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雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、食事の理をしる

 じゅー


 そんな軽快な音て、宿屋ゴートゥヘルのなかに香ばしい匂いが漂う。
 我とルー、さらにはブリューフルはそんな宿屋のテーブルの一つを陣取り、目の前の鉄板でクマが焼く本日の獲物たる百足ひゃくあしイノシシの貴重な肉を前にした我ら三人は宿屋では普通ださんじゃろ? と言うほどのさっきを振りまいておった。
 そんな我ら三人が振りまく殺気に気づいたのであろうかいつもは騒がしいゴートゥヘルの客たちもまるでとばっちりを避けるかのように沈黙を選んでおるようじゃな。


「ま、それが正解じゃよな」


 我の横に座るのは空腹でひたすらに過ごし続けた天使と宝剣をたたき折った騎士じゃしの。
 前者は空腹により目が血走り獲物を前にした猛獣のようであり、後者はなんというかやけくそになっているような感じじゃ。


「おい」
「なんじゃ?」


 鉄板の前で少ない百足ひゃくあしイノシシの肉を焼いていたクマがなんとも言えないような顔を浮かべながら我の方を見てくるわけなんじゃがなんなんじゃ?


「この店の中で殺気を振りまくのをやめろ。他の客が萎縮してだろが!」
「いや、我が振りまいているわけではないんじゃが……」
「ニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニクニク」


 我も気不味い表情を浮かべながら我はというと天使であるにも関わらず呪詛のごとくニクとひたすらにつぶやき続けるブリューフルの方へと眼をやり、そっとそらした。
 だって眼がなんか怖いんじゃよ。
 なんじゃか眼を合わすと呪われそうなんじゃ、しかもヨダレ垂らして眼をそらすことなく一点。鉄板で音をあげながら焼かれている肉を見続けておるから怖いんじゃよ。


「まあ、いいがお前らこれを分けるのか?」
「そのつもりじゃが?」


 クマが焼いているの百足ひゃくあしイノシシの肉ではあるのじゃがやはり料が少ない。しかも焼いておるから余計に小さくなっておるような気がするのう。
 そのせいか我の横の二人が殺気立つわけなんじゃよな。
 なにせ我のこぶし大あったものが、焼いているうちにすでに一口サイズじゃし。皆、手元にある武器であるフォークを手にし、肉が焼きあがるのを今か今かとまちわびているんじゃ。


「さてと」


 我も香ばしい匂いに釣られて自然にヨダレが垂れてくるわけなんじゃが武器であるフォークを両手に取り戦闘態勢を整える。


「ほら、焼け……」


 クマの言葉を告げ終わる前に銀の閃きが四つ閃いたのが我のひとみに映った。


 キュイン! ザス!


 我も両手のフォークを閃かしたわけなんじゃが狙ったのは、


「いだぁぁぁぁあぁい⁉︎」
「く、やはり武器フォーク破壊にきましたね先生!」


 ブリューフルはフォークを閃かした手の甲を突き刺しテーブルに縫い付け、ルーの方はフォークを絡ますようにして肉への突き刺しを阻止してやったわけじゃ。


「うぅ、痛いよぉ痛いよぉ」


 手の甲にフォークが突き刺さったを見ながら涙を流しているブリューフルを見て戦意喪失したことを確認。
 しかし、突き刺された手を見てみるが血すら流れておらんのう。じゃが手は動かへんほどにテーブルに縫い付けておるというのじゃから天使というのは不思議な存在じゃ。
 次に全く力を緩めることなく我の持つフォークと拮抗しているフォークを持つルーへと視線を投げかける。


「のうルーよ。ここは日頃から先生と呼び敬う我に譲るべきではないのかのう?」
「先生、如何に先生と言えどもこれは譲れません。家訓に背きますので」


 かくんとな?
 なんじゃかよくわからんが約束ごとのようなものかのう?


「《食事とは戦争である》これが我が家の家訓です!」


 真剣な瞳を我に向けてきながらルーはそう告げるわけなんじゃが、食べることが戦争に繋がると言うのはなんていうか発想が飛躍しまくっているような気がするんじゃが我だけであろうか?
 そんな疑問を抱いている最中もルーの握るフォークはジリジリと我のフォークを押しのけるようにして百足ひゃくあしイノシシの肉へとにじり寄っておる。
 なるほど確かに戦争かもしれん。


「ふむ、なかなかよい、かくんとやらじゃ。戦争なら仕方あるまい」
「でしょう? 故に先生と言えどもこの肉を譲る気はありませんよ」


 なるほどのう。つまりは、


「その腕がいらぬ、ということでよいのじゃな?」
「は? どういう意味ぃぃぃぃ!」


 疑問の答えを授けるべく、我はブリューフルへ突き刺していたフォークから手を離し、手刀を作るとそれをルーの腕に向かい閃かせる。
 しかし、腐っても騎士らしく手からフォークを離し、素早く手を引っ込めよった。


「ほ、本気できろうとしましたね⁉︎」
「食べ物のことに関しては我はいつでも本気じゃが? 安心せい、我が手刀ならばそこいらななまくらよりも切れ味は鋭いものじゃ。すぐに治癒魔法とやらをかけて貰えばすぐにくっつくじゃろうて」
「くっ、武器がない」


 我の左は手刀、右手はフォークという完全武装。かたやルーの方はというと手に武器はなく、腰に折れた宝剣があるだけという状況なわけじゃ。


「なら私がいただきますぅ!」
「させるわけなかろう!」


 隙をついたつもりかブリューフルが動く方の手を動かし、鉄板上の肉を手で掴もうとしたようじゃがそんなものは予想済みじゃ。
 右手に収まるフォークを掴み、ブリューフルの方へと振り返りざまに渾身の力を込めてフォークを投擲。
 放たれたフォークは風を切り裂き、変な音を放ちながら今にも肉を掴みそうになったブリューフルの腕を捉え突き刺さる。そしてその衝撃で弾かれたかのように上げられた腕は勢いを落とさぬフォークに貫かれたまま壁へと突き刺さり、両手がフォークに貫かれたブリューフルは身動きが取れぬようなった。


「いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「食事は戦争じゃ、傷を負うくらい普通じゃろ?」


 周りを見渡すとなぜか誰も我と視線を合わそうとはせずに即座に視線をズラすんじゃがなぜじゃ?


「もう好きにしろ。この子は連れてくぞ? 向こうでパンでもだしてやる」
「ぱ、パンですか⁉︎ 食べ物くれるんですか⁉︎」


 疲れたように呟いたクマの言葉に手を貫かれて痛々しい姿をしているはずのブリューフルは眼を輝かしいながら喜びの声をあげておる。
 これでライバルが一人減ったわけじゃがな。


「行きますよ先生、肉のために!」
「我が食うに決まっとるじゃろう!」


 折れた宝剣と我の手刀がぶつかり合いゴートゥヘルが揺れるのじゃった。


















 二時間後




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! 我の肉ガァァァァァ!」


 ルーを殺さぬように、しかし限りなく本気で張り倒した我が手に入れたのは長い間火のついた鉄板の上で炙られ続け、ただの煤とかした百足ひゃくあしイノシシの肉であった。


「苦い……」


 当然肉の味などしないのじゃった。ただただ苦い。


『未知の味を取得しました。経験値を1取得しました』


 やかましいわ!

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