神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい
二つ名はいつの間に定着する
「今回の依頼でようやくまともな武器が買えるぜ」
体のあちこちに擦り傷のようなものを作り、血塗れのフライパンを腰から下げたセリムがウンザリといった様子で首を振りながらギルドへの道を歩く。
「マオ的にはお金を一切貯蓄していないセリムにびっくりしてますよ。人生設計って言葉ご存知ですか?」
そのセリムの横を歩くのは白と青を基調とした神官服を着込んだマオである。
彼女の神官服はほぼ汚れておらず、汚れているのは神官服の足元、裾の部分だけであった。
「冒険者ってのはいつ死ぬかわからないような職業だからな。金貯めても使う前に死にそうだし」
「死ぬ際は残りの財産全部マオにくださいね。死んだらお金なんて使えないでしょ?」
「がめついんだよお前……」
マオの瞳がキラキラとし出したことにセリムは呆れたようにため息を吐き出す。
ちなみにマオが好きなのは信仰とお金である。暇な時はお金を数えるのが趣味であったりするのだ。
セリムとマオがパーティを組み始めて一週間が経ち、セリムもマオの両名はなんとなくだが互いの性格がわかるようになっていた。
「信仰と同じでお金はいくらあっても困るものではありません。まあ、信仰と違いお金は嵩張りますが」
「お金が欲しいならお前も俺と一緒に討伐系の依頼を受けたらいいだろが」
セリムが討伐系の依頼をこなしてお金を貯めている間、マオはというと実入りの少ない薬草集めの依頼ばかりを受けていたのだ。
「無意味な殺生は女神様の教えに反しますよ?」
「お前、女神様の教えと前につければなんでも正当化されると思ってないか?」
「争いは何も産みません」
「酒場で絡んできただけの酔っ払いを半殺しにした奴の台詞とは思えないな」
たわい無い話をしながら二人は冒険者ギルドの扉を開く。マオが扉を開くとそこには一週間で馴染んだ喧騒があった。
しかし、その喧噪はセリムとマオの二人が中に入ってきたことで若干の収まりを見せる。
そして少しばかりの静まりを見せた後に今度はヒソヒソとした声が増えるのだ。
「あれが?」
「ああ、フライパンのセリムだ」
「てことはあの隣のちっこいのが?」
「あっちが狂神官マオだ」
「意外と可愛いな。俺声かけてこようかな」
「やめとけ! 死ぬぞ⁉︎」
一週間の間に二人は有名になっていた。
セリムは武器が二振りの魔剣からフライパンに変わったことで。
そしてマオは人も殴らないであろうにこやかな笑顔を浮かべたまま、鈍器を使い大の大人ですら涙を流し、体を震わせるほどな反撃を繰り出すという狂神官として。
ある者は畏怖の視線を、そしてある者は尊敬の眼差しをマオへと向けていた。
依頼達成の報告を行うべく酒を飲みかう冒険者達のテーブルを避けながらギルドカウンターへと向かっていくマオとセリムの前に上半身裸の男が睨みを効かせながら立ちはだかった。
「おう、そこの神官!」
「? マオの事でしょうか?」
見るからに絡みにきている冒険者に神官と呼ばれたためマオは素直に立ち止まり、男を見上げる。
そんな二人の様子を見てセリムはため息を一つ付き、手を上げる。
「マオ、俺は依頼の達成報告してくるからな」
「はい、どうぞ」
「…… 殺すなよ?」
「マオは女神プレンティに使える神官ですよ? 無益な殺しはしません!」
「はいはい」
明らかに絡まれているはずであるマオだったのだがセリムは一切心配した様子など見せずに手をひらひらと振りながらマオを置いてカウンターへと歩いて行った。
「で、マオになんの御用でしょうか? お祈りですか? でしたら千コニー必要ですが?」
どう見てもお祈りをするような輩には見えないのだがそんな事は関係ないとマオは笑顔で尋ねる。
「お祈りだぁ? ちげえよ。俺はお礼を言いにきたんだよ」
「お礼ですか?」
厳つい顔をした男が指を鳴らしながら近づいてきているのだが心当たりがないマオは首を傾げ、不思議そうな表情を浮かべるのであった。
体のあちこちに擦り傷のようなものを作り、血塗れのフライパンを腰から下げたセリムがウンザリといった様子で首を振りながらギルドへの道を歩く。
「マオ的にはお金を一切貯蓄していないセリムにびっくりしてますよ。人生設計って言葉ご存知ですか?」
そのセリムの横を歩くのは白と青を基調とした神官服を着込んだマオである。
彼女の神官服はほぼ汚れておらず、汚れているのは神官服の足元、裾の部分だけであった。
「冒険者ってのはいつ死ぬかわからないような職業だからな。金貯めても使う前に死にそうだし」
「死ぬ際は残りの財産全部マオにくださいね。死んだらお金なんて使えないでしょ?」
「がめついんだよお前……」
マオの瞳がキラキラとし出したことにセリムは呆れたようにため息を吐き出す。
ちなみにマオが好きなのは信仰とお金である。暇な時はお金を数えるのが趣味であったりするのだ。
セリムとマオがパーティを組み始めて一週間が経ち、セリムもマオの両名はなんとなくだが互いの性格がわかるようになっていた。
「信仰と同じでお金はいくらあっても困るものではありません。まあ、信仰と違いお金は嵩張りますが」
「お金が欲しいならお前も俺と一緒に討伐系の依頼を受けたらいいだろが」
セリムが討伐系の依頼をこなしてお金を貯めている間、マオはというと実入りの少ない薬草集めの依頼ばかりを受けていたのだ。
「無意味な殺生は女神様の教えに反しますよ?」
「お前、女神様の教えと前につければなんでも正当化されると思ってないか?」
「争いは何も産みません」
「酒場で絡んできただけの酔っ払いを半殺しにした奴の台詞とは思えないな」
たわい無い話をしながら二人は冒険者ギルドの扉を開く。マオが扉を開くとそこには一週間で馴染んだ喧騒があった。
しかし、その喧噪はセリムとマオの二人が中に入ってきたことで若干の収まりを見せる。
そして少しばかりの静まりを見せた後に今度はヒソヒソとした声が増えるのだ。
「あれが?」
「ああ、フライパンのセリムだ」
「てことはあの隣のちっこいのが?」
「あっちが狂神官マオだ」
「意外と可愛いな。俺声かけてこようかな」
「やめとけ! 死ぬぞ⁉︎」
一週間の間に二人は有名になっていた。
セリムは武器が二振りの魔剣からフライパンに変わったことで。
そしてマオは人も殴らないであろうにこやかな笑顔を浮かべたまま、鈍器を使い大の大人ですら涙を流し、体を震わせるほどな反撃を繰り出すという狂神官として。
ある者は畏怖の視線を、そしてある者は尊敬の眼差しをマオへと向けていた。
依頼達成の報告を行うべく酒を飲みかう冒険者達のテーブルを避けながらギルドカウンターへと向かっていくマオとセリムの前に上半身裸の男が睨みを効かせながら立ちはだかった。
「おう、そこの神官!」
「? マオの事でしょうか?」
見るからに絡みにきている冒険者に神官と呼ばれたためマオは素直に立ち止まり、男を見上げる。
そんな二人の様子を見てセリムはため息を一つ付き、手を上げる。
「マオ、俺は依頼の達成報告してくるからな」
「はい、どうぞ」
「…… 殺すなよ?」
「マオは女神プレンティに使える神官ですよ? 無益な殺しはしません!」
「はいはい」
明らかに絡まれているはずであるマオだったのだがセリムは一切心配した様子など見せずに手をひらひらと振りながらマオを置いてカウンターへと歩いて行った。
「で、マオになんの御用でしょうか? お祈りですか? でしたら千コニー必要ですが?」
どう見てもお祈りをするような輩には見えないのだがそんな事は関係ないとマオは笑顔で尋ねる。
「お祈りだぁ? ちげえよ。俺はお礼を言いにきたんだよ」
「お礼ですか?」
厳つい顔をした男が指を鳴らしながら近づいてきているのだが心当たりがないマオは首を傾げ、不思議そうな表情を浮かべるのであった。
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