エルフさんが通ります
どうやっていきましょうか
「最後の問題は移動手段ですね」
北門に向かいながら呟きます。
どうもドラクマに行く馬車というのはかなり少ないらしく、酷ければ一週間待たされるというのもあるという話です。
しかも、たまに消息不明になるらしいですからたちが悪い。
『他に方法はないの?』
流石に一週間も待つのは嫌なのかくーちゃんが顔を歪ませて問うてきます。
私も嫌ですよ。いつ正体がバレるかドキドキしながら生活するなんて。恋と勘違いしたらどうするんですか。
「そうなると徒歩なんでしょうが、十日はかかります。それも順調に行けばの話です」
ドラクマへ行く時に注意する点は二つ。
一つは魔物。やたらとすばしっこい奴が多いと聞きました。
もう一つは自然現象。よく知られていないらしいですがこれで命を落とす冒険者も多いということです。
「もしくは馬なり乗り物になるのを買うかですね」
『馬って高いんじゃないの?』
「軍馬とかは高いんでしょうが普通の馬はそんなに高くはない……はずです」
残りのお金も少ないですし節約したいところです。
野生の馬でも手に入ればいいんでしょうがね。
『野生の馬とかそう見つからないよ?』
「そうなんですよね。そこいらに落ちてるわけでもないですし何より生き物ですからね」
そんな都合良く……
そう考えている私の目は草を食べる馬に向いていました。
あの馬達には鞍が乗っていますし誰かの馬なんでしょう。紐で繋がれてますし。綺麗な毛並みをした黒い馬とかいいですね。
『なに考えてるの?』
「あの馬逃げ出したの捕まえたら私のになるなって考えてました」
『本当に外道だよね』
そんなに誉めないでくださいよ。照れてしまいます。
『ちゃんと物はお金を払って買わないとだめなんだよ?』
「非常に正論ですね」
確かにそうですね。里では物々交換がメインでしたからね。
しかし、待つという選択肢は私の中には存在しないわけですよ。
となれば……
そう考えた私は魔法のカバンに手を入れるとつい先日、お世話になったばかりのマスクを取り出したのでした。
◇◇
「泥棒! 泥棒だ!」
「そっちもか! うちもやられた!」
「ああ! 取引用の金貨が!」
周囲は騒然。当たり前でしょう。
私がさっきから目に入る貴重そうな物を片っ端から奪ってますからね。
ただ、奪ったら泥棒です。
だから手にしている貴重品を、あ、あの商人にしましょう。明らかに金貨がたっぷりと入った袋を持っていますし。
私は足音を消しながら移動、商人のすぐ近くまでよると腕を大きく振り上げ、
「てい!」
「あたぁ⁉︎」
声と共に商人の腕に向かい振り下ろします。
当然、商人の持っていた袋は商人の悲鳴と共に地面に転がります。
はたき落とし、地面に落ちたものを商人が拾い上げるよりも早く回収。呆然と手を伸ばす商人を無視して魔法のカバンに放り込みます。
「そ、それはワシの!」
「ごちそうさま!」
商人の声を無視して走り出します。次はあの食べ物を持っている人にしましょう。
「いだあ!」
「ごちそうさま!」
「おい、それは……」
「ありがとー」
「ひぃ、やめて!」
「ゴチになります!」
近づき、はたき落とし、そして奪う!
この三工程、これだけで一財産築けそうな勢いですね。
しかもこちらは仮面をつけているので正体はばれない。完璧です。
ハハハハハハハ!笑いがとまりませんね。
『外道ここに極まり』
「くーちゃん、結果が全てですよ」
必要なのは欲しいものを手に入れたという結果であり、過程ではないのです。とはいえ既にやりすぎましたかね。
「あいつだ! あのふざけた仮面!」
「あのやろうが!」
なにやら殺気だったもとい人に向けたらいけない類の物を手にしている人たちが私を囲み始めました。
そんなにお金が大事ですかねぇ。人の命はお金で買えないんですよ?
「なにか、私にご用意ですか?」
「ああああ? 用事も用事! ちょっと面貸せや」
「ははは、愉快な人ですね。顔が外れるて貸せる人なんていませんよ?」
外れたら人間じゃありませんよ。なかなかユーモアのある人ですね。
「こっちに来いって言ってんだよ!」
「一体、何の用があってです?」
「とぼけるな! お前がそこいら中から盗みを働いていることはわかってるんだ!」
全くこの人は。
私はやれやれと言った様子で肩を竦めます。どうやらその仕草が癇に障ったのかビキリと、武器を持った男の額に青筋が浮かび上がります。
「私が盗んだという証拠があ……ガシャン!
ガシャン?
私が言葉を発している中、大きな音が殺気立った空間に響き渡りました。
皆の視線が私の足元に向かっています。そうなると、自然と私の視線も足元に向かうわけでして。
眼を落とすと足元には金色の以下にも高そうな皿が転がっています。
『……』
私を取り囲む輪が無言で、しかし、音を立てながら一歩分小さくなりました。
「……」
私は無言で屈むと金の皿を拾い上げ、汚れを払うと魔法のカバンにしまいます。
きっちりと中にしまえたことを確認すると満足気に頷くと、
「私が盗んだ証拠がどこにあると言うんですか!」
大きな声で宣言しました。
「吊るしちまえぇぇぇぇ!」
怒り心頭と言った感じで目が血走った男達が襲いかかって来ました。
北門に向かいながら呟きます。
どうもドラクマに行く馬車というのはかなり少ないらしく、酷ければ一週間待たされるというのもあるという話です。
しかも、たまに消息不明になるらしいですからたちが悪い。
『他に方法はないの?』
流石に一週間も待つのは嫌なのかくーちゃんが顔を歪ませて問うてきます。
私も嫌ですよ。いつ正体がバレるかドキドキしながら生活するなんて。恋と勘違いしたらどうするんですか。
「そうなると徒歩なんでしょうが、十日はかかります。それも順調に行けばの話です」
ドラクマへ行く時に注意する点は二つ。
一つは魔物。やたらとすばしっこい奴が多いと聞きました。
もう一つは自然現象。よく知られていないらしいですがこれで命を落とす冒険者も多いということです。
「もしくは馬なり乗り物になるのを買うかですね」
『馬って高いんじゃないの?』
「軍馬とかは高いんでしょうが普通の馬はそんなに高くはない……はずです」
残りのお金も少ないですし節約したいところです。
野生の馬でも手に入ればいいんでしょうがね。
『野生の馬とかそう見つからないよ?』
「そうなんですよね。そこいらに落ちてるわけでもないですし何より生き物ですからね」
そんな都合良く……
そう考えている私の目は草を食べる馬に向いていました。
あの馬達には鞍が乗っていますし誰かの馬なんでしょう。紐で繋がれてますし。綺麗な毛並みをした黒い馬とかいいですね。
『なに考えてるの?』
「あの馬逃げ出したの捕まえたら私のになるなって考えてました」
『本当に外道だよね』
そんなに誉めないでくださいよ。照れてしまいます。
『ちゃんと物はお金を払って買わないとだめなんだよ?』
「非常に正論ですね」
確かにそうですね。里では物々交換がメインでしたからね。
しかし、待つという選択肢は私の中には存在しないわけですよ。
となれば……
そう考えた私は魔法のカバンに手を入れるとつい先日、お世話になったばかりのマスクを取り出したのでした。
◇◇
「泥棒! 泥棒だ!」
「そっちもか! うちもやられた!」
「ああ! 取引用の金貨が!」
周囲は騒然。当たり前でしょう。
私がさっきから目に入る貴重そうな物を片っ端から奪ってますからね。
ただ、奪ったら泥棒です。
だから手にしている貴重品を、あ、あの商人にしましょう。明らかに金貨がたっぷりと入った袋を持っていますし。
私は足音を消しながら移動、商人のすぐ近くまでよると腕を大きく振り上げ、
「てい!」
「あたぁ⁉︎」
声と共に商人の腕に向かい振り下ろします。
当然、商人の持っていた袋は商人の悲鳴と共に地面に転がります。
はたき落とし、地面に落ちたものを商人が拾い上げるよりも早く回収。呆然と手を伸ばす商人を無視して魔法のカバンに放り込みます。
「そ、それはワシの!」
「ごちそうさま!」
商人の声を無視して走り出します。次はあの食べ物を持っている人にしましょう。
「いだあ!」
「ごちそうさま!」
「おい、それは……」
「ありがとー」
「ひぃ、やめて!」
「ゴチになります!」
近づき、はたき落とし、そして奪う!
この三工程、これだけで一財産築けそうな勢いですね。
しかもこちらは仮面をつけているので正体はばれない。完璧です。
ハハハハハハハ!笑いがとまりませんね。
『外道ここに極まり』
「くーちゃん、結果が全てですよ」
必要なのは欲しいものを手に入れたという結果であり、過程ではないのです。とはいえ既にやりすぎましたかね。
「あいつだ! あのふざけた仮面!」
「あのやろうが!」
なにやら殺気だったもとい人に向けたらいけない類の物を手にしている人たちが私を囲み始めました。
そんなにお金が大事ですかねぇ。人の命はお金で買えないんですよ?
「なにか、私にご用意ですか?」
「ああああ? 用事も用事! ちょっと面貸せや」
「ははは、愉快な人ですね。顔が外れるて貸せる人なんていませんよ?」
外れたら人間じゃありませんよ。なかなかユーモアのある人ですね。
「こっちに来いって言ってんだよ!」
「一体、何の用があってです?」
「とぼけるな! お前がそこいら中から盗みを働いていることはわかってるんだ!」
全くこの人は。
私はやれやれと言った様子で肩を竦めます。どうやらその仕草が癇に障ったのかビキリと、武器を持った男の額に青筋が浮かび上がります。
「私が盗んだという証拠があ……ガシャン!
ガシャン?
私が言葉を発している中、大きな音が殺気立った空間に響き渡りました。
皆の視線が私の足元に向かっています。そうなると、自然と私の視線も足元に向かうわけでして。
眼を落とすと足元には金色の以下にも高そうな皿が転がっています。
『……』
私を取り囲む輪が無言で、しかし、音を立てながら一歩分小さくなりました。
「……」
私は無言で屈むと金の皿を拾い上げ、汚れを払うと魔法のカバンにしまいます。
きっちりと中にしまえたことを確認すると満足気に頷くと、
「私が盗んだ証拠がどこにあると言うんですか!」
大きな声で宣言しました。
「吊るしちまえぇぇぇぇ!」
怒り心頭と言った感じで目が血走った男達が襲いかかって来ました。
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