エルフさんが通ります

るーるー

お金の匂いにつられて

「あああああ! ずるーい! マリー、一人で全部殺った!」
「全部じゃないですわ。半分死んでいましたし」


 マリーの後に爆音地に到着した私は血剣ブラディアナで切り刻んだのか肉片が周囲に転がっています。
 私が試し斬りする予定だったのに…… ひどい。


「待ってください。全部わたくしがやったわけではありませんよ? 」


 そう言われて周りを見れば確かに魔物にかじられたような跡もありますね。というか冒険者と魔物が戦ったみたいです。綺麗に斬られてるのは魔物側だけのようなのでマリーが斬ったのは魔物なんでしょう。


「それよりもリリカ、いい物が手に入りましたよ」
「人の物を奪っておいて笑顔ですか」


 げんなりしますね。なんでそんな笑顔なんですかね。
 若干睨みつけながらマリーを見ると血塗れの紙をひらひらとさしています。
 なんですかね。
 マリーがこちらに紙を差し出してきたので受け取ります。


「そういえば今回はなぜか貧血じゃないんですね?」


 以前森を切った時は倒れていたはずなんですが今回は元気そうです。


「魔物だけを斬るくらいならそんなに血を使わなくても大丈夫なんですよ」
「なにその便利な設定……」


 ずるいですよね〜古代魔導具アーティファクトって。
 人のこと言えませんが。


「それでいい物ってなんです?」
「リリカの要望とわたしくしの要望が一度に叶いますわ。リリカは試し斬り、わたしくしはお金というね」


 ふむ、それがこの紙というわけですか。
 マリーに渡された紙を見るとどうも地図みたいですね。ところどころにバツ印が付いてますけどなんなんですかね?


「このバツ印ってなんなんです?」
「多分、この冒険者達の標的でしょう。俗に言う賞金首ってやつです」
「賞金首?」


 なんなんでしょう? 首にお金でもぶら下げてるんですかね?
 そんな頭のおかしな人がいるんでしょうか。


「賞金首っていうのは賞金がかけられている人のことですよ。なかには生死をとわずで賞金が懸けられている人もいるのですよ」
「へー」


 なるほど。人間にはそんなお金の儲け方もあるのですね。


「でもなんでこのバツしるしが賞金首の居場所だと?」


 もしかしたら別の物のマークをつけている可能性もあるというんですが。
 私の疑問に答えるようにマリーが紙の束を渡してきます。なんですこれ?


「これは?」


 何枚かめくってみると人物の似顔絵とその下には賞金らしきものが書かれていますね。


「その紙は賞金首のリストですね。おそらくはこの冒険者、賞金首を狩ることを専門にしている者たちなんでしょうね。何枚かバツ印がついてますし」
「あ、ほんとだ」


 確かに何枚かバツ印がついてますね。これを見ると確かに賞金首がいるのかもしれませんね。だったら試し斬りができるかもしれません。


「それでどうしますか?」


 そう言いながら再び私に見えるようにが広げた地図にはいくつものバツ印が入った拠点が目に入ったのでした。


「それで賞金首を狩りにいくのは大賛成なんですけどどうやって探すんです?」


 あいにくと私には人や物を探すスキルは一切所持してないんですけど。
 完全にマリー頼みになりますけどね。


「おそらく狙っていた賞金首は盗賊団みたいですからね。ある程度は探せると思いますわ」
「ほほーう」


 マリーは多才ですね。
 私もくーちゃんを頼るとしましょう。


『血の臭いだめ~』


 周囲の血の匂いにやられたのか完全にやる気がなくなっているくーちゃんは私の頭の上でお休み中でした。うん、今は頼れないみたいですね。


「監視というのは意外と体力を使うものです。それも広範囲に行っているのであれば余計にです」
「なんで監視しているとわかるんです?」
「……街から出るときは周囲の情報を集めるのは基本的なことですよ?」


 呆れられました。情報なんて集めたこと無いですし。だって仕方ないじゃないですか!冒険者成り立てなんですから。


「先程の街で聞いた話だと承認や旅人を襲う盗賊団が出ると言う話を聞きました。となれば必ずどこかで監視をしているはずです」
「ほー」


 確かに人間の目はエルフのようにかなり遠くまで見ることができるわけではないですからね。何人かで交代で見張っていたほうが効率がいいのでしょう。


「よし! すっぱりと斬りにいきましょう」
「殺る気になてくれて嬉しいですけど少し待っていただきたいですね」
「え、やだ」


 すでに私の殺る気スイッチは入っていますからね。止まりませんよ。
 イザ行きましょう! 試し斬りに!
 そう心にきめた私は一歩前に踏み出します。


「で、どこに向かうんです?」


 後ろから聞こえるマリーの声に私はどこに行けばいいかわからないことに気づきしょんぼりとしてマリーに振り返るのでした。

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