エルフさんが通ります

るーるー

正攻法? 結果が全てです

「よっと!」


 声を上げながら階段らしきものをよじ登ります。
 階段は途中で途切れていました。だから天井にフリングを撃ちまくって瓦礫を落下さし、それを階段の代わりにしてみたわけですがなかなか登り辛かったですね。
 上を見上げると天井貫通した魔力弾のせいで穴だらけですし、いつ天井ごと落ちてきてもおかしくないので素早く上に上がりましょう。
 階段を登り切って正面、床はボコボコに穴が空いていますが見覚えのある扉は無傷でした。


「なにか防御魔法でもかけてあるんですかね?」
『んー、何もかかってないよ?』


 たまたまなんでしょうか? 首を傾げながらも私は床の穴を避け、扉に近づきます。


「うぅぅ」
「いでぇ、いでぇよぉ……」


 扉の両側には体の一部が欠損し、血を流している騎士が二人倒れています。
 運悪くフリングの魔力弾が当たったのでしょう。運がない人達です。
 特に攻撃してくる様子でもなかったので警戒はしますが扉のほうへと近づいて行くことにします。
 扉を開こうと手を当てた瞬間、なんとも表現がし辛い嫌な予感が扉の中からしたのでとりあえず少し離れます。


『どうしたの?』
「勘です」


 この扉を開けると何かある。そんな直感がビビっときたのです。
 痛い痛いと声を上げる騎士を無理やり立たせると扉に向かい突き飛ばし、体当たりさせ無理やり扉の中に放りこみます。
 すると立て続けに騎士に矢が突き刺さり、更には鋭い槍の突きまで食らっています。
 当然のことながら騎士は絶叫。運がよければ生きているでしょうが、まぁ、即死でしょう。
 突き刺した相手が同じ騎士であることに戸惑っている騎士に対して私は躊躇わずにフリングを向け引き金を引きます。頭が一瞬で無くなり首なし騎士になったものは音を立て倒れました。


「やあやあ、手厚い歓迎をありがとう」


 弓矢は飛んできたら見えるので特に警戒などもせずに中に入ります。
 中には今までの騎士とは明らかに違う鏡のように磨かれている鎧を着た騎士がいました。
 皆、殺気立ちながら剣や槍を構えています。


「いやですねぇ、話し合いをしましょうよ」
『……今さっき躊躇いなく殺した人とは思えない発言だよね』


 私はいつも平和を祈ってますよ。
 戦争反対! 暴力反対!


「賊が! この城に何の用だ!」
「もう何度も言ってるので飽き飽きして来ましね」


 みんな同じようなことを聞いてきますし、もう少しレパートリーを増やしていただきたいものですね。


「魔剣ですよ、そこの」


 私が指差すのは台座に突き刺さる剣。
 やはり魅力されますね。
 なによりあれが放つ波動。それが気に入りました。


「この剣の王族の血を引くもののみが扱える剣! 貴様のような賊が扱えるものではないわ!」
「え、そうなの?」


 抜く条件が血統なら私、使えないじゃないですか。困りましたね。
 ……王様の血でも飲んだらいけますかね?
 いや、だめですね。想像するだけで気持ち悪いんです。


『魔剣、聖剣は血統では選ばれないよ? たまたま王族に適正者が続いたんじゃないのかな?』
「なぬ?」


 となれば私にもチャンスがあるわけですね!
 やる気が出てきましたよ!
 私のやる気を感知したのか騎士達が警戒の色を強めます。
 私の視界にいる騎士は四人、さらに後方に弓を構えたのが二人。
 さて、どうしますかね。サクッとやるのが良さそうですが。


「魔剣、譲ってくれたら死なずにすみますけど?」
「くどい!」
「決死の覚悟というやつですか」


 なんでそんなに死にたがるんですかね? 理解できませんよ。


「言いたくないですが人の命は軽いですよ?」


 今私の手にあるフリング。これの銃口を向け、引き金を引く。これだけで死んでしまうんですから。


「……騎士になった時から死は覚悟している」
「それは覚悟ではなく諦めと言うんですよ」


 なんで私説教してるんでしょう?
 首を傾げます。
 面倒ですね。


「もういいです。考えるのに疲れました」


 フリングを構え、今までよりも魔力を込めて行きます。比例してフリングがミシミシという音を響かせ始めています。


「あ、避けないと死ぬレベルなんで」
「なっ! 退避ぃぃ!」


 蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げる騎士達。命を捨てる覚悟は初戦薄っぺらいものでしたね。その光景を鼻で笑いながら私は悲鳴を上げるフリングの銃口を魔剣に向けます。


「台座から抜けないなら台座を消し飛ばして剣だけ回収すればいいんですよ」
『世の勇者が聞いたら泣いちゃうね』


 剣を抜く方法ではなく剣を動かす方法を考えたらいいだけなんですけどね。
 くーちゃんのつぶやきに私は笑い、フリングの引き金を引きます。放たれる魔力弾は不可視の塊でありならも凄まじいまでの圧力を放ちながら床を、壁を、ついでに逃げ遅れた騎士も消し飛ばしながら閃光を放つのでした。

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