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雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、かっこいいものを見る

「かかってこんのか?」


 ちょいちょいと手招きしてやるが百足ひゃくあしイノシシ供は警戒するかのようにして我とは一定の距離を保つのみじゃな。
 一応は野生。生き残るための知恵らしきものを使っとるようじゃな。
 どちらも動かぬという状況のため全く何も変わらない。それは門から次々と出てくる武装を整えた奴らも同じようで我らを遠巻きに見守るだけじゃった。


「先生〜 冒険者登録してきました〜」


 そんな緊張が張り詰めている空気の中、ルーが手を振りながら我の方へと駆け寄ってきおる。いつの間にか以前見た全身鎧を着込みガシャガシャと音を立てながら、じゃ。此奴には空気を読むとかそんな事ができんのじゃろうか? 思わず本気でそんな事を考えてしまうわ。


「それはよかったのう。じゃがお主はもう少し周りの状況というのをだな……」


 我が呆れてルーの方へと顔を向け、言葉を紡いだ瞬間、なんか圧力のようなものを感じとる。


『ぶもっふるぅぅぅ!』


 また百足ひゃくあしイノシシの方へと視線を戻すと足で大地をいなしながらこちらへと突進するかのような姿勢をとるのが眼に入った。


「先生、実戦ですね!」
「お主、楽しそうじゃのう?」


 顔の部分のみを我に見えるようにしながらルーの奴がやたらとキラキラした表情を向けてきよるわけなんじゃが此奴に教えることなど何もないというのに。


『ぶもぉぉぉぉ!』


 無視されたのを怒った? わけかどうかは知らんがなんとなく怒っているような感じで百足ひゃくあしイノシシの一匹が我に向かって突進を開始。我の周りにいる奴らも動揺するように装備が音を立てよる。


「先生きましたよ!」


 ルーの奴はウキウキとしすぎじゃがな。
 じゃがここは先生と呼ぶルーにの力をまず見せろということで我が楽をするチャンスかもしれんな。


「うむ、ならばルーよ。お主の力を我に見せるというのはどうじゃ?」
「え、僕の力をですか?」
「そうじゃ。我の弟子とやらになりたいのであればまずは実力を見せるのが普通であろう?」
「む、確かにそうかもしれませんね。わかりました! 僕の力を先生に全力で見せます!」


 適当に言ったことをこんなに簡単に信じて此奴は本当に大丈夫なんじゃろうか?
 ま、まぁ、なんか本人はやる気になっとるようじゃしいいのかもしれんがな。
 腰に吊るしてあるやたらと細い剣を引き抜き我には見えない速度で何度か前に振るっているようじゃな。


「ふふふ、これが我が家に伝わる二本目の宝剣さ! この鋭い突きで!」


 全身の力を込めたような突きをルーが繰り出し、遅れて風が切り裂かれるような音が鳴る。ふむ、あの武器は突いて相手を倒すタイプの武器のようじゃな。今まで我の周りに、というかクマの店にくる冒険者共はあんな細くて頼りなさそうな武器は使っとらんかったからどんな戦いをするかが楽しみじゃな。


「行きます! 風よ纏え!」


 僅かに腰を落とし細い剣を弓のようにめいいっぱい引き、次の瞬間、ルーの姿が消える。


「おお、消えた!」
「違う! すごい速さで駆けてるんだ!」


 冒険者の一人が言った通り百足ひゃくあしイノシシの方へと視線を向けていくと確かに砂埃を立ち上げながら細い剣を手にしたルーが駆けていくのが辛うじて我の目がとらえた。
 なんと、あのやたらとガシャガシャいう鎧を着たままあれほどの速度を出すとはな。ルーを侮っていたのかもしれない。
 砂埃を立ち上げながら駆けるルーに気づいたのか百足ひゃくあしイノシシ共も迎え撃つかのようにしてルーへ向けて駆け始める。


「お、激突するぞ」
「おい、お前の弟子なんだろ? 大丈夫なんだろうな?」
「知らん」
「知らんって無責任な!」


 不安そうに我に聞いてくるが我がそんなもの知るわけないだろうが。本当に知らんわけだしのう。
 我がルーの戦い方に突いて知っとることといえばクマの店で戦ったことしかしらんわけじゃし。
 だが一つ言えるのは。


「知らんが彼奴は速いぞ」


 それだけは確信を持って言える。
 我がそんなことを言っている間にもルーの駆ける速度はさらに増しておるようじゃ。我には全く使えんが魔法を使っとるのかもしれんのう。なんか駆ける前に唱えておったし。
 風を纏うかのようにして駆けるルーはまさに一本の槍といわんばかりであろう。そしてその槍は一切速度を緩めぬまま突き進み、百足ひゃくあしイノシシへと襲いかかった。


「秘剣! 絶閃ぜっせん!」
「む、かっこよいのう!」


 やはりあれじゃな、使う技の名前はかっこよくないとダメじゃな。我もなにかかっこよい技名を考えなければ!
 秘剣絶閃光ぜっせんが閃き、ガキンっ!という音が響かせながら恐ろしいまでの速度で細い剣が百足ひゃくあしイノシシの首を確かに捉えた。じゃが急所を捉えたはずの細い剣は一瞬にしてたわみ、歪み不快な音を立てるとあっさりとへし折れ宙を舞った。


「へっ?わ、ワァァぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


 なにが起こったかわかっていない様子のルーはへし折れ空を飛んでいく宝剣の片割れとやらを呆然と眺めていたわけじゃが百足ひゃくあしイノシシ共が待ってくれるわけなくてその大量の足で蹂躙されとる。


「やっぱり速いだけじゃダメなんじゃな」
「た、たすけてくださぁぁぁぁぁぁぁい!」


 結構踏まれておるが意外と元気に悲鳴をあげるルーの声を聞きながら我は一人うなずくのであった。

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