エルフさんが通ります

るーるー

後日って言ったじゃん

 暗転していた色が黒から白へと変わりさらには色々な色彩が私の目の中に入ってきます。


『あ、リリカ! 目を覚ました!』


 なぜかくーちゃんが私の眼前で不安そうな顔をしていますね。いや、くーちゃんの横に見えるのは太陽ですか? つまり寝転んでいるというわけですか?
 ズキズキと痛む頭を押さえながらゆっくりと起き上がります。


「くーちゃん、私は、私は爺を殺りましたか? その辺に死体転がってます?」
『……どんな夢を見たかは知らないけど爺の死体は転がってないよ。あと老人は労わろう?』


 くーちゃんも長老と同じようなことを言いますね。死に掛けの長老に再びマウントポジションを取り殴ってたのは覚えてるんですけどね。あと少しでトドメガさせたのに残念でありません。


「それでここは何処なんでしょう? というか私はなんで寝てるんですかね?」


 周囲を見渡すと明らかに私が泊まっていた宿屋ではありません。あの宿屋には私が今見ているような何に使うかわからない装飾品は飾られていませんでしたし。
 なによりベッドが違います。
 大きい! 小柄な私が六人くらい寝れるんじゃないですかね。フカフカ! 沈んでしまいそうです。
 以上のことから考えられるのは、


「子供の将来やって見たい遊びの一つ。誘拐、ですかね?」
『そんな子供嫌だなぁ〜』


 そんな嫌そうな顔をしながら言わなくても。里ではメジャーだったんですがね。


『ここはね。前に助けたと言っていいのかわからないけどお姫様の住んでるお城らしいよ』
「助けた?」


 はて、誰ですかね?
 王族、貴族に知り合いはいないと思うんですが……


『興味がないことはすぐに忘れるね』
「んー、とりあえずは招待されたってことだよね?」


 この部屋にいる理由、そこは納得しました。
 ですが私が寝ていた理由がわかりません。
 誰かが私を気絶さしたのでなければですが。
 ため息を付き、あたふたと慌てるくーちゃんを見つめます。


「大方マリーでしょう」
『……本人は戯れのつもりだったみたいなんだけどね。あ、体に異常はないらしいよ? このしろのおいしゃさん? ってのが見てくれてそう言ってたし』


 戯れで殺されるのはゴメンですね。
 しかしお抱えのお医者さんもいるとはかなりのお金持ちですね。姫、姫様ですか……
 頭をかきながら部屋の中を首をひねりつつも見渡すとつい最近目にしたことがあるものが眼入りました。


「ああ、思い出しました。馬車を奪…… 緑の綺麗な髪のお姫様ですね。エルフ式洗脳術を使った」


 よく見れば部屋のあちこちの装飾品に馬車にもほどこされていた獅子の家紋が刻まれていますね。


『あれは洗脳とかじゃなくて物理攻撃だったよ』


 結果よければというやつですよね。


『目が覚めたら来てっていってたよ?』


 マリーはくーちゃんが見えないみたいですがちゃんと礼儀を守ってくれますからね。しっかりと伝言も伝えてくれたみたいです。


「そうですねぇ、よっ!」


 声を出しながらベッドから飛び降り体の調子を確かめます。問題なさそうですね。
 確認を終えると私は扉ではなく飾られた装飾品のほうに近づいていきます。
 うめ、ピカピカしてますね?無駄に。


『行かないの?』
「どこに?」
『えーと……』


 やっぱり場所を言われてなかったみたいですね。知ってましたけどね。


「まず会う前にね」


 無造作に手を伸ばし飾られていた絵画に手をかけると魔法のカバンマジックバックに放り込みます。


『……何してるの?』
「金品の現地調達」


 こんな所で人の眼にも触れずに埃を被っているのは勿体無いでしょう。
 まずは瞳に入る物は全部手に入れておきましょう。
 仮にも王城。
 私には価値がわかりませんがしかるべき場所で売れば大金になるでしょう。


『それ泥棒じゃないの⁉︎』
「資源の有効利用と言ってください。恵まれない私に愛の手を」
『犯罪じゃない』
「……これを売ればいい果物が手に入りますね」
『あの甲冑とか高く売れるんじゃないかな!』


 欲望に忠実なのはいいことだと思いますよ。
 人間の商人はこういうらしいじゃないですか。


「『儲けれるうちに儲けておかないと』ってね」


 かなりの数の装飾品を魔法のカバンマジックバックに放り込みましたね。
 大半が何に使うか良くわからないものでしたけどね。
 問題はこれらの戦利品を何処で換金するかですが。
 マリーに見つかるとまた文句を言われそうですからね~
 なんとかして考えないといけませんね。
 既にめぼしいものがなくなった室内を眺め、満足のいく戦果を得た私は部屋の扉に向かい歩きます。


『どうするの?』
「とりあえず呼ばれたのならば行かないといけませんね」
『場所わかるの?』
「大体の場所なら」


 一応王城ですよね。ここ。
 だったら王様の居るところにでも行けば誰か一人くらいいるでしょう。その人に聞けばいいだけですし。


「でもあの姫様後日って言ってましたよね」


 そんなどうでもいいことを呟き、今後のことをかなり適当に考えながら私は扉を開くと豪華なくせに無人の廊下をくーちゃんと共にフラフラと歩くのでした。



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