雑食無双ヨルムン
ただの痛いぱんちであらず
海賊の腹へ突き刺さった拳からはじんわりとした痛みが腕へと広がっていくんじゃが、さっきの海賊共が言うほうだんとやらを腹に食らったことに比べると我慢できる程度であった。
そのため顔を歪めることなく拳を突き立てた海賊を見ようとしたわけなんじゃが。
「かひゅ⁉︎」
なんとも言えない声を上げた海賊の姿が一瞬にして搔き消える。ん? 高速で移動したのかのう? 首を傾げていると船の一部が爆発したような音がなり、なにかが潰れるような音と悲鳴が重なるように聞こえてきた。
音の方へと目を向けると木片らしきものと血らしい赤いものが散らばり、壊れている通路らしきものが見えていた。
「うん?」
軽く吹き飛ばすくらいにしか意識をしていなかった拳を突き出したままの姿勢で固まった我と、
「えっ?」
ふざけたような声を出すことなく、しかし、先ほどまでと同じようにふざけたような仕草を途中で止め、固まった海賊たちが動きを止める。
しばし、両方が予定外の光景に動きを止め、硬直していたのだが我の方が先に現実に戻り軽く手を開け閉めし、何も少し痛いだけで何の問題ないことを確認し終える。
「おい、人が吹き飛んだぞ……」
「なんか船内に通じる通路の屋根が吹き飛ばされてるんだが……」
「殴られたバイアはどこだ?」
少し遅れ正気に戻った海賊共であるがまだ現実に起こったことが認識できてないのか動揺が見て取れた。
そんな海賊共を無視し、我は一歩前に踏み出す。
「で、次は誰じゃ?」
静かに告げ、一番手近な奴に向かい駆ける。そしてその勢いを殺さぬまま体ごとぶつかる。
「がぁ⁉︎」
短い悲鳴をあげ吹き飛ばされた海賊は船の壁を破壊し、海の上を滑るように飛び、やがて水しぶきを上げて見えなくなった。
もひとつおまけと言わんばかりに今度は横の奴に蹴りを繰り出すと面白いくらい回転しながら吹き飛び周りの海賊を巻き込みながらやはりこいつも船の一部を壊しながら海へと飛んでいった。
「こ、こいつやべぇ!」
「ひるむな! 敵は一人で武器はない! 槍だ槍もってこい!」
仲間が海に飛んでいってようやく危機感を覚えたかのようにして我を再び取り囲む。何人かは船の中に入り武器を取りに行ったようじゃった。
「で、さっきの話なんじゃがな、とっと船を降りたりせぬか?」
「海賊が小娘一人に逃げたりなんてしたらな、この業界じゃいけねぇんだよ!」
海賊の一人が声を荒げながら剣を我の頭に向かい振り下ろしてきた。
見える。しかし、避けるほどの身体能力は我の体にはないようなのでとりあえずは腕を伸ばして頭を守る。間に合うかどうか微妙なところであったがなんとか間に合い、迫ってきた刃を受け止める。
みしりという音が届き、剣が真っ二つに叩き折れた。
「な、なんだどばぁび⁉︎」
驚愕に目を見開いてた海賊の顔面に防いでいないほうの手で拳を作り、顎を打ち抜く。またも海賊は一瞬にして姿が消え、持っていた剣だけが音を立てて落ちてきた。
「効かんけど痛いんじゃぞ⁉︎」
怒るように言った我は転がる折れた剣を拾い上げるとしばらくそれを眺める。うむ、スキルを試すのには丁度いいじゃろ。持っていた剣を口に近づけ、大きく口をあけると中へと放り込んだ。
「モグモグ、おお! 食えるようになっとる! やはりレベルを上げたら元のスキルに戻せるのかもしれんのう」
『未知の味を取得しました。経験を30入手しました』
落ちていた剣の破片なども綺麗に食べてみたが特に体にも異常はないみたいじゃな。れべるは上がらんかったが。
「や、槍で突けぇ! 近づかず離れて突き殺せぇ!」
いつの間にか武器が揃ったのか我を囲む輩の手には槍が握られておる。明らかに我の体よりも長い槍じゃし手は届きそうには見えんの。
「殺れぇ!」
号令がかけられ我に向かい無数の槍が放たれ、我の体に次々と地味に痛い衝撃が走り、さらにその槍は我の体に突き刺さ……ることなく全てひん曲がった。まぁ、予想通りなんじゃがな。
『あぁぁぁ⁉︎ 腕がぁぁぁぁぁぁ!』
「ん?」
予想外の悲鳴のような声が聞こえてので周りを見ると海賊共は槍を落とし、我を囲んでいた奴ら全員が腕を押さえて呻いておるようじゃった。
「なんなんだよ、鉄を殴ったみたいな衝撃だぞ」
「俺らが突いたのガキじゃねえのかよ」
口々に悪態をつき、それでいて我が一番よく向けられた瞳、恐怖の色に染まった瞳を向けてくる。うむ、久々にそんな色を見たのじゃな。なにせ人に会うのも久しぶりなわけじゃし。
「で、いい加減に諦めたりせんかの?」
「ま、まだだ! まだボスがまけてねぇ!」
「そうだ、ボスなら!」などと海賊共は腕を押さえながら勝手に盛り上がってるわけなんじゃが。なぜこやつらは自分で勝てない輩を他人に押しつけようとしとるんじゃろう?
「ボスぅぅ! ボスぅぅ!」
一人がボスと叫びだすとなにやら周りの奴らまでボスと連呼しだしたのじゃが、これはなんの祭りなんじゃ?
「うるせぇぇぇぞ! 商船から荷物は奪ったのかバカ野郎共!」
なんか野太い声が船の中から聞こえてきたんじゃが、さっさと諦めてくれたりはしないんじゃろうなぁ
そのため顔を歪めることなく拳を突き立てた海賊を見ようとしたわけなんじゃが。
「かひゅ⁉︎」
なんとも言えない声を上げた海賊の姿が一瞬にして搔き消える。ん? 高速で移動したのかのう? 首を傾げていると船の一部が爆発したような音がなり、なにかが潰れるような音と悲鳴が重なるように聞こえてきた。
音の方へと目を向けると木片らしきものと血らしい赤いものが散らばり、壊れている通路らしきものが見えていた。
「うん?」
軽く吹き飛ばすくらいにしか意識をしていなかった拳を突き出したままの姿勢で固まった我と、
「えっ?」
ふざけたような声を出すことなく、しかし、先ほどまでと同じようにふざけたような仕草を途中で止め、固まった海賊たちが動きを止める。
しばし、両方が予定外の光景に動きを止め、硬直していたのだが我の方が先に現実に戻り軽く手を開け閉めし、何も少し痛いだけで何の問題ないことを確認し終える。
「おい、人が吹き飛んだぞ……」
「なんか船内に通じる通路の屋根が吹き飛ばされてるんだが……」
「殴られたバイアはどこだ?」
少し遅れ正気に戻った海賊共であるがまだ現実に起こったことが認識できてないのか動揺が見て取れた。
そんな海賊共を無視し、我は一歩前に踏み出す。
「で、次は誰じゃ?」
静かに告げ、一番手近な奴に向かい駆ける。そしてその勢いを殺さぬまま体ごとぶつかる。
「がぁ⁉︎」
短い悲鳴をあげ吹き飛ばされた海賊は船の壁を破壊し、海の上を滑るように飛び、やがて水しぶきを上げて見えなくなった。
もひとつおまけと言わんばかりに今度は横の奴に蹴りを繰り出すと面白いくらい回転しながら吹き飛び周りの海賊を巻き込みながらやはりこいつも船の一部を壊しながら海へと飛んでいった。
「こ、こいつやべぇ!」
「ひるむな! 敵は一人で武器はない! 槍だ槍もってこい!」
仲間が海に飛んでいってようやく危機感を覚えたかのようにして我を再び取り囲む。何人かは船の中に入り武器を取りに行ったようじゃった。
「で、さっきの話なんじゃがな、とっと船を降りたりせぬか?」
「海賊が小娘一人に逃げたりなんてしたらな、この業界じゃいけねぇんだよ!」
海賊の一人が声を荒げながら剣を我の頭に向かい振り下ろしてきた。
見える。しかし、避けるほどの身体能力は我の体にはないようなのでとりあえずは腕を伸ばして頭を守る。間に合うかどうか微妙なところであったがなんとか間に合い、迫ってきた刃を受け止める。
みしりという音が届き、剣が真っ二つに叩き折れた。
「な、なんだどばぁび⁉︎」
驚愕に目を見開いてた海賊の顔面に防いでいないほうの手で拳を作り、顎を打ち抜く。またも海賊は一瞬にして姿が消え、持っていた剣だけが音を立てて落ちてきた。
「効かんけど痛いんじゃぞ⁉︎」
怒るように言った我は転がる折れた剣を拾い上げるとしばらくそれを眺める。うむ、スキルを試すのには丁度いいじゃろ。持っていた剣を口に近づけ、大きく口をあけると中へと放り込んだ。
「モグモグ、おお! 食えるようになっとる! やはりレベルを上げたら元のスキルに戻せるのかもしれんのう」
『未知の味を取得しました。経験を30入手しました』
落ちていた剣の破片なども綺麗に食べてみたが特に体にも異常はないみたいじゃな。れべるは上がらんかったが。
「や、槍で突けぇ! 近づかず離れて突き殺せぇ!」
いつの間にか武器が揃ったのか我を囲む輩の手には槍が握られておる。明らかに我の体よりも長い槍じゃし手は届きそうには見えんの。
「殺れぇ!」
号令がかけられ我に向かい無数の槍が放たれ、我の体に次々と地味に痛い衝撃が走り、さらにその槍は我の体に突き刺さ……ることなく全てひん曲がった。まぁ、予想通りなんじゃがな。
『あぁぁぁ⁉︎ 腕がぁぁぁぁぁぁ!』
「ん?」
予想外の悲鳴のような声が聞こえてので周りを見ると海賊共は槍を落とし、我を囲んでいた奴ら全員が腕を押さえて呻いておるようじゃった。
「なんなんだよ、鉄を殴ったみたいな衝撃だぞ」
「俺らが突いたのガキじゃねえのかよ」
口々に悪態をつき、それでいて我が一番よく向けられた瞳、恐怖の色に染まった瞳を向けてくる。うむ、久々にそんな色を見たのじゃな。なにせ人に会うのも久しぶりなわけじゃし。
「で、いい加減に諦めたりせんかの?」
「ま、まだだ! まだボスがまけてねぇ!」
「そうだ、ボスなら!」などと海賊共は腕を押さえながら勝手に盛り上がってるわけなんじゃが。なぜこやつらは自分で勝てない輩を他人に押しつけようとしとるんじゃろう?
「ボスぅぅ! ボスぅぅ!」
一人がボスと叫びだすとなにやら周りの奴らまでボスと連呼しだしたのじゃが、これはなんの祭りなんじゃ?
「うるせぇぇぇぞ! 商船から荷物は奪ったのかバカ野郎共!」
なんか野太い声が船の中から聞こえてきたんじゃが、さっさと諦めてくれたりはしないんじゃろうなぁ
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