雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、嘘をつく

 突然現れたクマに驚いたような表情を浮かべていたルーではあったがすでに剣の振り下ろしは始まっておるわけで、その刃はクマの体へと繰り出される。


「ふん」


 しかし、我が見ていてもなかなかの鋭さを持っていたその振り下ろしをクマは持っていたキラキラと輝く灰皿を横薙ぎに振るい、剣の腹を叩く。するとポキンという軽い音を立てながらルーの剣は真っ二つに折れよった。折れた剣はクルクルと回転しながら店の中を飛び、なぜか我の方に飛んできたので我は口を開けいただくことにする。


『未知の味を取得しました。経験値を120入手しました』


 お、意外と経験値をくれたのう。
 やはり食べたものの質によって経験値が違うのかもしれんのう。
 今度武器屋で適当に武器を買ってみて比べをして見てもよいかもしれん。


「え、え、え?」


 たった一撃で自分の剣が折れたことにか、もしくは灰皿と呼ばれる明らかに武器のジャンルに入らない物にへし折られたからかはわからんが明らかに動揺したようにルーは狼狽え、折れた剣を何度も見直しておる。


「いいかガキども」


 妙に威圧感を出しながらクマが我の頭とルーの頭を掴み軽々と持ち上げよる。というか足がつかんほどに浮かばされてるんじゃが!


「俺の店で暴れるのは許さん、暴れるならこの二つ横にある宿の中で暴れてこい」
「な、なんで二つ横なんじゃ?」


 おかしい。自分で言うのもなんじゃが我は凄い防御力を持っているはずなんじゃがクマに掴まれた頭はギリギリと締め付けられるように痛い。


「二つ横の宿屋がゴートゥヘブンっていうライバル宿なんだよ。だから潰したり妨害をするなら俺のとこじゃなく向こうにしろ。いいな? 返事はハイかYESのどちらかだ」
「は、はい」
「わ、わかったのじゃ」


 ギチギチと頭が歪まんのが不思議な位の力がかかっとるんじゃが…… 
 手足をばたつかせながら横を見ると同じように頭を掴まれておるルーが目に入ってくるがそちらはというと口から泡を吹きかけておる。
 クマの異常なまでのぷれっしゃーとやらにやられたのかもしれんの。


「わかればいい」


 なにやら満足気なクマの声が聞こえると同時に頭にかかっていた圧力から解放され、僅かな浮遊感を感じた後に床へと足をつける。


「クマよ、お主まさか闘技場で一位とか言わんだろうな?」


 掴まれた場所がヒリヒリと痛むのでそこを摩りながら再びカウンターのほうへと戻るクマを睨み付けると肩をすくめよった。


「俺は宿屋の主なだけだ」
「……うそじゃろ」


 ただの人間があんなに強いとか信じられんのじゃが……
 下手すれば昔に我に立ち向かってきた英雄クラス位の威圧感じゃったんじゃがな。


「ふん、まぁいいわい。で、どうするんじゃ貴様。まだやるというならクマの言う通り場所を変えて本気でやってやるが?」


 我もバカにされたまま終わると言うのは少しばかり腹がたつからのう。


「うう、もういいです。我が家の宝剣もへし折れましたし」


 そう言いながらルーは悲し気な表情を浮かべ手にしている宝剣とやらに目を落としている。


「別に武器なんてどれも変わらんじゃろ?」


 聖剣クラスじゃないと我に傷がつかないと言う意味ではの。


「なにを仰いますか! 我がギャン・ガ家の宝剣はそこいらのなまくらの武器と一緒にしないで下さい! 岩を砕き、鉄を切り、鋼をも立つ名剣なんですよ!」
「じゃがあのキラキラした灰皿の横薙ぎの一撃で叩き折れたではないか」
「そ、それは……」


 鼻息荒く語っておったルーに先ほど我らが見た現実を語ってやると途端に肩を落としよる。
 そして名剣とやらをへし折った張本人であるクマはというと我関せずと言わんばかりにグラスを磨いておる。


「ところで先生、我がギャン・ガ家代々に伝わる宝剣の切っ先を知りませんか? 探しているのですが見当たらないんですか」
「……しらんのぅ」


 まさか食べたとも言えんし、ここは黙っといても問題ないじゃろう?

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