エルフさんが通ります
清々しましたよ
くーちゃんとしばらくブラブラしながらも目当ての武器屋に到着します。
ボロい店ですね。本当に開いてるんでしょうか?
疑いながらも店の扉を開けると扉の上に備え付けられていたベルが来客を告げるために音を店内に響かせました。
「ああ、お客さんかい? 珍しい」
鈴の音に反応したのかひょろっとしたお兄さんが現れました。
お客さんが珍しいって…… ここ武器屋ですよね?
キョロキョロと店内を見渡して確認して見ますが置いてあるのは武器ばかりですので確かに武器屋のようです。
なんだか不思議な感じがする武器屋さんですね。普通の武器店とは空気が違います。
それが何か分りませんけどね。
「なにかお探しかな? と言っても僕の店のはそんなに良い品はないけどね」
いや、そんな自嘲気味に言わなくても。
見たところそこまでひどい武器もあるようには見えませんし。……いい武器かもわかりませんが。所詮素人判断ですし。
「欲しいものと頼みたいことがあります」
「と言うと?」
お兄さんが尋ねてきたので私は腰の刀を鞘ごと手に取るとお兄さんに手渡します。
「抜いても?」
「どうぞ」
私の許可を得るとお兄さんは鞘から刃を抜き、刀身に熱い視線を送ります。
おお、これが職人というものですかね。先程とは目つきが違います。
「なかなかの刀ですね。素材は魔鉱石で?」
「そう聞いてますけど」
武器のことは良くわかりませんからね。
たしかそう言ってたはずです。
「どうすれば魔鉱石の刀身をここまで酷使できるんですか……」
「ん~精霊魔法に耐え切れなかったみたいなんで」
『てへ!』
なぜそこで誇らしげなんですかね。
まぁ、くーちゃんの能力、精霊魔法は凄まじいですからね。それに耐えれる武器が欲しいところです。『旋風』も気に入ってはいるんですけどね。
「修理できます?」
「刀身が無事なので整備は可能ですけど同じように酷使するとぽっきりと折れちゃうかもしれませんからね」
「え、折れるんですか?」
「軸が痛むとそうなりますね」
そうなると気をつけて使わないといけませんね。しかし、
「折れたら折れたときですね」
『……リリカ、もっと物をだいじにしようよ』
大事にはしていますよ? 折れるまでは。
「とりあえずは刃こぼれの整備だけはしておきますね」
「お願いします」
お兄さんは了承すると店の奥に入っていきました。
おそれく奥には工房があるんでしょうね。
うーむ、そうなると一応呼びの武器を持っておいたほうがいいのかもしれませんね。
くーちゃんの精霊魔法は普通の武器に付与すると強化されすぎて一回使うと壊れちゃいますし。
『もう弓で戦えばいいんじゃないの?』
「それはダメです。せっかく冒険者になったんですかそれっぽい武器で戦いたいのです。これは譲れません」
『がんこだな~』
頑固ではありません。武器にはこだわりたいのです。どうせ戦うのならば自分の使いたい武器で戦いたいじゃないですか。……といっても刀もまともに使えないんですけどね。
しかし、くーちゃんもこのこだわりが分らないとはまだまだですね。
『なんかバカにされた気がする』
「気のせいですよ」
あいかわらず凄く勘がいいですね。
「それに長老も言ってました。『戦うのならばかっこいい武器でじゃ! それこそがロマンじゃろ!』って」
『ふーん。その長老は強いの?』
「まぁ、強かったですよ」
過去の話ですけどね。
『なんで昔のことみたいに話すの?』
「まぁ、実際に過去の話ですからね。簡単に言うと長老の眼が節穴だったということを証明する話になるわけですが」
『どういうこと?』
ん? なんだか興味がありそうですね。まぁ、整備を待つ暇つぶしにはいいでしょう。
「結構前のことですけどね。エルフの里に武器商人がやってきたんですよ。それでその商人が持ってきたのがいかにも偽物ぽい黄金の聖剣とかいうものだったんですよ。それでその黄金の聖剣に目を奪われて買った長老がやたらとテンションが上がってしまいましてね。ヘカトンケイル狩りに出かけていったんですよ」
ヘカトンケイルはエルフの里がある森に極稀に現れる天災。
出現すると他の里のエルフたちと協力して討伐するという大イベントが発生するのです。
そして長老はというと一応エルフの里一番の戦士という称号を持っていたわけで一人でヘカトンケイルを狩りに行ってしまったわけなんですよね。
「でも長老が買った聖剣というのがこれがまた凄いナマクラだったんですよ」
『ナマクラ?』
「ただの鉄の剣に金のメッキを貼り付けただけだったんですよ」
『え……』
ああ、絶句してますね。
私もあとで知ったときは絶句しましたよ。
当然、天災と呼ばれるヘカトンケイルにそんなナマクラで勝てるわけも無く、ぼこぼこにされた長老はというと『わしは生涯現役じゃ!』といっていた言葉を撤回し引退したわけです。
「あのときは目の上のたんこぶがいなくなって清々しましたね」
『……リリカって長老のこと嫌いなの?』
「名言や考え方は嫌いではありませんがエルフとしては嫌いですね」
『長老かわいそう』
「くーちゃんも会えばわかりますよ。あのうざさは」
一度会ったら二度と会いたくなくなるでしょうけどね。
げんなりした顔を浮べるくーちゃんを思い浮かべるとなかなかに楽しそうですね。
そんな想像をしていると店の鈴が軽やかな音を鳴らし来客を告げます。
「すいません、ここに魔鍛冶師のソーンさんがいると聞いてきたんですけど……」
おずおずと言った様子での声が聞こえてきたので振り返ります。
『「「あ……」」』
店の扉から顔を覗かしている現時の相棒であるマリーと視線が合い、その場にいるエルフ、精霊、人間がなんともいえない声を上げるのでした。
ボロい店ですね。本当に開いてるんでしょうか?
疑いながらも店の扉を開けると扉の上に備え付けられていたベルが来客を告げるために音を店内に響かせました。
「ああ、お客さんかい? 珍しい」
鈴の音に反応したのかひょろっとしたお兄さんが現れました。
お客さんが珍しいって…… ここ武器屋ですよね?
キョロキョロと店内を見渡して確認して見ますが置いてあるのは武器ばかりですので確かに武器屋のようです。
なんだか不思議な感じがする武器屋さんですね。普通の武器店とは空気が違います。
それが何か分りませんけどね。
「なにかお探しかな? と言っても僕の店のはそんなに良い品はないけどね」
いや、そんな自嘲気味に言わなくても。
見たところそこまでひどい武器もあるようには見えませんし。……いい武器かもわかりませんが。所詮素人判断ですし。
「欲しいものと頼みたいことがあります」
「と言うと?」
お兄さんが尋ねてきたので私は腰の刀を鞘ごと手に取るとお兄さんに手渡します。
「抜いても?」
「どうぞ」
私の許可を得るとお兄さんは鞘から刃を抜き、刀身に熱い視線を送ります。
おお、これが職人というものですかね。先程とは目つきが違います。
「なかなかの刀ですね。素材は魔鉱石で?」
「そう聞いてますけど」
武器のことは良くわかりませんからね。
たしかそう言ってたはずです。
「どうすれば魔鉱石の刀身をここまで酷使できるんですか……」
「ん~精霊魔法に耐え切れなかったみたいなんで」
『てへ!』
なぜそこで誇らしげなんですかね。
まぁ、くーちゃんの能力、精霊魔法は凄まじいですからね。それに耐えれる武器が欲しいところです。『旋風』も気に入ってはいるんですけどね。
「修理できます?」
「刀身が無事なので整備は可能ですけど同じように酷使するとぽっきりと折れちゃうかもしれませんからね」
「え、折れるんですか?」
「軸が痛むとそうなりますね」
そうなると気をつけて使わないといけませんね。しかし、
「折れたら折れたときですね」
『……リリカ、もっと物をだいじにしようよ』
大事にはしていますよ? 折れるまでは。
「とりあえずは刃こぼれの整備だけはしておきますね」
「お願いします」
お兄さんは了承すると店の奥に入っていきました。
おそれく奥には工房があるんでしょうね。
うーむ、そうなると一応呼びの武器を持っておいたほうがいいのかもしれませんね。
くーちゃんの精霊魔法は普通の武器に付与すると強化されすぎて一回使うと壊れちゃいますし。
『もう弓で戦えばいいんじゃないの?』
「それはダメです。せっかく冒険者になったんですかそれっぽい武器で戦いたいのです。これは譲れません」
『がんこだな~』
頑固ではありません。武器にはこだわりたいのです。どうせ戦うのならば自分の使いたい武器で戦いたいじゃないですか。……といっても刀もまともに使えないんですけどね。
しかし、くーちゃんもこのこだわりが分らないとはまだまだですね。
『なんかバカにされた気がする』
「気のせいですよ」
あいかわらず凄く勘がいいですね。
「それに長老も言ってました。『戦うのならばかっこいい武器でじゃ! それこそがロマンじゃろ!』って」
『ふーん。その長老は強いの?』
「まぁ、強かったですよ」
過去の話ですけどね。
『なんで昔のことみたいに話すの?』
「まぁ、実際に過去の話ですからね。簡単に言うと長老の眼が節穴だったということを証明する話になるわけですが」
『どういうこと?』
ん? なんだか興味がありそうですね。まぁ、整備を待つ暇つぶしにはいいでしょう。
「結構前のことですけどね。エルフの里に武器商人がやってきたんですよ。それでその商人が持ってきたのがいかにも偽物ぽい黄金の聖剣とかいうものだったんですよ。それでその黄金の聖剣に目を奪われて買った長老がやたらとテンションが上がってしまいましてね。ヘカトンケイル狩りに出かけていったんですよ」
ヘカトンケイルはエルフの里がある森に極稀に現れる天災。
出現すると他の里のエルフたちと協力して討伐するという大イベントが発生するのです。
そして長老はというと一応エルフの里一番の戦士という称号を持っていたわけで一人でヘカトンケイルを狩りに行ってしまったわけなんですよね。
「でも長老が買った聖剣というのがこれがまた凄いナマクラだったんですよ」
『ナマクラ?』
「ただの鉄の剣に金のメッキを貼り付けただけだったんですよ」
『え……』
ああ、絶句してますね。
私もあとで知ったときは絶句しましたよ。
当然、天災と呼ばれるヘカトンケイルにそんなナマクラで勝てるわけも無く、ぼこぼこにされた長老はというと『わしは生涯現役じゃ!』といっていた言葉を撤回し引退したわけです。
「あのときは目の上のたんこぶがいなくなって清々しましたね」
『……リリカって長老のこと嫌いなの?』
「名言や考え方は嫌いではありませんがエルフとしては嫌いですね」
『長老かわいそう』
「くーちゃんも会えばわかりますよ。あのうざさは」
一度会ったら二度と会いたくなくなるでしょうけどね。
げんなりした顔を浮べるくーちゃんを思い浮かべるとなかなかに楽しそうですね。
そんな想像をしていると店の鈴が軽やかな音を鳴らし来客を告げます。
「すいません、ここに魔鍛冶師のソーンさんがいると聞いてきたんですけど……」
おずおずと言った様子での声が聞こえてきたので振り返ります。
『「「あ……」」』
店の扉から顔を覗かしている現時の相棒であるマリーと視線が合い、その場にいるエルフ、精霊、人間がなんともいえない声を上げるのでした。
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