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雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、飛ばす

「ぬぁぁぁぁぁぁ⁉︎」


 転がる転がる。
 痛くはないがやたらと体に衝撃が響き続け上下左右の感覚が全くと言っていいほどにない。気づいたら空が下だったり地面が上だったりと次々と変わるので全くどうなっとるかわからん。
 ただ、視界の隅に入ったのは悲鳴を上げながら逃げるブリューフルの姿じゃな。


「むぅ、一体なにが起こったんじゃ?」


 どれくらい転がったかはわからんがもぞもぞと起き上がり周りを見渡すとそこいら中にやたらとでかい足跡がつきまくっておる。あと服が一瞬でボロボロになりおった。


「むぅ」


 立ち上がるといたる所に穴が空いているか泥が付いているかじゃ。これはもう使い物にはならんな。というかすでに引っかかっておるだけの状態じゃ。ほとんど肌が見えておる状態じゃし。
 動きにくそうな部分は破き、我をこんな目に合わした元凶を探すべく周りを見渡すと我が出てきた門の方へと向かう砂煙が目に入った。


「あれか」


 よく目を凝らして見てみるとどうやら複数の百足ひゃくあしイノシシが街の方へと向かっていっているようじゃ。我の眼に見えるだけでも七匹はいるようじゃな。そりゃ百本の足がある獣七体に立て続けに踏まれて転がされれば服もボロボロになるというものじゃ。


「ううぅ、痛い、死なないけどめちゃくちゃ痛いよぉ〜 というか動けないよぉ」
「なんじゃ、お主。我を置いて逃げたんじゃないのか」


 声の主たるブリューフルを探すわけなんじゃが周りを見るも全く姿が見えん。また天使スキルとやらでも使ったんじゃろうか?


「下、下ですう! 踏まれて地面にめり込んだんですぅ!」
「おぉ、本当じゃな」


 声が聞こえる方へと歩いていくと確かに地面にめり込んでいるブリューフルの姿があった。普通ならこれ死んでおるじゃろな。さすがは天使と言うべきか。


「感心してないでたすけてくださいよぉ!」


 なにやら動こうとしているようじゃがきっちりと嵌っているせいで身動き一つとれんようじゃな。
 我はそんなブリューフルの元にしゃがみこむとブリューフルの足を掴み、無造作に且つ力付くで一気に引き上げてやる。


「いだいいだいいだぃぃぃ! もっと優しくぅぅぅ!」


 めりめりっと何かが剥がれるような音を響かせながらブリューフルを地面から剥がしてやると異議があるかのように喚きよる。じゃが我が足をつかんどるわけじゃから逆さまになってぶらぶらと揺れとるわけなんじゃかな。


「うう、いっそ死んだほうが楽なくらいの痛さでしたよ……」
「死ねんというのもなかなかに大変そうじゃな」


 下手したら死ぬより辛いこともあるかもしれんからのう。我の場合はどうなんじゃろうか? キャラメイキングしただけじゃしの。元々、我は寿命なんてあるようでなかったもんじゃしな。
 封印される前は何年生きていたかわからんから限りなく不死に近いんじゃないじゃろうか?


「いえ! それどころではないです!」
「ん? どういうことじゃ?」
「ヨルムンさんあれですよ!」


 ゆらゆらと揺れながらブリューフルが指差す方向を見ると先ほどまで我が見ていた街の門を指しているようじゃ。いや、正確にはそこにむかっている百足ひゃくあしイノシシの群れか?


「あれがどうかしたのか?」
「どうしたじゃありません! あの街の門へ向かってる百足ひゃくあしイノシシをなんとかしないと!」
「なんとかと言われてものう」


 かなりの距離じゃぞ?
 しかも奴らは結構速いみたいじゃし。だって足が百本くらいあるわけじゃし。ここから我が本気で駆けても百足ひゃくあしイノシシが門にたどり着くほうが早いじゃろうな。


「神の眷属として人の不幸は見過ごせません!」


 いや言ってることは天使としては非常に正しいんじゃが現実的に見てこの距離を一瞬で詰めるのは無理じゃろ。ましてや今のお主は大して強いわけでないし。


「そんな! 今の私にはあなたしか頼る人がいないんですよぉ!」


 こいつ、逆さになりながらも足にしがみついてきよる! なんなんじゃ? 最近の奴らは人にしがみ付くのが普通なんじゃろうか?
 じゃがな、それが普通であるとしてもやられる我としては腹ただしいことこの上ないんじゃがな。
 しかし、我が手を離したにも関わらず逆さになりながらもブリューフルは我の足にしがみついたままじゃ。
 そんなブリューフルを振り落とそうと足を振るがなかなか離しよらん。
 じゃったらな、


「だったらお主が!」


 今までよりさらに力を込め、そこにしがみついたままのブリューフルごと大きく振り上げる。


「自らの体を張って助けにいけぇい!」
「わぁぁぁぁ⁉︎」


 勢いよく、かつ今まで遊んでいたような振りましではなく全力で足を振り抜き、しがみついていたブリューフルが悲鳴を上げるが問題なく吹き飛ばしてやった。


「名付けて、必殺飛べない天使! おお、よく飛んだのう」
「わぁぁぁぁぁぁぁ……」


 徐々に小さくなるブリューフルを見て我は改めて自身の力を実感するのじゃった。

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