雑食無双ヨルムン

るーるー

ヨルムン、連れて行かれる

「さて、これからどうするかのぅ」


 賑わいのある場所へと戻ってきた我なわけなんじゃが特にすることがないんじゃよな。
  しかし、問題なのは持ってるお金が少ないのもあるんじゃがなによりは。


「服がボロボロなんじゃよな」


 天教騎士団とやりあったというかあの銃弾が我の体は貫きはしなかったものの服は容易く貫きよったからのう。
 そのせいかやたらまと周りからの視線を感じるしの。至る所に穴が空いた服はすでに身を守るという機能が全くなくなっとる。


「あと普通に肌が見えとるし」


 こうなっては服を脱いだ方が視線を感じなくて良いのかもしれんがなんとなくじゃがそれはまずい気がする。
 裸でいたらイーサンにも怒られたわけじゃし、天教騎士団のような輩がいるのなら確実に面倒に巻き込まれそうじゃな。


「と、なるとまずは服をなんとかしなければならんわけなんじゃが」


 そうなると金が足りんわけなんじゃが。
 聖剣でお金を手に入れるということが不可能になった今、さらに楽してお金を儲ける方法を見つけなくてはいかん。我の食事というレベルアップのために!


「確か、傭兵やギルドの依頼とやらじゃったか」


 どこにあるのかわからんが。


「おねーさんなにか探してるの?」


 我がキョロキョロとしていると小柄な娘が下から我を見上げていおった。どうやら我が困っているのを見て話しかけてきてくれたようじゃ。


「うむ、手っ取り早くお金を手に入れる場所と方法を考えておったのじゃ」
「おかねを手に入れる場所?」
「楽にじゃぞ〜?」
「楽にぃ〜?」


 うむ。楽にというのは一番大事じゃ。
 面倒なことはやりたくないからのう。かといって楽ばかりしても大して儲けがないのでは困るし、少しばかり難しいことでも問題はないかもしれないが。
 だって我は世界蛇なわけじゃし! 元じゃが。
 少女はしばらくうーんと頭を悩ましていたがなにかを思いついたのかパッと表情が明るくなったところを見るとなにやら思いついてくれたようじゃ。


「ならとうぎじょうに行けばいいんだよ!」
「とうぎじょう?」


 知らぬ言葉じゃな。少なくとも我が世界蛇としていた頃には聞かなかった名前じゃ。


「とうぎじょうはね! おかねがすごくもうかるばしょだってお父さんがいってた!」
「ほうほう、お主の父親は博識じゃのう」
「でもくちぐせが『つぎこそはかてる!』ってなんか虚ろな目で*ずっと言ってたよ」
「そ、そうか」


 なにを言ってるかわからんがなぜか娘の顔に似合わない影がさしとるしなんなんじゃあの皮肉げな笑みは……
 怖! 人間怖! 


「そ、それでそのとうぎじょうとやらはどこにあるんじゃ?」


 このまま話を聞き続けるとロクでもない感じになりそうじゃし、この少女とはここでサクッと別れておいた方がよさそうじゃな。


「じゃあ、わたしがつれてってあげるよ!」
「そ、そうか」


 あれ、予想ではここで別れるはずじゃったんだが。なんで予想外にこの少女に懐かれてるかのように腕を絡めてくるんじゃ?


「ほらはやくはやく」
「わかったよ」


 意外と強い力で我を引っ張る少女を見て若干諦めたようなな体の力を抜くと少女に引きづられるようにして我はその場を後にするのであった。


 ◇


「ここがとうぎじょうだよ!」
「ふむ、なにやらでかいのう」


 引きづられながらきた場所は広場とは別の意味で人で賑わっているようじゃの。
 眼前に大きくそびえ立つ建物を見上げて見るが昔の我ほどは大きくはないんじゃが他の建物と比べてはでかいんじゃよな。


「なんか周りにいるのもやたらとゴツゴツとした奴らが多いしのう」


 とうぎじょうが儲かるという話なので付いてきたわけなんですが一体なにをする場所なんじゃか。


「ヒヒヒ、今日も俺の剣が血を求めてやがるぜ」
「……あからさまにヤバそうな奴がおるんじゃが」


 我の目の前では武器である剣に舌を這わしている輩やめちゃくちゃ刺々しい防具をつけた奴らの姿がやたらと目に入るし。


「のう少女よ。とうぎじょうとは一体なにをしてお金を手に入れる場所なんじゃ?」
「え、にくとにくのぶつかりあいだってお父さんがいってたよ」
「ぶつかりあい……」


 なんなんじゃろ? 料理でも作るんじゃろか。でもぶつかり合うというのがよくわからん。そうなると周りの変な奴らも料理を生業としておる奴らなんじゃろうか?


「登録はあっちだよ」
「登録?」


 ふむ、料理を作るための登録かのう。しかし、料理なんて作れんわけじゃし出ても勝てんのではないんじゃないのか。


「さ、いこう!」
「う、うむ」


 再び腕を取られて今度は建物の方へと連れられていく。


「おじさん、連れてきたよ!」
「おお、強そうな奴を見つけたのか?」
「知らない! でもきっと強いよ!」


 なにやら防具をつけ槍を持っておる屈強な奴に少女が親しげに話しかけておる。なんじゃろう、この大きな男と少女が並んでいる図はヤバイ香りがするのう。


「じゃ、お嬢さんはこっちな」
「え? え?」


 動揺する我を他所に今度は屈強な男が我の腕を掴みとうぎじょうの中に誘っていくんじゃった。


「はい、お嬢さん。紹介料ね」
「まいどです!」


 なんか後で黒い会話が聞こえたような気がするんじゃが気のせいじゃよね?

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