エルフさんが通ります
予想外の覚醒
さて、すでに三時間くらいアレスを川に沈めて上げてを繰り返しているわけなんですが、微妙な変化が見え始めていた。
一つ目、身体に纏う魔力の密度がなんとなく濃くなっている。
これはおそらく死にかけている体の防衛本能のような物が働いてるのか身体が死なないように無意識に魔力を多く身体に纏っているようだ。
二つ目、一人称の変化。
初めのうちは上がるたびにゼイゼイいうだけだったアレスだったけど、途中からはブツブツと独り言を言うようになり、一人称がボクから俺に変わっていた。
何を喋っているか気になって聞いていると、
「もう少し、もう少しで真理が見える…… ふふ、フフフフ」
などという不気味な感じです。
なにかを覚醒しつつあるようですね。
「次くらい、少しここから離れますかね」
『なんで?』
「私はこの訓練は人伝にしか聞いていませんが、大体この訓練をした日は森が爆発してました」
おそらくはなんらかの力に覚醒しての爆発だったと思いますが、どれくらいの規模になるのかわかりませんからね。
『でもアレス、溺れて死んじゃわないの?』
「さっきから沈めて上げても全く息が切れてないですからね。多分大丈夫です」
私は再度アレスを川に放り込み、浮かんでこないのを確認するとくーちゃんと共に川から離れます。
ある程度離れ、川の方を振り返るとビリビリと空気が振動しているのが伝わってきました。そして何かが弾け飛ぶような轟音が周囲に響き渡ります。
私は木に登り膝を着くと、魔法のカバンから『遠見のメガネ』を取り出し装着。すぐさま川の方を見ると、
「『はぁ?』」
くーちゃんと共にマヌケな声を出しました。
『遠見のメガネ』で見た先には川が完全に干上がっている光景が見えたのです。
相変わらず滝から水は流れているので完全には干上がっていないのかもしれませんが、それでも一時的に川の水は無くなっていました。
そして川の真ん中から川のほとりに向かい歩きながら身体中から魔力を放出しているアレスの姿が目に入りました。
「昨日とは比べものになりませんね」
『別物』
呑気にそんなことを言いながら私は木々に飛び移りながらアレスの側まで近づいて行きます。
「ふ、ふふふ、これが、これが今の我の魔力!」
あ〜、また一人称が変わってますね。いや、それどころか性格も変わってそうですけど。あれだけの魔力を放出しているのに全く苦しそうな表情をしてないですし、格段に魔力が上がってますね。
「アレス、気分はどうです?」
木の上から尋ねるとアレスは身体中から放っていた魔力を収め私の方に視線を向けてきます。
「ああ、リリカさん、お陰様で我は凄く調子がいいです。なんというか魔力の流れ? ってやつですかね。それが凄くわかるんです」
にこやかな笑みを浮かべてきます。昨日までの泣きじゃくっていた姿は欠片も見れませんね。
「それは良かった。ところであちらにお客さんですよ?」
私はアレスの後ろの林を指差します。私の指差した場所には数体のゴブリン、そしてオーガが現れました。
おそらくアレスの魔力放出の様子を見に来たのでしょうね。
「なるほど、我の力を試すというわけですね! リリカさん!」
「え、違うよ?」
たまたまなんだけどね。
「いいでしょう! 我の力をお見せしましょう!」
今までのオドオドしていた様子とは違い自信に満ち溢れ殺る気満々で魔物達に向き直るアレス。
ここまで性格が変わる物なのかエルフ式魔法戦闘訓練。
「おらぁ! かかってこい魔物共!」
本当、性格変わりすぎなんじゃ……
以前までならゴブリンにもビビってるような少年だったのに。しかもEランクの魔物のオーガもいるのに。
『SYAAAAAAA!』
魔物達もアレスの言葉が挑発ということがわかったのか雄叫びを上げ、武器を振りかざしアレスに迫る。
アレスはそれに笑みを浮かべながら拳を突き出し、
「重力魔法」
一言唱えた。
黒い靄がアレスの拳の前方に広がり、魔物を周囲の物を覆うように広がり続けた。
そして、その一言だけで景色が一変する。
魔物達が地面にひれ伏すように倒れた。
周囲の木々が音を立てながらへし折れた。
地面が徐々に沈み始めた。
壊れた物はは全てが中心部である魔物達にぶつかって行く。
それら全てがアレスの魔法によって引き起こされた。
「ふん!」
突き出していた拳を声を上げながらアレスは振り下ろす。それだけで周囲に響く破壊の音は大きくなっていった。魔物の悲鳴は破壊音に掻き消されただただ、破壊だけが続いていく。
「ヒャァハッハッハッハッハ! 壊れろ壊れろ!」
壊されていく光景を高笑いをしながらしながら見つめるアレスだが、さらに魔法を行使し、自然破壊を加速さしていた。そんなアレスを呆然と見つめる私とくーちゃん。
『別人じゃん』
「やりすぎたかな?」
今だに高笑い続けながら魔法を使い続けるアレスを見ながら私はエルフ式魔法戦闘訓練は人間にしないようにしようと誓ったのだった。
その後、アレスが魔力切れになり倒れるまで森林破壊は続き、気を失ったアレスを縄で縛り街まで引き摺り帰る羽目になったのだった。
一つ目、身体に纏う魔力の密度がなんとなく濃くなっている。
これはおそらく死にかけている体の防衛本能のような物が働いてるのか身体が死なないように無意識に魔力を多く身体に纏っているようだ。
二つ目、一人称の変化。
初めのうちは上がるたびにゼイゼイいうだけだったアレスだったけど、途中からはブツブツと独り言を言うようになり、一人称がボクから俺に変わっていた。
何を喋っているか気になって聞いていると、
「もう少し、もう少しで真理が見える…… ふふ、フフフフ」
などという不気味な感じです。
なにかを覚醒しつつあるようですね。
「次くらい、少しここから離れますかね」
『なんで?』
「私はこの訓練は人伝にしか聞いていませんが、大体この訓練をした日は森が爆発してました」
おそらくはなんらかの力に覚醒しての爆発だったと思いますが、どれくらいの規模になるのかわかりませんからね。
『でもアレス、溺れて死んじゃわないの?』
「さっきから沈めて上げても全く息が切れてないですからね。多分大丈夫です」
私は再度アレスを川に放り込み、浮かんでこないのを確認するとくーちゃんと共に川から離れます。
ある程度離れ、川の方を振り返るとビリビリと空気が振動しているのが伝わってきました。そして何かが弾け飛ぶような轟音が周囲に響き渡ります。
私は木に登り膝を着くと、魔法のカバンから『遠見のメガネ』を取り出し装着。すぐさま川の方を見ると、
「『はぁ?』」
くーちゃんと共にマヌケな声を出しました。
『遠見のメガネ』で見た先には川が完全に干上がっている光景が見えたのです。
相変わらず滝から水は流れているので完全には干上がっていないのかもしれませんが、それでも一時的に川の水は無くなっていました。
そして川の真ん中から川のほとりに向かい歩きながら身体中から魔力を放出しているアレスの姿が目に入りました。
「昨日とは比べものになりませんね」
『別物』
呑気にそんなことを言いながら私は木々に飛び移りながらアレスの側まで近づいて行きます。
「ふ、ふふふ、これが、これが今の我の魔力!」
あ〜、また一人称が変わってますね。いや、それどころか性格も変わってそうですけど。あれだけの魔力を放出しているのに全く苦しそうな表情をしてないですし、格段に魔力が上がってますね。
「アレス、気分はどうです?」
木の上から尋ねるとアレスは身体中から放っていた魔力を収め私の方に視線を向けてきます。
「ああ、リリカさん、お陰様で我は凄く調子がいいです。なんというか魔力の流れ? ってやつですかね。それが凄くわかるんです」
にこやかな笑みを浮かべてきます。昨日までの泣きじゃくっていた姿は欠片も見れませんね。
「それは良かった。ところであちらにお客さんですよ?」
私はアレスの後ろの林を指差します。私の指差した場所には数体のゴブリン、そしてオーガが現れました。
おそらくアレスの魔力放出の様子を見に来たのでしょうね。
「なるほど、我の力を試すというわけですね! リリカさん!」
「え、違うよ?」
たまたまなんだけどね。
「いいでしょう! 我の力をお見せしましょう!」
今までのオドオドしていた様子とは違い自信に満ち溢れ殺る気満々で魔物達に向き直るアレス。
ここまで性格が変わる物なのかエルフ式魔法戦闘訓練。
「おらぁ! かかってこい魔物共!」
本当、性格変わりすぎなんじゃ……
以前までならゴブリンにもビビってるような少年だったのに。しかもEランクの魔物のオーガもいるのに。
『SYAAAAAAA!』
魔物達もアレスの言葉が挑発ということがわかったのか雄叫びを上げ、武器を振りかざしアレスに迫る。
アレスはそれに笑みを浮かべながら拳を突き出し、
「重力魔法」
一言唱えた。
黒い靄がアレスの拳の前方に広がり、魔物を周囲の物を覆うように広がり続けた。
そして、その一言だけで景色が一変する。
魔物達が地面にひれ伏すように倒れた。
周囲の木々が音を立てながらへし折れた。
地面が徐々に沈み始めた。
壊れた物はは全てが中心部である魔物達にぶつかって行く。
それら全てがアレスの魔法によって引き起こされた。
「ふん!」
突き出していた拳を声を上げながらアレスは振り下ろす。それだけで周囲に響く破壊の音は大きくなっていった。魔物の悲鳴は破壊音に掻き消されただただ、破壊だけが続いていく。
「ヒャァハッハッハッハッハ! 壊れろ壊れろ!」
壊されていく光景を高笑いをしながらしながら見つめるアレスだが、さらに魔法を行使し、自然破壊を加速さしていた。そんなアレスを呆然と見つめる私とくーちゃん。
『別人じゃん』
「やりすぎたかな?」
今だに高笑い続けながら魔法を使い続けるアレスを見ながら私はエルフ式魔法戦闘訓練は人間にしないようにしようと誓ったのだった。
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