雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、仕留める

「おい、お前の弟子がめちゃくちゃ踏まれてるんだが⁉︎」
「ん? ああ、まだ悲鳴が聞こえておるわけじゃしまだ生きてはおるじゃろ?」


 どうやら百足ひゃくあしイノシシ共は自分に攻撃してきたルーが気に入らないようでその場に留まりルーに向かい足を振り下ろしまくっているようじゃな。
 しかし、さっきからまだ「ぎゃぁぁぁ!」とか「踏まないでぇぇ!」とか耳に入る叫び声はルーの声のようじゃしな。


「お前の弟子だろう⁉︎」
「弟子といってものう」


 信じられないものを見るような目で我を見てくるわけなんじゃが普通は弟子とかって学ぶものがあるものにつくというのをクマの店にある「誰でも築ける楽々師弟関係☆」という本で読んだんじゃがな。


「せんせぇぇぇい!」


 めちゃくちゃ元気に聞こえるような声なんじゃがな。
 ため息をつくと我も仕方なしにまだルーを虐めている迫る百足ひゃくあしイノシシに向かい駆けるわけではなく歩く。別に早歩きなわけでもなくただ、普通に歩く。


「無謀だ!」
「吹っ飛ばされるぞ!」


 ただ歩く我をみた周りが悲鳴のような声を上げておるが我の体の硬さをもってすれば当たったとしても衝撃ははしってもかすり傷一つつかんじゃろうな。多分。


『ぶもわぁぁぁあ!』


 近づいていきよる我に気づいた百足ひゃくあしイノシシが咆哮を上げると残りの二匹もルーを踏む作業を止め、我を睨み付けるとこちらに向かい突進をし始めよった。さらに速度を上げてきよる
 わけなんじゃが我は全く脅威に感じんな。
 瞬く間に迫ってきた百足ひゃくあしイノシシに対して体を回すようにし、角をギリギリで躱したつもりであったが掠めたようじゃ、我の着ていた服を巻き込み、瞬く間に我の服は無残な布切れへと変わってしもうた。が、体には傷がつかなんだため、そのまま百足ひゃくあしイノシシの無防備な胴体の方へと回り込み、体の回転をゆっくりと止めていく。目標である我を見失いながらも正面を無防備に走り去ろうとする百足ひゃくあしイノシシに我は笑みを浮かべるとまだ遠心力が残る体の力と我の体の全力をもって、


「そいや!」


 その胴体を脚で蹴り上げてやった。悲鳴を出す間も無くめりめりというなにやら色々なものが砕けるような音を響かせながら百足ひゃくあしイノシシの体がくの字に曲がる。そしてゴバァァァァァンという音が響くのと同時に脚を真上まで振り上げ切った我の目の前から姿が消える。


「おい、ヨルムンに襲いかかった百足ひゃくあしイノシシはどこいったんだ?」


 自分たちへ迫る脅威が今更になってどこかにいったことに気づいた男が震えるような声で確認しておるが誰も答えぬ。
 一方、我は我で足を上げた姿勢でなかなかに困っていたんじゃがな。


「…… しまった。全力を出しすぎたかのう?」


 全力を出した我の蹴りを食らった百足ひゃくあしイノシシはすでに視界に捉える事が難しいほどの天高くに飛んで行ってしもうた。その証拠に何もないはずの空から赤黒い液体が雨のように降り注ぎ大地と人々を赤く染めて行っとる。
 こりゃあ、肉は完全に破壊してしもうたかもしれん。


「まぁ、よい」


 ここはおおらかな気持ちを持つとしよう。なにせまだ二匹いるわけじゃし。
 我が視線を残っている百足ひゃくあしイノシシの方へと向け、脚をゆっくりと地面に降ろし、わずかな音を立てだけにも関わらず見た目の巨大さに反して明らかに動揺しておるようじゃ。体を震わせジリジリと後ろに体を下げておるわけじゃな。


「逃がさんぞ?」


 ジリジリと警戒しながら下がる百足ひゃくあしイノシシに対して我は無造作にかつ大胆に普通に歩きながら距離を詰める。それに合わせて百足ひゃくあしイノシシも下がっておったわけなんじゃが少しづつ我が歩く速度を上げていくと徐々に恐怖に狩られたかのように駆け出し始めとる。


『ぶもぉぉぉぉぉ!』


 威勢良く声を上げておるが無意味無意味。
 すでに走り出しておる我は僅かに体を斜めにして走りながら地面に落ちておる我の頭ほどの大きさがある岩に指を食い込ませ持ち上げながら追走する。


「うりゃぁぁぁ!」


 今度はブリューフルを投げた時より僅かに力を抜き、狙いを優先してみた。声と共に我の手から放たれた岩は我の理想通りに空中に線を描きながら飛び、必死に逃げる百足ひゃくあしイノシシの背中に見事に直撃、バランスを崩した百足ひゃくあしイノシシは大地を転がり回り、動きを止めることに成功した。


「とう!」


 それを確認した我は再び飛翔。
 ある程度の高さまで到達すると地面に引き寄せられるかのように落下を開始しよる。それに合わせて脚を突き出すようにしてしてやる。


「ヨルムンキィィィィック!」


 技名を叫びながら蹴りを叩き込むは身動きができずにもぞもぞと地面を這いつくばる百足ひゃくあしイノシシの首。予定どうりに脚が接触した瞬間になにやらぶっとい物を砕いたような感触を足の裏に感じ、それを感じ取ると同時に暴れていた百足ひゃくあしイノシシの動きがピタリと停止しよる。


「どうじゃ! 今度は完璧に原型を留めとるから食えるぞ!」


 我は動かなくなった百足ひゃくあしイノシシの上でぴょんぴょんと飛び跳ね喜ぶのであった。

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