メイドと武器商人
メイドと来客
「穴がふさがりません……」
私は腕を組み、目の前に広がる屋敷の中に不釣り合いの大きなクレーターを眺めながら首を傾げます。
以前完璧に隠し通したと思っていた床の穴をあっさりとご主人様に発見され笑顔で、しかし目が笑っていなかった顔で「綺麗に戻してね」とおそらくは語尾にハートマークがつくような声音で命令されてしまったからです。
しかし、私は気付きました。
私、超不器用。
何かを壊すことは特に意識をすることもなく非常に容易くできるのですが緻密な作業をすると大体が破壊活動へとつながってしまいます。
すさまじく不思議な現象です。
今も朝から穴の修理をしているのですが穴は塞がるどころか大きくなっていくばかりです。
「なぜでしょう?」
リンゴーン
「あら? 来客ですかね?」
思案中、玄関に備え付けた呼び出しのベルが響き、私は掃除と言う名のロビーの破壊活動を一旦中止すると私は玄関へ向かい駈けます。
駈けながら本日の予定を頭の中でもう一度確認。
しかし、今日はご主人様からは来客が来るとは聞いていません。
そのため、ご主人様はベッドに潜り込み惰眠を貪っているのですから。
すでに貯めたお小遣いで購入したカメラで試し撮りと言わんばかりにご主人様の寝顔を大量に撮っています。
あとでアルバムにしなければ!
そんなことを考えている間に体は玄関前へと到着。
そして扉を壊さないように慎重に力を制御し玄関の扉を開きます。
「はーい、どちらさま……」
「姉さま、なんだかメイドみたいですね」
この淡白な声はっと予想をしながら開いた扉からわずかに視線を下げるとそこには銀の輝く髪を大きな赤いリボンで一括りにした私とそっくりな顔をした少女が目に入り思わず私は眉をひそめてしまいます。
「何の用です? フィル」
「それは失礼。フィルは姉さまの妹。妹が姉に会いに来るのは普通のこと」
人間には表情筋というのがあると聞いたことがありますかこの子は全く動かない無表情。唯一動いているの口くらいのものです。
しかし、その無表情とは正反対なくらいに着ている服は奇抜と言えるでしょう。私と同じように黒と白を基調としたメイド服ではあるのですがやたらと肌の露出があるのです。背中に至ってはほぼ腰まで見えています。さらにはスカートなどは少し動くだけで下着が見えるほどの短さです。
この服を別にフィルが好んで着ているわけでは無いのでしょうが明らかにあの人の趣味が混じっていることに思わずため息をついてしまいます。
「姉様、おつかれ?」
あからさまに目の前で深々とため息をついたのでフィルが心配? そうには見えない無表情ぷりで私を見上げてきます。
「……何の用です」
「妹が……」
「お引き取りください」
最後までまた同じような言葉を発するのを許さずに私は勢いよく玄関の扉を閉めます。ですが閉めようとした一瞬の間にフィルは足を扉の隙間に滑り込ませると私が扉を閉めようとするのを妨げてきます。
「姉さま、なぜフィルが喋ってる時に扉を閉める?」
扉の隙間から透き通るような蒼い瞳を覗かせながらフィルは首を傾げてきます。これが街中の美少女であったのであれば有無を言わさずにお持ち帰りをしてしまったことでしょう。
ですがこの無愛想というか無表情妹は別です!
「どうせ母様のお使いでしょう!」
「そんなことはない。フィルは割と姉様のことを心配している。今も困っているとフィルのセンサーにビビっときてる」
わりかし本気の力で扉を閉めているのですがフィルは足を引く気は無いようです。それどころか空いている隙間にグイグイと自分の小さな体を入れようと頑張っているようです。
「なにも困ってませんから帰ってください!」
「本当に? 例えば床を掃除していたら力の加減を間違えて床に穴を開けたりとか、その穴を隠そうとしてフルーティ様に怒られたり、その穴を直そうとしてさらに穴を大きくしたりしてない?」
「なんでまるで見てきたかのように的確に言うんですか!」
「妹からは逃げられない」
この妹、怖い!
なに私を捕まえる宣言をしてるんですか!
私が衝撃を受けて力が緩んだ隙を見逃さずにフィルは隙間から滑り込むようにして許可もしていないのに屋敷の中に入ってきました。
「というのは冗談。以前、姉様がやらかしたことを例に挙げて見ただけ」
なんだ、冗談ですか……
ですが言われて気付きましたが私、同じ失敗ばかりしてるんですね。
「姉様失敗はだれにでもある」
「妹に肩を叩かれながら慰められる姉はどうなんでしょうか」
この妹嫌い!
「姉様姉様」
「今度はなんです」
もう会話するのすらしんどいですよ、妹。
さっさと帰って欲しいくらいです。
「フルーティ様のお風呂の写真、いる?」
どうやってしまっていたかと疑問を浮かべるほどに薄いまな板からフィルが取り出したのは一糸纏わぬ麗しきご主人様たるフルーティ様の神々しさすら漂うような裸体が映し出されている写真。それをフィルは細い指に挟み私に見えるようにしてきたのでした。
ふ、妹よ。そんなもので釣られるような姉ではないのですよ。
「フィル」
「ん?」
「おやつ食べますか? いいやつがあります」
「交渉成立」
私とフィルのしがらみはなくなり、互いに手を差し出しあい握手をした私たちは取引の成功に満足気な表情を浮かべ合うのでした。
私は腕を組み、目の前に広がる屋敷の中に不釣り合いの大きなクレーターを眺めながら首を傾げます。
以前完璧に隠し通したと思っていた床の穴をあっさりとご主人様に発見され笑顔で、しかし目が笑っていなかった顔で「綺麗に戻してね」とおそらくは語尾にハートマークがつくような声音で命令されてしまったからです。
しかし、私は気付きました。
私、超不器用。
何かを壊すことは特に意識をすることもなく非常に容易くできるのですが緻密な作業をすると大体が破壊活動へとつながってしまいます。
すさまじく不思議な現象です。
今も朝から穴の修理をしているのですが穴は塞がるどころか大きくなっていくばかりです。
「なぜでしょう?」
リンゴーン
「あら? 来客ですかね?」
思案中、玄関に備え付けた呼び出しのベルが響き、私は掃除と言う名のロビーの破壊活動を一旦中止すると私は玄関へ向かい駈けます。
駈けながら本日の予定を頭の中でもう一度確認。
しかし、今日はご主人様からは来客が来るとは聞いていません。
そのため、ご主人様はベッドに潜り込み惰眠を貪っているのですから。
すでに貯めたお小遣いで購入したカメラで試し撮りと言わんばかりにご主人様の寝顔を大量に撮っています。
あとでアルバムにしなければ!
そんなことを考えている間に体は玄関前へと到着。
そして扉を壊さないように慎重に力を制御し玄関の扉を開きます。
「はーい、どちらさま……」
「姉さま、なんだかメイドみたいですね」
この淡白な声はっと予想をしながら開いた扉からわずかに視線を下げるとそこには銀の輝く髪を大きな赤いリボンで一括りにした私とそっくりな顔をした少女が目に入り思わず私は眉をひそめてしまいます。
「何の用です? フィル」
「それは失礼。フィルは姉さまの妹。妹が姉に会いに来るのは普通のこと」
人間には表情筋というのがあると聞いたことがありますかこの子は全く動かない無表情。唯一動いているの口くらいのものです。
しかし、その無表情とは正反対なくらいに着ている服は奇抜と言えるでしょう。私と同じように黒と白を基調としたメイド服ではあるのですがやたらと肌の露出があるのです。背中に至ってはほぼ腰まで見えています。さらにはスカートなどは少し動くだけで下着が見えるほどの短さです。
この服を別にフィルが好んで着ているわけでは無いのでしょうが明らかにあの人の趣味が混じっていることに思わずため息をついてしまいます。
「姉様、おつかれ?」
あからさまに目の前で深々とため息をついたのでフィルが心配? そうには見えない無表情ぷりで私を見上げてきます。
「……何の用です」
「妹が……」
「お引き取りください」
最後までまた同じような言葉を発するのを許さずに私は勢いよく玄関の扉を閉めます。ですが閉めようとした一瞬の間にフィルは足を扉の隙間に滑り込ませると私が扉を閉めようとするのを妨げてきます。
「姉さま、なぜフィルが喋ってる時に扉を閉める?」
扉の隙間から透き通るような蒼い瞳を覗かせながらフィルは首を傾げてきます。これが街中の美少女であったのであれば有無を言わさずにお持ち帰りをしてしまったことでしょう。
ですがこの無愛想というか無表情妹は別です!
「どうせ母様のお使いでしょう!」
「そんなことはない。フィルは割と姉様のことを心配している。今も困っているとフィルのセンサーにビビっときてる」
わりかし本気の力で扉を閉めているのですがフィルは足を引く気は無いようです。それどころか空いている隙間にグイグイと自分の小さな体を入れようと頑張っているようです。
「なにも困ってませんから帰ってください!」
「本当に? 例えば床を掃除していたら力の加減を間違えて床に穴を開けたりとか、その穴を隠そうとしてフルーティ様に怒られたり、その穴を直そうとしてさらに穴を大きくしたりしてない?」
「なんでまるで見てきたかのように的確に言うんですか!」
「妹からは逃げられない」
この妹、怖い!
なに私を捕まえる宣言をしてるんですか!
私が衝撃を受けて力が緩んだ隙を見逃さずにフィルは隙間から滑り込むようにして許可もしていないのに屋敷の中に入ってきました。
「というのは冗談。以前、姉様がやらかしたことを例に挙げて見ただけ」
なんだ、冗談ですか……
ですが言われて気付きましたが私、同じ失敗ばかりしてるんですね。
「姉様失敗はだれにでもある」
「妹に肩を叩かれながら慰められる姉はどうなんでしょうか」
この妹嫌い!
「姉様姉様」
「今度はなんです」
もう会話するのすらしんどいですよ、妹。
さっさと帰って欲しいくらいです。
「フルーティ様のお風呂の写真、いる?」
どうやってしまっていたかと疑問を浮かべるほどに薄いまな板からフィルが取り出したのは一糸纏わぬ麗しきご主人様たるフルーティ様の神々しさすら漂うような裸体が映し出されている写真。それをフィルは細い指に挟み私に見えるようにしてきたのでした。
ふ、妹よ。そんなもので釣られるような姉ではないのですよ。
「フィル」
「ん?」
「おやつ食べますか? いいやつがあります」
「交渉成立」
私とフィルのしがらみはなくなり、互いに手を差し出しあい握手をした私たちは取引の成功に満足気な表情を浮かべ合うのでした。
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