神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい
真なる敵
いつも薬草を採取する場所。すなわち帰らずの森入り口付近でマオとエルレンティは野営の準備をしていた。
太陽はまだ頭上高くにあるのだが、アンデットが活発に活動するのは夜、もしくは薄暗い場所であるため夜に備えて準備をしているのであった。
……あったのだが。
「なーんでこんなにモンスターが来るのでしょう?」
マオは鎖を振り回しながら首を傾げていた。
飛んで行った聖書はマオ達をエサだと思っているのか森からひたすらに襲ってくるモンスターへと突き刺さり迎撃していた。
仕方なしに準備を切り上げ、エルレンティと共に迎撃する羽目となったのだ。
「エルレンティ、早くまともに援護してください」
マオは鈍器で殴ることができるとはいえ、一応は神官、つまりは後衛である。
なにより鎖でくっついた聖書を筋力に物を言わせてぶん回しているだけなため、連続で攻撃をすることすら出来ない。
セリムがいたのであれば近づいてきた敵はそれなりにセリムが引き受けることになり、マオに向かってくる敵も減るため、マオとしてもさしたる苦労はないのだが。
「ヒィィィィィィィィ!」
悲鳴を上げて逃げ回るエルフを見てマオはため息をつき、帰りたくなった。
今回臨時とはいえパーティを組んだエルフ、エルレンティはポンコツだった。
逃げ回りながらも時折はエルフっぽく弓で攻撃をしかけているのだが、その弓矢が問題なのだが。
「くぅ!」
マオが咄嗟に鎖を手繰りながらも横へと飛ぶ。
そしてマオが先程までいた場所に幾本もの矢が立て続けに突き刺さった。
「なんなんですか! さっきからなんなんですか!」
「ヒィィィ! すいませんすいません!」
先程から何度も自分に向かってくる弓矢に遂にマオがキレた。
それに対してエルレンティは瞳に涙を浮かばせながら謝ってきた。
初めは偶然かと思った。しかし、それから何度も、何度も、まるで狙いが自分かと思うほどマオへと弓矢が飛んでくるのだ。
「今わかりました。貴方、絶対敵ですね!」
「エルフが人類に敵対するわけないじゃないですか! ダークエルフじゃあるまいし」
モンスターが迫って来ているに関わらず、マオはエルレンティを指差しながら怒りの声を上げる。対してエルレンティも心外と言わんばかりに声を荒げた。
エルフが森と人類の友達と言われているに対して、ダークエルフの方はと言うと人類の敵と表現されていることが多い。しかし、ダークエルフもエルフとは特に見分けがつかないような容姿をしているためエルフにとってダークエルフと間違われることはエルフにとっては最大限の侮辱なのだ。
「じゃ、なんでマオの方に矢が飛んでくるんですか!」
近くまで迫って来たゴブリンに対して怒りをぶつけるようにして聖書の取っ手部分を持ったマオが力任せに振り抜き、ゴブリンをただの肉片へと変え、周囲に血の雨を降らせた。
そしてモンスターの軍勢はというと先程までチマチマ攻撃して来ていたマオが一撃で、しかも近接で攻撃して来たことに驚き、足を止めた。
「私だって別にわざとやってるんじゃないんです!撃ったらなぜかマオさんの方に引き寄せられるかのように飛んでくんです!」
「なら今なら大丈夫でしょう! あいつら足止まってるんですから!」
驚き動きを止めているモンスターをマオは指差した。
そんなモンスターを見て先程まで泣いていたエルレンティであったがダークエルフと言われたことがよっぽど腹ただしかったのか頰を膨らましたまま弓矢をつがえた。
「今度こそ私の実力を見せてやります!」
大声で宣言したエルレンティが弓矢を放った…… ように見えた。
バシン!っという音がして響きエルレンティが呻きながら膝をついた。
「うう。痛ぃですぅ」
エルレンティが胸を押さえながら膝をついていた。
マオは今見たことを信じたくないかのようにいつも笑っている彼女にしては珍しく、全くの無表情でそれを凝視していた。
弓の蔓が当たったエルレンティの巨乳を。
太陽はまだ頭上高くにあるのだが、アンデットが活発に活動するのは夜、もしくは薄暗い場所であるため夜に備えて準備をしているのであった。
……あったのだが。
「なーんでこんなにモンスターが来るのでしょう?」
マオは鎖を振り回しながら首を傾げていた。
飛んで行った聖書はマオ達をエサだと思っているのか森からひたすらに襲ってくるモンスターへと突き刺さり迎撃していた。
仕方なしに準備を切り上げ、エルレンティと共に迎撃する羽目となったのだ。
「エルレンティ、早くまともに援護してください」
マオは鈍器で殴ることができるとはいえ、一応は神官、つまりは後衛である。
なにより鎖でくっついた聖書を筋力に物を言わせてぶん回しているだけなため、連続で攻撃をすることすら出来ない。
セリムがいたのであれば近づいてきた敵はそれなりにセリムが引き受けることになり、マオに向かってくる敵も減るため、マオとしてもさしたる苦労はないのだが。
「ヒィィィィィィィィ!」
悲鳴を上げて逃げ回るエルフを見てマオはため息をつき、帰りたくなった。
今回臨時とはいえパーティを組んだエルフ、エルレンティはポンコツだった。
逃げ回りながらも時折はエルフっぽく弓で攻撃をしかけているのだが、その弓矢が問題なのだが。
「くぅ!」
マオが咄嗟に鎖を手繰りながらも横へと飛ぶ。
そしてマオが先程までいた場所に幾本もの矢が立て続けに突き刺さった。
「なんなんですか! さっきからなんなんですか!」
「ヒィィィ! すいませんすいません!」
先程から何度も自分に向かってくる弓矢に遂にマオがキレた。
それに対してエルレンティは瞳に涙を浮かばせながら謝ってきた。
初めは偶然かと思った。しかし、それから何度も、何度も、まるで狙いが自分かと思うほどマオへと弓矢が飛んでくるのだ。
「今わかりました。貴方、絶対敵ですね!」
「エルフが人類に敵対するわけないじゃないですか! ダークエルフじゃあるまいし」
モンスターが迫って来ているに関わらず、マオはエルレンティを指差しながら怒りの声を上げる。対してエルレンティも心外と言わんばかりに声を荒げた。
エルフが森と人類の友達と言われているに対して、ダークエルフの方はと言うと人類の敵と表現されていることが多い。しかし、ダークエルフもエルフとは特に見分けがつかないような容姿をしているためエルフにとってダークエルフと間違われることはエルフにとっては最大限の侮辱なのだ。
「じゃ、なんでマオの方に矢が飛んでくるんですか!」
近くまで迫って来たゴブリンに対して怒りをぶつけるようにして聖書の取っ手部分を持ったマオが力任せに振り抜き、ゴブリンをただの肉片へと変え、周囲に血の雨を降らせた。
そしてモンスターの軍勢はというと先程までチマチマ攻撃して来ていたマオが一撃で、しかも近接で攻撃して来たことに驚き、足を止めた。
「私だって別にわざとやってるんじゃないんです!撃ったらなぜかマオさんの方に引き寄せられるかのように飛んでくんです!」
「なら今なら大丈夫でしょう! あいつら足止まってるんですから!」
驚き動きを止めているモンスターをマオは指差した。
そんなモンスターを見て先程まで泣いていたエルレンティであったがダークエルフと言われたことがよっぽど腹ただしかったのか頰を膨らましたまま弓矢をつがえた。
「今度こそ私の実力を見せてやります!」
大声で宣言したエルレンティが弓矢を放った…… ように見えた。
バシン!っという音がして響きエルレンティが呻きながら膝をついた。
「うう。痛ぃですぅ」
エルレンティが胸を押さえながら膝をついていた。
マオは今見たことを信じたくないかのようにいつも笑っている彼女にしては珍しく、全くの無表情でそれを凝視していた。
弓の蔓が当たったエルレンティの巨乳を。
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