エルフさんが通ります
べ、別に心配していませんでしたよ?
魔力弾が粉砕し尽くした謁見の間はすでにもとの優雅さを完全になくし廃墟と化しています。王座などは完全に消し飛ばされ、背後の壁には特大の大穴。そこからは街の夜景が見えるほどです。
「見晴らしがよくなりましたね」
『この城、今後大丈夫かな?』
パラパラと天井から落ちてくる破片をくーちゃんは心配そうに見上げています。
すでに城のあちこちは魔石やフリングの魔力弾をくらい一気に耐久度は削られたでしょうからね。崩壊してもおかしくありません。
「これももうだめですね」
私は手元のフリングに目を落としながらぼやきます。
至る箇所にも細かなヒビがはいっており、魔力を込めても動く様子が全くみられません。完全に壊れたみたいですね。
もとはタダですから惜しくはありませんがね。壊れたフリングを放り捨て、私は魔剣を探します。すでに台座は魔力弾で消し飛ばしたのでどこかに転がっているはずなんですが。
『一緒に消し飛んでたりして』
「……それはないでしょう?」
一応魔剣ですよ? 王家に代々伝わるとか言ってたんですからちょっとやそっとでは壊れないでしょう。多分……
でも、もしかしたらってこともあるのかも……
『あれじゃない?』
「どれです⁉︎」
ネガティブな思考になりかけていた所にくーちゃんの発言。
くーちゃんが指差したほうに走るように歩いて行きますと確かに魔剣が転がっていました。よかった壊れてない。消し飛んでない。
べ、別に不安だったわけではありませんよ?
予想通り魔力弾は台座を完全に破壊していしていました。剥き出しの漆黒の刃を晒したままの魔剣に近づくと拾い上げます。
「思ったよりも普通ですね」
軽く魔剣を振りますが今の所ただの剣と代わり映えが全くしません。いや、ただの剣より丈夫でしょうから丈夫な剣ですかね?
持ち主以外は持ち上げれないとかと思ったんですが杞憂でした。
魔剣は特に私を拒絶することもなくただ振られるままです。試しに魔力でも流してみますか。
意識して魔剣に魔力を流し込みます。するとしっかりと握っているはずの柄から微かな振動が伝わってきます。
『なにこれ?』
くーちゃんの驚きの声に私も同感でした。漆黒の刃が先から変色。血のように生々しい紅色へと変わっていきます。全ての刀身が紅色に変わり、次に刀身が長剣から私の愛用している『旋風』と同じ刀へと変貌を遂げました。
「おお……」
変貌した元魔剣を楽しげにみながら私は先ほどと同じように魔剣を振ります。
軽く振る。それだけで刃から魔力が放たれ周囲を破壊の風が撫で回しています。
これはいいですね。作り直す手間が省けました。
『契約できたんだね』
「今のが契約だったんですね」
ただ魔力を流しただけなんですがね。
しかし、手に入ったならこんな埃まみれの城にいたくありません。さっさと帰るとしましょう。
私が踵を返して帰ろうとした時、悪寒を感じました。
すぐさま手にした魔剣を背後に向け一閃。
金属がぶつかる音が響き、攻撃を打ち払われた襲撃者は後ろに後退。魔剣を構えながら私は襲撃者を目視します。
「おやおや、この国に王様自らとは。よほど魔剣に執着があると見えますね」
私を背後から襲撃してきたのは王様。
手には魔剣とは違う黒い剣。
「……」
私の言葉など聞こえてないかのような無言。
しかし、私を見る目は血走っており口から涎が流れ落ちています。
『リリカ』
「ええ、ばっちぃですね。ちゃんと拭いて欲しいものです」
『え、そこ?』
そこでしょう? 汚いのは嫌ですし。
でも王様、全く生気のようなものが感じられませんね。
まるでゾンビみたいな……
「syaaaaaaaaaaaaaaa!」
王様の口から人間の声ではないものが謁見の間に響き渡ります。同時に黒い靄のようなものが王様を包み込み始めます。
「おお!? なんですか? あれ」
『なんか魔力纏ってるよ?』
つまり魔物ですかね? でもあれ王様ですよね? 
完全に理性をなくした状態なのかむちゃくちゃに剣を振り回してきます。剣技と呼ぶには幼稚なものですが無駄に速いですね。
仕方なしに私も応戦、紅い刃で首を跳ね飛ばすべく振り抜きます。
紅い線を描きながら放たれた一撃は狂うことなく王様の首を跳ね飛ばします。なにかギミックがあるかと思いましたが首は放物線を描きながら宙を舞いました。
「あっさり死んだ?」
興ざめですね。
あっさりとしすぎです。
試し斬りにもならなかったですね。
ため息を付きながら魔剣についた血を振り払います。あ、血は赤いんですね。
魔剣をしまう鞘がないのでむき出しの刃で持って帰るしかないですね。
『あぶないよ?』
「なにがです?」
くーちゃんの言葉に返答、そして衝撃。更に響く鈍い音、あげくに生じるけっこうな痛み。
「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私が悲鳴を上げる理由は十分です。
痛みをこらえながらも痛みの元を確認します。
痛みの元は左腕。そこに剣が叩きつけられていました。
さらに後ろを振り返ると首がない人? と言っていいのかわからない物が立っていました。
「あ~ 完全に魔物になってるんですね」
首を跳ね、確実に死んだと思っていましたけど魔物になってたら話は別ですね。
でもこれで私の試し斬りの対象ができたわけですね。
都合よく剣を持ち、殺しても誰にも文句を言われない魔物を見ながら私は痛みで顔を歪ませながらも仮面の下で口元だけ歪め笑うのでした。
「見晴らしがよくなりましたね」
『この城、今後大丈夫かな?』
パラパラと天井から落ちてくる破片をくーちゃんは心配そうに見上げています。
すでに城のあちこちは魔石やフリングの魔力弾をくらい一気に耐久度は削られたでしょうからね。崩壊してもおかしくありません。
「これももうだめですね」
私は手元のフリングに目を落としながらぼやきます。
至る箇所にも細かなヒビがはいっており、魔力を込めても動く様子が全くみられません。完全に壊れたみたいですね。
もとはタダですから惜しくはありませんがね。壊れたフリングを放り捨て、私は魔剣を探します。すでに台座は魔力弾で消し飛ばしたのでどこかに転がっているはずなんですが。
『一緒に消し飛んでたりして』
「……それはないでしょう?」
一応魔剣ですよ? 王家に代々伝わるとか言ってたんですからちょっとやそっとでは壊れないでしょう。多分……
でも、もしかしたらってこともあるのかも……
『あれじゃない?』
「どれです⁉︎」
ネガティブな思考になりかけていた所にくーちゃんの発言。
くーちゃんが指差したほうに走るように歩いて行きますと確かに魔剣が転がっていました。よかった壊れてない。消し飛んでない。
べ、別に不安だったわけではありませんよ?
予想通り魔力弾は台座を完全に破壊していしていました。剥き出しの漆黒の刃を晒したままの魔剣に近づくと拾い上げます。
「思ったよりも普通ですね」
軽く魔剣を振りますが今の所ただの剣と代わり映えが全くしません。いや、ただの剣より丈夫でしょうから丈夫な剣ですかね?
持ち主以外は持ち上げれないとかと思ったんですが杞憂でした。
魔剣は特に私を拒絶することもなくただ振られるままです。試しに魔力でも流してみますか。
意識して魔剣に魔力を流し込みます。するとしっかりと握っているはずの柄から微かな振動が伝わってきます。
『なにこれ?』
くーちゃんの驚きの声に私も同感でした。漆黒の刃が先から変色。血のように生々しい紅色へと変わっていきます。全ての刀身が紅色に変わり、次に刀身が長剣から私の愛用している『旋風』と同じ刀へと変貌を遂げました。
「おお……」
変貌した元魔剣を楽しげにみながら私は先ほどと同じように魔剣を振ります。
軽く振る。それだけで刃から魔力が放たれ周囲を破壊の風が撫で回しています。
これはいいですね。作り直す手間が省けました。
『契約できたんだね』
「今のが契約だったんですね」
ただ魔力を流しただけなんですがね。
しかし、手に入ったならこんな埃まみれの城にいたくありません。さっさと帰るとしましょう。
私が踵を返して帰ろうとした時、悪寒を感じました。
すぐさま手にした魔剣を背後に向け一閃。
金属がぶつかる音が響き、攻撃を打ち払われた襲撃者は後ろに後退。魔剣を構えながら私は襲撃者を目視します。
「おやおや、この国に王様自らとは。よほど魔剣に執着があると見えますね」
私を背後から襲撃してきたのは王様。
手には魔剣とは違う黒い剣。
「……」
私の言葉など聞こえてないかのような無言。
しかし、私を見る目は血走っており口から涎が流れ落ちています。
『リリカ』
「ええ、ばっちぃですね。ちゃんと拭いて欲しいものです」
『え、そこ?』
そこでしょう? 汚いのは嫌ですし。
でも王様、全く生気のようなものが感じられませんね。
まるでゾンビみたいな……
「syaaaaaaaaaaaaaaa!」
王様の口から人間の声ではないものが謁見の間に響き渡ります。同時に黒い靄のようなものが王様を包み込み始めます。
「おお!? なんですか? あれ」
『なんか魔力纏ってるよ?』
つまり魔物ですかね? でもあれ王様ですよね? 
完全に理性をなくした状態なのかむちゃくちゃに剣を振り回してきます。剣技と呼ぶには幼稚なものですが無駄に速いですね。
仕方なしに私も応戦、紅い刃で首を跳ね飛ばすべく振り抜きます。
紅い線を描きながら放たれた一撃は狂うことなく王様の首を跳ね飛ばします。なにかギミックがあるかと思いましたが首は放物線を描きながら宙を舞いました。
「あっさり死んだ?」
興ざめですね。
あっさりとしすぎです。
試し斬りにもならなかったですね。
ため息を付きながら魔剣についた血を振り払います。あ、血は赤いんですね。
魔剣をしまう鞘がないのでむき出しの刃で持って帰るしかないですね。
『あぶないよ?』
「なにがです?」
くーちゃんの言葉に返答、そして衝撃。更に響く鈍い音、あげくに生じるけっこうな痛み。
「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
私が悲鳴を上げる理由は十分です。
痛みをこらえながらも痛みの元を確認します。
痛みの元は左腕。そこに剣が叩きつけられていました。
さらに後ろを振り返ると首がない人? と言っていいのかわからない物が立っていました。
「あ~ 完全に魔物になってるんですね」
首を跳ね、確実に死んだと思っていましたけど魔物になってたら話は別ですね。
でもこれで私の試し斬りの対象ができたわけですね。
都合よく剣を持ち、殺しても誰にも文句を言われない魔物を見ながら私は痛みで顔を歪ませながらも仮面の下で口元だけ歪め笑うのでした。
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