え、あなたとの会話はおわっひゃでしょ?」
「ええ⁉︎」


 なんでそんな驚いたような顔をしているんですかね?
 元々そんなに話をしたいタイプの人ではないんですよね。なんというかキャラがウザすぎて一緒にいて非常に疲れます。


「そ、そんなこと言わずにね? ほら里から出てどれくらいお互いが強くなったとか確かめあうためにもね?」
「以前も言いましたが、強いか弱いかなんてそんなにじゅーよーではないんですよ。どうせ戦わなくてもあはたよりはちゅよいです」
「うう……」


 なんですか次は泣き落としですか。面倒ですね。
 見かねた私はすっと手を挙げます。


「戦ってくれるの⁉︎」


 ぱっと花が咲かんばかりに表情を明るくしたベシュですが私はゆっくりと首を降ります。


「ウェイトレスさん、火酒おかわりで!」
「酒の催促かよ!」


 ベシュが悔しげに音を立てながら地団駄を踏んでいます。子供ですか……


『リリカ、この子がさっき言ってた子?』


 くーちゃんが何処かのテーブルからかとってきたのか果物を齧りながら聞いてきます。そういえば果物きませんね。


「ええ、自然なウザさならあの大精霊イフリュートより上ですよ」
『そこまで……』


 呆然としているくーちゃんを他所に地団駄を踏み続けるベシュにため息混じりで視線を戻します。


「決闘を受けて欲しかったら里にいる時と同じように何か私に得ににゃるようなものを賭けてくだしゃい」
「得になるものと言っても……」


 こうやって言ってれば過去の経験から本当に私に得になるものか諦めるかをしたものですが……
 ん? ああ、いいのがありましたね。


「ベシュ受けてあげてもいいですよ。決闘」
「本当⁉︎」


 ああ、簡単に喜んじゃって。


「ええ、あなたが隠してる情報、私の知りたい情報を寄越すならね」
「おい、リリカ、それは……」
「乗ったわ!」


 オーランドが慌てて止めようとしていましたがそれより早くベシュが了承してしまいましたね。
 ベシュの了承の言葉を聞いた瞬間私はニヤリと唇を歪め笑います。


『あ、悪い顔だ』


 悪い顔じゃありません。企んでる顔ですよ。

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