神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい

るーるー

アンデットなら楽勝です

「マオの胸は小さくない…… むしろ普通」
「マオさん待ってくださいよ〜」


 ブツブツと呟き、不機嫌そうに平原を歩くマオの後ろをエルレンティが追う。


「一緒に依頼受けましょうよ〜」
「マオはもう受けています」


 すでに依頼を受けているマオはエルレンティに自分の受けた依頼が書かれている羊皮紙をひらひらと揺らす。


「じゃ、一緒に行きましょう?」


 嬉しそうにマオへと近づいたエルレンティはマオを背後から抱きしめる。
 すると当然エルレンティの胸がマオの頭の上に乗るわけで、ずっしりと頭の上に感じる重みでマオはかなり不機嫌になる訳なのだが。


「……もう勝手にすればいいんじゃないんですか?」


 すでに怒る気も無くなったのか諦めたかのようにマオはため息混じりに呟いた。


「それで何の依頼を受けたんですか? ぶへっ」
「これです」


 顔を近づけてきたエルレンティの顔にマオは依頼を書かれている羊皮紙を押しつける。


「ぷは、いきなり押しつけるなんてひどいです! なになに」


 抗議をしつつもエルレンティは羊皮紙を顔から離し、書かれている依頼内容へと眼を通し始めた。


「帰らずの森付近のアンデット退治ですか? でもこれって教会向けの依頼じゃないんですか?」
「そうですよ」


 冒険者ギルドでマオが受けたのはエルレンティが告げた通りアンデット退治である。
 アンデット退治は教会の神官に依頼されることが多い。
 しかし、冒険者にも依頼されることもある。ただし、それなりに戦闘能力があるという事が前提であるのだが。


「マオは神官ですし楽勝です」
「あ、神聖魔法でアンデットは退治できるんですよね」
「え……?」
「え……?」


 なぜかエルレンティの言葉にマオはびっくりしたような声を上げ、エルレンティの方を見る。そしてエルレンティの方も同じようにびっくりした声を上げる。


「えっと…… 神官だから神聖魔法で楽勝って事ですよね?」


 エルレンティは自分の言った事が間違えてるのかと思ったのかマオへと尋ねた。
 しかし、マオは首を傾げ、そのせいで頭から顔へと乗っかる場所が変わったエルレンティの巨乳を煩わしそうに払いのける。


「たしかに神聖魔法でもアンデットを退治することは可能です。ですが神聖魔法、特にアンデットを浄化する魔法というのは詠唱が必要なので手間がかかるのですよ」


 魔法使いが使う攻撃魔法や神官たちが頻繁に使う回復魔法などは長い年月を掛けて簡易化されており、今や魔法名を告げ、魔力を込めるだけで発動するまで進歩しているのだが、神聖魔法だけはなぜか簡易化の研究が上手くいかず詠唱が必要とされているのだ。
 無論、詠唱をしたほうが魔法の威力も上がるため、詠唱をする魔法使いや神官も多い。


「ですから」


 マオは軽く拳を宙へと何度か振るい不敵な笑みを浮かべる。


「アンデットは物理で身動きが取れないくらいに粉々に砕いてしまって現世で何もできないと認めさせて浄化するのです」
「それ、神官がやらなきゃいけない事ですかね? というか神官がやる行動じゃありませんよね?」


 今頃になって最近、狂神官とか呼ばれている神官はマオのことであることを認識したエルレンティであった。

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