メイドと武器商人
メイドと新兵器
メイドの朝は早い。
屋敷の誰よりも早く起きるものです。
というより私は睡眠を必要としないわけですが。
なぜかって? それは私が一流のメイドマスターだからに他なりません。
そして睡眠をとる必要がない私は必然的に誰よりも早くといっていいのかはわかりませんが起きているわけです。
本日は暗殺者や盗賊といった方々がいらっしゃらなかったので私が仕掛けた罠などが一切稼働している形跡もありません。
まあ、稼働したら即座に私にビビっとくるようになっているわけなんですがそれもありませんでしたし夜は平穏無事といっても問題がないものだったでしょう。
とりあえず日課とも言える掃除を開始しようとモップとバケツを手にした私がロビーへと赴くと階段の上からまだ眠そうにしたご主人様の姿が見えました。
「リップス、相変わらず早いね」
「おはようございます、ご主人様」
ああ、今日も本当にお可愛いらしい。
そして私の美的感覚は間違いではなかった! ご主人様にはまだ大人っぽいパジャマではなくクマさん柄のパジャマが似合う!
永久保存したいほどの愛らしさであるほどです。
「リップス。今日の予定は?」
危うくメイドとしての本分を忘れてしまうところでした。
メイドとは主人をサポートするもの自分の我を通すものではありません。
…… あとでカメラを買いに行かなければ。ご主人様の表情の全てを記録するために!
今の欠伸を噛み殺しているご主人様の表情! 金塊に相当する価値ですから!
「本日のご予定は会食の申し込みが…… 二件、取引が一件となっておりますがどう致しますか?」
おっと危ない。
また自分の思考にとらわれてしまうところでした。
「んー、なんか嫌そうな顔しながら言ってきたね。会食の申し込みって誰と?」
「フランベルク様とナルタク様です」
「あー、あのデブとガリガリくんか〜 あいつら性格悪いし気持ち悪いからなぁ〜 キャンセルで」
「畏まりました」
あっさりと人となりでキャンセルを言い放つご主人様は素敵すぎます。
まあ、あの汚臭漂うデブと不衛生なのっぽ貴族に麗しのご主人様を近づけるというのは論外です。
もしご主人様に近づきたいのであれば漂白剤に三ヶ月は漬け込んで殺菌などをしてからでなければ私が許しません。
「それとご主人様宛に大層頭の悪いお手紙が三通きております。全て開封済みでトラップなどの危険はありません」
「ふーん」
どうでも良いと言わんばかりに私へと手を伸ばしてきたご主人様へと三通の手紙を手渡します。
再び欠伸を一つした我が主人は寝ぼけたような眼で手紙の文字を追っていき、読み終わるたびに手紙を床へと放り投げていきます。
「欲張りどもがおおいなぁ〜」
「どういった内容で?」
床へと捨てられていく手紙を拾いつつご主人様へと尋ねます。
「あれ読んでないの?」
「ご主人様宛の手紙ですよ? 罠を警戒するのはメイドの仕事ですが内容まで把握していませんので」
なにせ私では内容を理解することもできないでしょうし。
「簡単な話さ。この町の貴族様からの手紙さ」
「貴族から?」
「うん、要約すると命が惜しければうちに武器をよこせって事だよ」
あははと自分の命が狙われている事を教えてくれるご主人様。
相手が貴族というのは面倒です。
あいつらは無駄に横や縦の繋がりがありますからね。むかつくからプッチンしても今度は斜めから違う貴族が現れそうですし。
「まさかご主人様、泣き寝入りするんですか?」
「それこそまさかだよリップス。僕は商人だよ? タダでなんてありえないよ」
転んでもただは起きないよとご主人は笑います。
そうでした。我がご主人様は武器商人。
死を運ぶ商人にも関わらず振る舞いや態度から見られても「お前武器商人じゃねえだろ!」と街の人からも言われるほどに親しみやすい主です。
あれ? ご主人様侮られてる?
「ではどうするんです?」
「そうだね。まずはお手紙でも書くさ」
なるほど。まずは会話というわけですか。
さすがはご主人様、超平和的。
「その後に屋敷をぶっ飛ばそう」
おっと訂正。
めてゃくちゃ過激でした。しかし即決断の我がご主人様。素敵です。
「じゃ、リップス。これを二時間後に四キロ先のこの地点に放り投げてね」
パジャマ姿であるはずのご主人様がどこから取り出したのかわからないですが赤い丸が入ったこの街の地図、そして拳大の黒い物体を私へと手渡してきます。
「こちらは?」
「ミズノとカワノの合作の新兵器らしいよ。せっかくだし業突く張りな貴族様に差し上げようじゃないか」
とんでもなく物騒なものを渡されました。
ミズノとカワノ。
どちらもご主人が懇意にしているところですがいただけない。
もう危険な香りしかいたしません。
「この赤丸のところに放り投げてね。それとどんな風に見えたか教えるように」
再び欠伸を一つするとご主人様は話は終わったと言わんばかりに自室へ向けて歩いていくようです。
どうやら貴族宛に手紙を書くようですね。
魔導鳩を使えば何処へでも手紙を届けれるようになったというのは素晴らしく便利になったものです。
「二時間ですか」
ロビーにある時計を見上げて時間を確認したのちに私はバケツとモップを用いてリビングの掃除を開始したのでした。
あ、力加減間違えて床が削れてしまいました……
屋敷の誰よりも早く起きるものです。
というより私は睡眠を必要としないわけですが。
なぜかって? それは私が一流のメイドマスターだからに他なりません。
そして睡眠をとる必要がない私は必然的に誰よりも早くといっていいのかはわかりませんが起きているわけです。
本日は暗殺者や盗賊といった方々がいらっしゃらなかったので私が仕掛けた罠などが一切稼働している形跡もありません。
まあ、稼働したら即座に私にビビっとくるようになっているわけなんですがそれもありませんでしたし夜は平穏無事といっても問題がないものだったでしょう。
とりあえず日課とも言える掃除を開始しようとモップとバケツを手にした私がロビーへと赴くと階段の上からまだ眠そうにしたご主人様の姿が見えました。
「リップス、相変わらず早いね」
「おはようございます、ご主人様」
ああ、今日も本当にお可愛いらしい。
そして私の美的感覚は間違いではなかった! ご主人様にはまだ大人っぽいパジャマではなくクマさん柄のパジャマが似合う!
永久保存したいほどの愛らしさであるほどです。
「リップス。今日の予定は?」
危うくメイドとしての本分を忘れてしまうところでした。
メイドとは主人をサポートするもの自分の我を通すものではありません。
…… あとでカメラを買いに行かなければ。ご主人様の表情の全てを記録するために!
今の欠伸を噛み殺しているご主人様の表情! 金塊に相当する価値ですから!
「本日のご予定は会食の申し込みが…… 二件、取引が一件となっておりますがどう致しますか?」
おっと危ない。
また自分の思考にとらわれてしまうところでした。
「んー、なんか嫌そうな顔しながら言ってきたね。会食の申し込みって誰と?」
「フランベルク様とナルタク様です」
「あー、あのデブとガリガリくんか〜 あいつら性格悪いし気持ち悪いからなぁ〜 キャンセルで」
「畏まりました」
あっさりと人となりでキャンセルを言い放つご主人様は素敵すぎます。
まあ、あの汚臭漂うデブと不衛生なのっぽ貴族に麗しのご主人様を近づけるというのは論外です。
もしご主人様に近づきたいのであれば漂白剤に三ヶ月は漬け込んで殺菌などをしてからでなければ私が許しません。
「それとご主人様宛に大層頭の悪いお手紙が三通きております。全て開封済みでトラップなどの危険はありません」
「ふーん」
どうでも良いと言わんばかりに私へと手を伸ばしてきたご主人様へと三通の手紙を手渡します。
再び欠伸を一つした我が主人は寝ぼけたような眼で手紙の文字を追っていき、読み終わるたびに手紙を床へと放り投げていきます。
「欲張りどもがおおいなぁ〜」
「どういった内容で?」
床へと捨てられていく手紙を拾いつつご主人様へと尋ねます。
「あれ読んでないの?」
「ご主人様宛の手紙ですよ? 罠を警戒するのはメイドの仕事ですが内容まで把握していませんので」
なにせ私では内容を理解することもできないでしょうし。
「簡単な話さ。この町の貴族様からの手紙さ」
「貴族から?」
「うん、要約すると命が惜しければうちに武器をよこせって事だよ」
あははと自分の命が狙われている事を教えてくれるご主人様。
相手が貴族というのは面倒です。
あいつらは無駄に横や縦の繋がりがありますからね。むかつくからプッチンしても今度は斜めから違う貴族が現れそうですし。
「まさかご主人様、泣き寝入りするんですか?」
「それこそまさかだよリップス。僕は商人だよ? タダでなんてありえないよ」
転んでもただは起きないよとご主人は笑います。
そうでした。我がご主人様は武器商人。
死を運ぶ商人にも関わらず振る舞いや態度から見られても「お前武器商人じゃねえだろ!」と街の人からも言われるほどに親しみやすい主です。
あれ? ご主人様侮られてる?
「ではどうするんです?」
「そうだね。まずはお手紙でも書くさ」
なるほど。まずは会話というわけですか。
さすがはご主人様、超平和的。
「その後に屋敷をぶっ飛ばそう」
おっと訂正。
めてゃくちゃ過激でした。しかし即決断の我がご主人様。素敵です。
「じゃ、リップス。これを二時間後に四キロ先のこの地点に放り投げてね」
パジャマ姿であるはずのご主人様がどこから取り出したのかわからないですが赤い丸が入ったこの街の地図、そして拳大の黒い物体を私へと手渡してきます。
「こちらは?」
「ミズノとカワノの合作の新兵器らしいよ。せっかくだし業突く張りな貴族様に差し上げようじゃないか」
とんでもなく物騒なものを渡されました。
ミズノとカワノ。
どちらもご主人が懇意にしているところですがいただけない。
もう危険な香りしかいたしません。
「この赤丸のところに放り投げてね。それとどんな風に見えたか教えるように」
再び欠伸を一つするとご主人様は話は終わったと言わんばかりに自室へ向けて歩いていくようです。
どうやら貴族宛に手紙を書くようですね。
魔導鳩を使えば何処へでも手紙を届けれるようになったというのは素晴らしく便利になったものです。
「二時間ですか」
ロビーにある時計を見上げて時間を確認したのちに私はバケツとモップを用いてリビングの掃除を開始したのでした。
あ、力加減間違えて床が削れてしまいました……
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