メイドと武器商人
メイドとメイド秘技
鉄の扉を三度ノックを行います。
中で動く気配は感じられますが扉に近づいてくる気配は感じ取れません。仕方なしに再びノックを繰り返します。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンドン!
「出なさいよ!」
「マナー違反だよ?」
は! つい本気で殴ってしまいました。
少しばかり鋼鉄製の扉の一部が私の拳の形に凹んでしまいましたが多分バレませんよね? バレそうになったら扉をぶち壊すことにしましょう。ごく自然な形で潰せば誰も気づきませんよね?
いやもっと原型がわからないほど殴ればわからないはずです。
「…… 何者だ」
とりあえず拳を振りかぶりさらに扉を凹まそうとしたところで扉が僅かに開くと幸の薄そうな男がこちらを覗き込むようにしてきました。
私は慌てて作っていた拳をほどきにこやかな笑みを浮かべるとスカートの裾を摘み一礼します。
「お初にお目にかかります私、ベルモンディアス家のメイドでリッ……」
「そんな特殊な娼婦なんぞ頼んでない」
冷たく言い放たれると鈍い音を響かせながら扉は閉じられてしまいました。
し、娼婦? この完璧なるメイドであるリップスを娼婦扱い⁉︎
人の話は最後まで聞きなさいと母親から教わらなかったのでしょうか?
いえ、きっと彼には両親がいなかったのでしょう。きちんと叱ってくれる大人がいなかったというのはなんと不憫なことなんでしょうか。
私の場合は口答えすれば比喩表現全くなしの魔力で強化された文字通りの鉄拳を食らわされていましたからね。食いたくなければ嫌でも学習するというものです。
ですが如何に同情の余地があろうともご主人様の貴重な時間を浪費させるわけにはいきません。
「リップスまだ〜?」
退屈、というか疲れた様子のご主人様が階段に腰を下ろし、足をぶらぶらと振っています。足が揺れるたびにご主人様の下着が見えそうで見えないという絶妙なチラリズムを発揮!
思わず屈み込み下から覗き込みたくなるような光景ですが必死に欲望を押さえ込みます。
「ご主人様、もうしばらくお待ちください。あ、これでも食べておいてください」
そう告げると私はスカートの下から袋に入ったお菓子を取り出すとご主人様の手の上に載せます。
「リップスのスカートってどうなってるの? この前はそこからバカみたいな量の手榴弾出してきたよね」
手にしたお菓子の封を開けながらもご主人様は不思議そうに幾度も瞬きをしながら私のスカートを凝視してきます。
「ふふふ、メイドの二十三ある秘儀のうちの一つです」
「半端な数だなぁ」
「くう!」
やはり半端な数ではダメだと⁉︎
でも嘘の数字をご主人様に伝えるわけにはいきませんし……
こうなったら時間を作ってせめて特殊な技的なものをあと百程つくるべきでしょうか……
よし、主人の期待に答えるのもメイドの務めです。
家に帰ったら特訓するしかありませんね。
ですがその前にっと。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
再び扉を叩きます。
今度は拳を作り殴りつけるようにして。拳が扉に当たるたびに鈍い音が響き、鉄製であるはずの扉に私の拳の形が刻まれていきます。
「く、なんだ⁉︎ 扉が開けにくくなってやがる!」
私が殴ったせいで扉が変形したせいなのか若干扉が開けにくくなっているようです。男がなにやら扉を開けようとしているようなのでこちらから扉を開けて差し上げます。さしたる労力もかからずに扉はいろいろと壊れそうな音を立てながら開かれます。
「うるせぇ! 会合中なんだ! 静かにしやがれ! バラされてぇのか!」
どうやら自分の力で扉を開いた思ったよ男は威勢良く唾を飛ばしながらさりげなく脅迫まで混ぜてきました。
「お初にお目にかかります私、ベルモンディアス家のメイドでリッ……」
「さっきも聞いたんだよ⁉︎ 何の用だ!」
おや、人の話をちゃんと聞いていたのですね。ですが怒りっぽいようです。カルシウム不足かもしれませんね。
「ご主人様がこちらに用があるということでしたので……」
「こっちには用がねえんだよ!」
今度は懐から銃を取り出して威嚇してきました。
それで私が黙ると怯んだと思ったのでしょう。男は満足げに笑みを浮かべると再び扉を頑張って閉めていきました。
ご丁寧に扉の反対側から閂止めをされたような音と気配を感じます。
しかたありません。
「メイド秘儀を使う場面のようですね」
「どんなのどんなの」
少しばかりご主人様が期待したような眼差しをむけてきます。
その期待に答えるべくわたしは扉の前で軽く構えを取ると軽く一息吸い。
「秘儀! 鍵要らず!」
弾けるように鉄製の扉に全力の蹴りを叩きつけてやります。
軽く殴りつけていただけでも拳の形に変形していた扉は私の蹴りを食らうと同時に弾け飛んでいきます。その飛んでいる軌跡状にいるなにやらガラの悪そうな輩を巻き込みながらですが。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
一瞬にして部屋の中は阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わります。センサーが血の匂いを感知したところを鑑みるに死傷者が出てるかもしれませんね。
「どうですご主人様! 秘儀鍵要らずは!」
笑みを浮かべながら振り返った私が見たものは何故か残念そうにしたご主人様の顔でした。
スキルは完璧に発揮したはずなのですが一体何が悪かったのでしょう?
「リップス」
深々と本当に深々としたため息をご主人様はつきながら。
「ただの蹴りじゃん」
がっかりしたように言われました……
中で動く気配は感じられますが扉に近づいてくる気配は感じ取れません。仕方なしに再びノックを繰り返します。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンドン!
「出なさいよ!」
「マナー違反だよ?」
は! つい本気で殴ってしまいました。
少しばかり鋼鉄製の扉の一部が私の拳の形に凹んでしまいましたが多分バレませんよね? バレそうになったら扉をぶち壊すことにしましょう。ごく自然な形で潰せば誰も気づきませんよね?
いやもっと原型がわからないほど殴ればわからないはずです。
「…… 何者だ」
とりあえず拳を振りかぶりさらに扉を凹まそうとしたところで扉が僅かに開くと幸の薄そうな男がこちらを覗き込むようにしてきました。
私は慌てて作っていた拳をほどきにこやかな笑みを浮かべるとスカートの裾を摘み一礼します。
「お初にお目にかかります私、ベルモンディアス家のメイドでリッ……」
「そんな特殊な娼婦なんぞ頼んでない」
冷たく言い放たれると鈍い音を響かせながら扉は閉じられてしまいました。
し、娼婦? この完璧なるメイドであるリップスを娼婦扱い⁉︎
人の話は最後まで聞きなさいと母親から教わらなかったのでしょうか?
いえ、きっと彼には両親がいなかったのでしょう。きちんと叱ってくれる大人がいなかったというのはなんと不憫なことなんでしょうか。
私の場合は口答えすれば比喩表現全くなしの魔力で強化された文字通りの鉄拳を食らわされていましたからね。食いたくなければ嫌でも学習するというものです。
ですが如何に同情の余地があろうともご主人様の貴重な時間を浪費させるわけにはいきません。
「リップスまだ〜?」
退屈、というか疲れた様子のご主人様が階段に腰を下ろし、足をぶらぶらと振っています。足が揺れるたびにご主人様の下着が見えそうで見えないという絶妙なチラリズムを発揮!
思わず屈み込み下から覗き込みたくなるような光景ですが必死に欲望を押さえ込みます。
「ご主人様、もうしばらくお待ちください。あ、これでも食べておいてください」
そう告げると私はスカートの下から袋に入ったお菓子を取り出すとご主人様の手の上に載せます。
「リップスのスカートってどうなってるの? この前はそこからバカみたいな量の手榴弾出してきたよね」
手にしたお菓子の封を開けながらもご主人様は不思議そうに幾度も瞬きをしながら私のスカートを凝視してきます。
「ふふふ、メイドの二十三ある秘儀のうちの一つです」
「半端な数だなぁ」
「くう!」
やはり半端な数ではダメだと⁉︎
でも嘘の数字をご主人様に伝えるわけにはいきませんし……
こうなったら時間を作ってせめて特殊な技的なものをあと百程つくるべきでしょうか……
よし、主人の期待に答えるのもメイドの務めです。
家に帰ったら特訓するしかありませんね。
ですがその前にっと。
ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
再び扉を叩きます。
今度は拳を作り殴りつけるようにして。拳が扉に当たるたびに鈍い音が響き、鉄製であるはずの扉に私の拳の形が刻まれていきます。
「く、なんだ⁉︎ 扉が開けにくくなってやがる!」
私が殴ったせいで扉が変形したせいなのか若干扉が開けにくくなっているようです。男がなにやら扉を開けようとしているようなのでこちらから扉を開けて差し上げます。さしたる労力もかからずに扉はいろいろと壊れそうな音を立てながら開かれます。
「うるせぇ! 会合中なんだ! 静かにしやがれ! バラされてぇのか!」
どうやら自分の力で扉を開いた思ったよ男は威勢良く唾を飛ばしながらさりげなく脅迫まで混ぜてきました。
「お初にお目にかかります私、ベルモンディアス家のメイドでリッ……」
「さっきも聞いたんだよ⁉︎ 何の用だ!」
おや、人の話をちゃんと聞いていたのですね。ですが怒りっぽいようです。カルシウム不足かもしれませんね。
「ご主人様がこちらに用があるということでしたので……」
「こっちには用がねえんだよ!」
今度は懐から銃を取り出して威嚇してきました。
それで私が黙ると怯んだと思ったのでしょう。男は満足げに笑みを浮かべると再び扉を頑張って閉めていきました。
ご丁寧に扉の反対側から閂止めをされたような音と気配を感じます。
しかたありません。
「メイド秘儀を使う場面のようですね」
「どんなのどんなの」
少しばかりご主人様が期待したような眼差しをむけてきます。
その期待に答えるべくわたしは扉の前で軽く構えを取ると軽く一息吸い。
「秘儀! 鍵要らず!」
弾けるように鉄製の扉に全力の蹴りを叩きつけてやります。
軽く殴りつけていただけでも拳の形に変形していた扉は私の蹴りを食らうと同時に弾け飛んでいきます。その飛んでいる軌跡状にいるなにやらガラの悪そうな輩を巻き込みながらですが。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
一瞬にして部屋の中は阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わります。センサーが血の匂いを感知したところを鑑みるに死傷者が出てるかもしれませんね。
「どうですご主人様! 秘儀鍵要らずは!」
笑みを浮かべながら振り返った私が見たものは何故か残念そうにしたご主人様の顔でした。
スキルは完璧に発揮したはずなのですが一体何が悪かったのでしょう?
「リップス」
深々と本当に深々としたため息をご主人様はつきながら。
「ただの蹴りじゃん」
がっかりしたように言われました……
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