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雑食無双ヨルムン

るーるー

陸地到着

「おお! 陸じゃ!」


 なにやら王都と呼ばれる場所についたイーサンの船から我は飛び降り、念願の孤島ではない陸地に着地する。
 うむ、揺れとらん。
 これは間違いなく陸地じゃ。
 あまりの感動に思わず涙を流してしまった我を見て周りの人間が怪訝な顔をしつつ、なぜか微笑ましいものを見るような眼で見られとるんじゃが。


「ふむ、これが王都と呼ばれる人間の街か」


 我の視界の先にはいくつもの人が作り出したような建物が並んでおり、かなりの数の人が忙しなく動いておる。何人おるのかわからんが人間とはかなりの数がおるんじゃのう。


「ヨルムン、俺らは積荷を下す仕事があるからな。ちっとばかし待ってもらうぜ?」


 イーサンや他の船員が肩に荷物を担ぎながら船から降りてきたようじゃった。やたらと肉体労働が様になる奴じゃな。


「うん? 我は陸に着くまでは頼んだがそれ以外のことは頼んどらんが?」
「確かにそうだがそうはいかねぇな。命の恩人に礼を尽くすのは当たり前のことだろう」


 なぁ? と言わんばかりに周りの船員達にイーサンが尋ねると当たり前と言わんばかりに皆が頷いておった。


「ふむ、なんだかよくわからんが我はあんまり待つのが嫌いなんじゃ。それにお主らには陸まで連れてきてもらったわけじゃしの。これで充分じゃよ」
「む、そこまで拒まれちまったら仕方ねぇ。だったらせめてこいつだけでも受け取ってくれ!」


 そう言いイーサンはなにやら詰まった袋を我に向かい放り投げてきた。放物線を描きながらこちらに飛んできたそれを片手で受け止めると意外と重く、ずっしりとしたモノだ。


「せめてもの礼だ。使ってくれ」


 受け取った袋を開けてみるとなにやらいろいろキラキラした平べったい石みたいなのが入っているようじゃな。
 何に使うのか全くわからんが。
 とりあえずはイーサンには手を振り感謝の意を示すと我はその袋を手にしてその場を後にするのじゃった。


 ◇


「しかし、ここは人が多いのう」


 貰った皮袋を手元で遊びながらイーサン達と別れた我はとりあえずは人波に流されるままに歩いているわけなんじゃが我よりも体がデカイ奴らが歩いているせいで前が見えん。というかどこに向かって歩かされとるのかわからんし前を歩く奴の背中しか見えんというのもどうかと思うんじゃがな。


「安いよ安いよ! オーク肉の串焼き一本三十セルだよ!」
「金エール一杯五十セルだ!」


 活気のある声とよい匂いが先ほどから満ちる道を歩く。この辺は特に人が多いようじゃのう。まあ、人が少ないよりは活気があって非常に好ましいのじゃが。
 しかし、先ほどから聞こえてくるセルというのは一体なんのことを言っておるのじゃろうか?


 ぐぅぅぅぅ


 腹の音が鳴る。
 さっき保存食を食べたばかりなんじゃがのう。
 我が元の力を取り戻すには食べるしかないわけだからのぅ。普通は戦って経験を積んで強くなるもんなんじゃが。


 元の体ではなくなってからは食事というのが楽しみで仕方がないのぅ。丸呑みしていた時にはなかった味覚というのはなかなかに刺激的じゃしな。
 おっといかんいかん、ヨダレが垂れておるわ。


 とりあえずは目的もなくぶらぶらと歩くことにするかのぅ。イーサンの話ではいろいろと店も出てるそうじゃし。


 ぐぅぅぅぅ


 再び腹の音が鳴る。
 しかし、腹が減ったのじゃ。分けてもらった保存食は全て平らげてしまったからのう。
 お腹を押さえながら待つ時間というのはなかなかに長いモノであるというのは船の上での空腹でよく身に染みたのじゃ。
 とりあえずはどこかで食料を調達するとしよう。
 そう考えた我はとりあえずは声と匂いのする方へ向け人波をかきわけるように進むことにした。


「ちょ、押すなよ!」
「なんかよこからすごい力が」


 ぐいぐいと吹き飛ばさない程度の力を込めて人波をどけていく。やがて人波を抜け、道の端に出ると篭った空気ではなくそこそこに新鮮な空気であったためにめいいっぱい吸い込む。


「うむ、人混みはつらいの」


 軽く伸びをした後に再びいい匂いが我の鼻をかすめる。その匂いがなんなのか気になったのでふらふらと引き寄せられるようにしてそちらに向かう。


「ここかの?」


 匂いの漂う場所にやってくるとそこには大量の肉を焼いているのか香ばしい匂いが充満していた。


「おお」


 いくつもの肉が棒切れのようなモノに突き刺さっており、それをその店の主人らしき男が慣れた手つきで火で炙り、壺の中の液体に付けまた炙るというのを繰り返していた。壺に付けられた肉が火で炙られるたびにこの周囲によい香りが広がっているようじゃ。


「ん? 嬢ちゃんいるかい? 一本四十セルだ」
「ん、食べたいのだセルとやらを持っとらん」
「金なし…… にしてはいい服着てるがその皮袋には入ってないのか?」


 男が指差してきたのは我が片手に持つイーサンから貰った皮袋じゃが。


「これには平べったい石しか入っとらんが?」
「平べったい石? まぁ、いい一回見せてみな」


 肉を焼くのを止めた男に皮袋を渡す。男は重さに顔をしかめながら中を確認して口を大きく開けてなんとも間抜けな顔を晒していた。


「いや、おまえ、これかなりの大金だぞ?」


 どうやらイーサンが寄越したのは結構な金額のお金だったようじゃ。
 これで肉が食えるのぅ!

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