エルフさんが通ります
忘れていた設定
「なんであなたが、ここにいるんですか?」
「私は刀の手入れと弓矢の補充ですよ」
『いいもん、わたし見えてないし〜』
マリーにはくーちゃんが見えてませんからね。仕方ありませんよ。そんなふくれっ面をしないでください。
「マリーこそどうして武器屋に? 血剣も手入れですか?」
古代魔導具も手入れがいるんですかね? 私はしたことがないんですけど。
「血剣は問題ありません。わたくしがここに来たのは魔鍛冶師のソーンさんがいると噂に聞いたからですわ」
「魔鍛冶師?」
普通の鍛治師じゃないんでしょうね。『魔』って付くんですし。
「魔鍛治師というのは人造魔剣を作る鍛治師のことですよ」
「人造魔剣?」
「ええ」
人の手で魔剣が作れるんですね。
これは私も魔剣が手に入るんじゃないですかね。
「ソーン・ナトルアスと言えば魔鍛治師の中でもかなりの有名人なんですが?」
「エルフの里では有名ではありませんでしたよ?」
有名ならちゃんといろいろな種族に知られていないとだめでしょうに。
「それで? マリーはその有名なソーンさんに何の用があったんです?」
すでに古代魔導具である血剣を持っているマリーには魔剣なんて必要なさそうですけど。
「わたくしの背中にある聖剣を見てもらおうかと思いまして。聖剣も魔剣も属性が違うだけで同じようなものだと聞きますからもしかしたら抜けるかもしれませんし」
背中…… 聖剣……
「ああ、そういえばそういう設定でしたね!」
『わすれていたよ〜』
私とくーちゃんは朗らかに笑います。
言われるまで忘れていました。これを忘れてるとマリーはただの吐血の多い人になってしまいますからね。
「……あなたね、わたくしにとっては死活問題なんですよ⁉︎」
「いや、そうだけど」
確かに始めて見た時は驚きましたけど今じゃ普通に背中に刺さってますからね。いやぁ、慣れって恐ろしいですね。今ならマリーの背中に刺さってない姿を見るほうが違和感を感じそうな気がしますよ。いや、見たら絶対になんとも言えない感じになるでしょう。
「ああ、またお客さんですか。今日は珍しいですね」
声が聞こえたので振り返ると鞘に収まった『旋風』を手にしていたお兄さんの姿がありました。
このお兄さんがソーンさんなんでしょうか?
「あの失礼でしょうがあなたが魔鍛治師ソーンでしょうか?」
「ああ、残念ながらソーンは私の爺様ですよ。私はルーン。ルーン・ナトルアスです」
マリーの言葉にルーンは否定の言葉で返します。
「ルーンさんも魔鍛治師なんですか?」
「一応はそうなりますね。私で二代目になります」
「なら私に魔剣を「わたくしの背中の聖剣を見て欲しいんですが!」
魔剣を作って欲しいと頼もうとしたらマリーが言葉を被してきました。必死ですね。
「背中の聖剣? 見たところ背負っているわけではなさそうですけどどこに?」
訝しげな眼をマリーに向けます。まぁ、普通に考えるなら背中に剣が突き刺さっているなんて誰も考えないでしょうからね。
普通死にます。
「彼女の背中に突き刺さっているんですよ」
「剣がですか?」
そんな驚いたような顔をしなくてもいいと思うんですけど。
「この通り」
マリーがそう言いながら服を軽く脱ぎ背中に突き刺さる剣を見せます。
その聖剣をルーンさんが興味深げな瞳を向けています。先程の職人の瞳ですね。
「この剣は完全に体と一体化していますね。それも魂と」
「ほぉ~ 魂と」
剣と魂がくっ付いているとなると、
「どうします? マリー。引き抜いたら死にますよ?」
「そんなのはごめんです!」
「だよね~」
引き抜いたら死ぬというのはなんとも言えませんね。
それが先祖代々の聖剣というのだから余計に笑えますね。
「なんとか! なんとか! 聖剣を抜く方法が無いのですか!?」
「……本当に必死ですね」
いや、確かに起きるたびに吐血をするのも嫌なんですけどね。血の匂いとか凄そうですし。
「引き抜いても死ぬということは無いと思いますが魂が変質しますね」
「それは凄いことなんですか?」
変質と言われてもいまいちピンときませんね。
「特性が変わるといいますか、色が変わると表現すべきか迷うところですけど」
説明が難しいものなんでしょうね。
「とりあえず死ぬようなことにはなりません。刺さったものならば必ず抜けるはずです。何らかの方法はあるはずです」
「さ、探していただけますか!」
「なんかあっさり抜けてしまうと残念ですね~」
『ね~』
「なんですって!」
こわ! 
乙女の向けるような視線ではありませんね。殺意こもってますよ。
「はは、まぁ、少し時間はかかりますが調べておきますよ。一応私も魔鍛冶師の一人なわけですしね」
「ありがとうございます!」
そんな涙を流すようなことなんでしょうか? 私の背中には剣が突き刺さっていないので分りませんがね。
そんな私たちを苦笑を浮べた表情で見つめてきます。
「抜きたいという感情を持たずに抜けば手に入るという噂もありますけどね。聖剣には」
「リリカにはムリですわね!」
「むぅ」
いあや、確かに私に無欲で剣を抜けって言うのは無理な話ですけどね。
言われかたに悪意を感じますよ? マリーさん。
「あ、私も魔剣がほしいです」
「残念ですが材料がなくて作れないんです」
「……そうですか」
材料がないのであれば仕方ありません。
そんな私は複雑な表情を浮かべていた私をくーちゃんが楽しそうに笑っていました。
「私は刀の手入れと弓矢の補充ですよ」
『いいもん、わたし見えてないし〜』
マリーにはくーちゃんが見えてませんからね。仕方ありませんよ。そんなふくれっ面をしないでください。
「マリーこそどうして武器屋に? 血剣も手入れですか?」
古代魔導具も手入れがいるんですかね? 私はしたことがないんですけど。
「血剣は問題ありません。わたくしがここに来たのは魔鍛冶師のソーンさんがいると噂に聞いたからですわ」
「魔鍛冶師?」
普通の鍛治師じゃないんでしょうね。『魔』って付くんですし。
「魔鍛治師というのは人造魔剣を作る鍛治師のことですよ」
「人造魔剣?」
「ええ」
人の手で魔剣が作れるんですね。
これは私も魔剣が手に入るんじゃないですかね。
「ソーン・ナトルアスと言えば魔鍛治師の中でもかなりの有名人なんですが?」
「エルフの里では有名ではありませんでしたよ?」
有名ならちゃんといろいろな種族に知られていないとだめでしょうに。
「それで? マリーはその有名なソーンさんに何の用があったんです?」
すでに古代魔導具である血剣を持っているマリーには魔剣なんて必要なさそうですけど。
「わたくしの背中にある聖剣を見てもらおうかと思いまして。聖剣も魔剣も属性が違うだけで同じようなものだと聞きますからもしかしたら抜けるかもしれませんし」
背中…… 聖剣……
「ああ、そういえばそういう設定でしたね!」
『わすれていたよ〜』
私とくーちゃんは朗らかに笑います。
言われるまで忘れていました。これを忘れてるとマリーはただの吐血の多い人になってしまいますからね。
「……あなたね、わたくしにとっては死活問題なんですよ⁉︎」
「いや、そうだけど」
確かに始めて見た時は驚きましたけど今じゃ普通に背中に刺さってますからね。いやぁ、慣れって恐ろしいですね。今ならマリーの背中に刺さってない姿を見るほうが違和感を感じそうな気がしますよ。いや、見たら絶対になんとも言えない感じになるでしょう。
「ああ、またお客さんですか。今日は珍しいですね」
声が聞こえたので振り返ると鞘に収まった『旋風』を手にしていたお兄さんの姿がありました。
このお兄さんがソーンさんなんでしょうか?
「あの失礼でしょうがあなたが魔鍛治師ソーンでしょうか?」
「ああ、残念ながらソーンは私の爺様ですよ。私はルーン。ルーン・ナトルアスです」
マリーの言葉にルーンは否定の言葉で返します。
「ルーンさんも魔鍛治師なんですか?」
「一応はそうなりますね。私で二代目になります」
「なら私に魔剣を「わたくしの背中の聖剣を見て欲しいんですが!」
魔剣を作って欲しいと頼もうとしたらマリーが言葉を被してきました。必死ですね。
「背中の聖剣? 見たところ背負っているわけではなさそうですけどどこに?」
訝しげな眼をマリーに向けます。まぁ、普通に考えるなら背中に剣が突き刺さっているなんて誰も考えないでしょうからね。
普通死にます。
「彼女の背中に突き刺さっているんですよ」
「剣がですか?」
そんな驚いたような顔をしなくてもいいと思うんですけど。
「この通り」
マリーがそう言いながら服を軽く脱ぎ背中に突き刺さる剣を見せます。
その聖剣をルーンさんが興味深げな瞳を向けています。先程の職人の瞳ですね。
「この剣は完全に体と一体化していますね。それも魂と」
「ほぉ~ 魂と」
剣と魂がくっ付いているとなると、
「どうします? マリー。引き抜いたら死にますよ?」
「そんなのはごめんです!」
「だよね~」
引き抜いたら死ぬというのはなんとも言えませんね。
それが先祖代々の聖剣というのだから余計に笑えますね。
「なんとか! なんとか! 聖剣を抜く方法が無いのですか!?」
「……本当に必死ですね」
いや、確かに起きるたびに吐血をするのも嫌なんですけどね。血の匂いとか凄そうですし。
「引き抜いても死ぬということは無いと思いますが魂が変質しますね」
「それは凄いことなんですか?」
変質と言われてもいまいちピンときませんね。
「特性が変わるといいますか、色が変わると表現すべきか迷うところですけど」
説明が難しいものなんでしょうね。
「とりあえず死ぬようなことにはなりません。刺さったものならば必ず抜けるはずです。何らかの方法はあるはずです」
「さ、探していただけますか!」
「なんかあっさり抜けてしまうと残念ですね~」
『ね~』
「なんですって!」
こわ! 
乙女の向けるような視線ではありませんね。殺意こもってますよ。
「はは、まぁ、少し時間はかかりますが調べておきますよ。一応私も魔鍛冶師の一人なわけですしね」
「ありがとうございます!」
そんな涙を流すようなことなんでしょうか? 私の背中には剣が突き刺さっていないので分りませんがね。
そんな私たちを苦笑を浮べた表情で見つめてきます。
「抜きたいという感情を持たずに抜けば手に入るという噂もありますけどね。聖剣には」
「リリカにはムリですわね!」
「むぅ」
いあや、確かに私に無欲で剣を抜けって言うのは無理な話ですけどね。
言われかたに悪意を感じますよ? マリーさん。
「あ、私も魔剣がほしいです」
「残念ですが材料がなくて作れないんです」
「……そうですか」
材料がないのであれば仕方ありません。
そんな私は複雑な表情を浮かべていた私をくーちゃんが楽しそうに笑っていました。
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