エルフさんが通ります

るーるー

悪魔じゃなく美少女です

 鮮やかに彩られた城の中に破壊音が鳴り響きます。
 夜中だというのに窓から見える景色は至る所で轟々と炎が燃え上がっているのがよく見えます。
 そしてそれは私の歩く廊下でもよく見られる光景であり、当然、その周囲には死体も積み重ねられているわけでして。
 まぁ、まともな形で死を迎えたか方は幸運でしたね。


『……エルフってみんなリリカみたいな過激派なの?』
「いえ、私はどちらかというと穏健派だと思いますが?」
『これで……』


 絶句しているくーちゃんが見ているほうに視線を向けると元はかなり豪華であったであろう物がガラクタと化しています。
 さすがにあんなになっては換金もできそうにありませんからね。


「しかし、この国の騎士というのも対したことがありませんね」
『魔石を標準で考えすぎだと思うよ?』


 魔石云々を無視してもモロ過ぎます。
 床に転がっていた剣を拾いながら考えます。
 このままでは国としてメンツというやつですか? それが丸潰れでいろいろと問題ですね。


「仕方ありません」
『また、なにか悪いこと考えたの?』


 なんでも悪いことだと捉えるのはいけないことですよ?
 適当に破壊しながら(襲ってきた騎士も撃退しながら)ペースを落とさずに歩いているとやたらと広いスペースに出ました。
 見渡してみると上の階に上がるための豪華な階段が設置されています。
 あれで上に上がるとしましょう。
 そう思い一歩前に踏み出すと金属のこすれる音が聞こえてきます。


「いたぞ! 報告にあった侵入者だ! あの変な仮面間違いない!」


 抜き身の剣を下げた騎士達がまた現れました。今度の騎士はきっちりと鎧を着込んでいますね。
 彼らは私の周囲を取り囲み逃がさないようにしているようですね。


「貴様、何者だ! 何が理由でこの城に侵入してきた」
「やかましい人ですね」


 隊長格ぽい人が声を上げるたびにやたらと空気が震えてうるさいです。


「ちゃんと答えて上げますよ。目的は魔剣。あ、ある場所教えてくれません?」


 よく考えたら謁見の間にはメイドさんに連れて行ってもらったので場所がよくわからないんですよね。


「魔剣だと? 貴様まさか『グリモリア』の一味か!」
「グリモリア?」


 はて、聞いたことがないんですが?
 なにかの組織ですかね。


「各地で魔剣や聖剣、古代魔導具アーティファクトといったいわくつきの武具を集めている組織が我が国にまで来るとは!」


 知りたいことを全部言ってくれましたよこの人! 親切ですね。
 しかし、そんな組織があるのですか。ならばそれは利用できますね。私の罪を被ってもらうとしましょう。まだ見ぬ組織、グリモリアさん。ありがとう!


「そうです、我輩はグリモリアの一員、リ……ポルンと言います」
『なんで我輩なの?』


 我輩って悪役っぽいじゃないですか。
 しかし、あぶない、もうじきリリカと正直に名乗ってしまうところでした。心が清いと嘘をつくのがつらいですね。


「グリモリアの一員なら逃がすわけにはいかん!」
「隊長、あいつさっき明らかにグリモリアのこと知らないような反応してましたよ?」


 む、気づかれましたか。ならばあいつからやりましょう。
 私は魔法のカバンマジックバックからナイフを取り出すと無言で投擲。
 ナイフはくるくると回転しながらもかなりの速さで飛び、騎士の頭に突き刺さり血を吹き出させました。
 ペラペラとよく喋っていた隊長格の頭に突き刺さって。


「あれぇ?」


 なぜ狙いと違うところに飛んで行くのでしょう?
 ナイフ、難しい、ちょー難しい。


「た、たいちょぉぉぉぉぉぉ!」


 頭から血を吹き出し倒れた隊長を見て他の騎士達が悲鳴を上げて動揺します。
 いや、騎士なんだから血で動揺しないでくださいよ。


「やれ! あいつの首をとる!」
「殺る気満々ですね」


 殺気を放ちながらジリジリと距離を詰めてくる騎士を見てため息をつきながら魔法のカバンマジックバックからかつての戦利品であるフリングを取り出し銃口を騎士へと向けます。


魔法道具マジックアイテムか?」
「正解です」


 より一層警戒を強めた騎士へ私は正解のご褒美としてフリングの引き金を引きます。
 カチンという軽い音が鳴り、同時に銃口から不可視の魔力弾が放たれます。
 当然、魔法の訓練を受けていないであろう騎士は見えるわけもなくて。
 警戒はしているけども魔法に対して無防備である顔面に魔力弾が炸裂しました。


「ひぃ⁉︎」


 わからない人には突然頭が消し飛ばされたように見えるでしょう。
 感じない、わからないというのは一種の恐怖でありますからね。
 だからこそ効果的ではあるわけです。


『多数と戦う時は一対一を繰り返せ! もしくは敵の心に恐怖心を抱かせるんじゃ! by長老(故?)』


 確かに有効です。
 恐怖心で殺気が心なしか減りましたし。もう一人位見せしめにしましょう。
 銃口を別の騎士へと向け、引き金に指をかけます。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 銃口を向けた騎士が絶叫を上げ、剣を振りかざしながらこちらに向かってきます。が、


「遠かったですね」


 一息で斬りかかれる距離であればよかったんですが遠い。
 斬られるよりも私が引き金を引くほうが早いです。
 動いていたため外すのが嫌なので頭から胴体へと狙いを変え、引き金を引きます。
 再び魔力が吸われる感覚を感じながらも魔力弾を射出。
 狙いを外すことなく騎士の胴体に着弾します。あっさりと胴体を消し飛ばし、首、手、足だけが宙にあるという今日な光景を作り出しました。
 首と手は水っぽい音を出しながら床に落ちると周辺に血の水たまりを作り上げます。


「気持ち悪い」


 威力がありすぎるのも問題ですね。
 さて、次はと。


「ひっ!」


 次の獲物を狙うべく銃口を向けると他の騎士達は完全に戦意を喪失しているようでした。
 そんなに泣かなくても。


『この人達にはリリカは悪魔にでも見えるんだろうね』
「こんな美少女を悪魔呼ばわりですか。あ、仮面してましたね」


 それじゃぁ、私が美少女とは気づけませんよね。
 しかし、ここまで怯えてくれてるのなら聞いたら教えてくれますかね。


「さて、もう一度聞きますが魔剣はどこにありますか?」
「え、謁見の間だ。台座に刺さってる」


 お、あっさりと話してくれました。やはり恐怖というのは最高の自白剤ですね。


「ではその謁見の間はどこです?」
「こ、この上だ。頼む殺さないで……」


 私が殺すの大好きみたいな言い方しないでいただきたいですね。
 さて、魔剣の場所もわかりましたし先へ進むとしましょう。


『階段どこ?』


 くーちゃんの言葉にグルリと周りを見ますが階段は見当たりません。いえ、らしきものはあるのですが……
 完全に瓦礫の山なんですよね。
 どうもフリングで壊しちゃったみたいですし。


「どうやって登りましょうかね」


 途中で途切れている階段を見上げながら私は思案する羽目になるのでした。

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