神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい
それは武器?
マオがぶん投げた物が風を切り裂くような音を響かせながら飛ぶ。
それもセリムに向かって。
投げられた物はマオとセリムの前に立ちはだかり、セリム包囲網を作り上げていたスライムさえ存在しないかのようにあっさりとぶった切り水溜りを作り上げながらも突き進み、
「うぉぉぉぉ⁉︎」
奇声を上げ、必死の形相を浮かべて横に飛んだセリムの頭を掠めて大木へとぶつかり音を立てて転がった。
「お前は俺を殺す気か⁉︎」
音を立てて起き上がったセリムは目を見開いてマオへと文句をぶつけてきた。
かなりの隙であったが、スライム達もなにが起こったかわからないまま仲間が死んだことに混乱しているのかセリムへと襲いかかることはなかった。
「冗談を言わないでください。武器がないというから武器を投げて渡して差し上げただけです」
「明らかに殺すって意思が乗ってるくらいの速さだったぞ⁉︎」
「途中でスライムに取られては意味がないと思いましたので、不肖このマオは全力で投げさしていただきました」
「お、おぅ」
言い返せなかったのかセリムは口籠った。
そんなセリムを見てマオは非常に満足そうに頷くと再び足元にある横倒しになっている木へと腰掛けた。
「さ、どうぞ。戦ってくださいませ」
「助ける気なしかよ!」
マオが参戦する気がないのがスライムにも伝わったのか、やっぱりというかスライムたちは一斉にセリムへと再び襲いかかった。
叫びながらもセリムはスライムたちの攻撃を躱し、大木にかなりの勢いで当たったはずなのに原型を留めている武器の元へと転がりながら辿り着いた。
「よし、まともな武器さえあれば俺が負けるわけがない!」
一応武器扱いではあった果物ナイフを持っていた時に惨敗していることなどすでに忘れたのかセリムは確認することなく武器を拾い上げると構え、不敵に笑う。
「この武器で貴様らなんていち…… こ…… ろ……」
威勢がよかったセリムの台詞は徐々に小さくなっていき、最後には完全に聞こえなくなった。
そしてそれに比例するかのようにセリムの体が小刻みに震え始めた。
「なんだこのフライパンはぁぁぁぁぁ!」
大声で叫び、セリムは持っていた武器、フライパンを力一杯地面に叩きつけた。が、地面に叩きつけたはずのフライパンは地面に当たるとまるで意志を持ち、反撃するかのようにセリムの顔に向かって跳ね上がり、セリムの頰をフライパンの腹で叩いた。
「うぅぅぃぅ、痛ぇぇぇ…… なんで渡してくる武器がフライパンなんだよぉ!」
すでに腫れ始めている頰を抑え、涙を流しながらセリムはマオをにらむ。
「なにを言ってるんですか? マオがただのフライパンを武器として渡すわけないでしょう」
「そ、それはつまりこのフライパンに何かしらの力が秘められてるのか⁉︎」
セリムが期待するように瞳を輝かせる。
そんなセリムの瞳をマオは真っ直ぐに受け止め小さく頷く。
「それは神殿にふらりと現れて一ヶ月ほど料理を作ってくれたコックファファフィんからの贈り物、通称『ファファフィのフライパン』です!」
「やっぱりただのフライパンじゃねえかよ!」
セリムの期待を物の見事に裏切るマオであった。
それもセリムに向かって。
投げられた物はマオとセリムの前に立ちはだかり、セリム包囲網を作り上げていたスライムさえ存在しないかのようにあっさりとぶった切り水溜りを作り上げながらも突き進み、
「うぉぉぉぉ⁉︎」
奇声を上げ、必死の形相を浮かべて横に飛んだセリムの頭を掠めて大木へとぶつかり音を立てて転がった。
「お前は俺を殺す気か⁉︎」
音を立てて起き上がったセリムは目を見開いてマオへと文句をぶつけてきた。
かなりの隙であったが、スライム達もなにが起こったかわからないまま仲間が死んだことに混乱しているのかセリムへと襲いかかることはなかった。
「冗談を言わないでください。武器がないというから武器を投げて渡して差し上げただけです」
「明らかに殺すって意思が乗ってるくらいの速さだったぞ⁉︎」
「途中でスライムに取られては意味がないと思いましたので、不肖このマオは全力で投げさしていただきました」
「お、おぅ」
言い返せなかったのかセリムは口籠った。
そんなセリムを見てマオは非常に満足そうに頷くと再び足元にある横倒しになっている木へと腰掛けた。
「さ、どうぞ。戦ってくださいませ」
「助ける気なしかよ!」
マオが参戦する気がないのがスライムにも伝わったのか、やっぱりというかスライムたちは一斉にセリムへと再び襲いかかった。
叫びながらもセリムはスライムたちの攻撃を躱し、大木にかなりの勢いで当たったはずなのに原型を留めている武器の元へと転がりながら辿り着いた。
「よし、まともな武器さえあれば俺が負けるわけがない!」
一応武器扱いではあった果物ナイフを持っていた時に惨敗していることなどすでに忘れたのかセリムは確認することなく武器を拾い上げると構え、不敵に笑う。
「この武器で貴様らなんていち…… こ…… ろ……」
威勢がよかったセリムの台詞は徐々に小さくなっていき、最後には完全に聞こえなくなった。
そしてそれに比例するかのようにセリムの体が小刻みに震え始めた。
「なんだこのフライパンはぁぁぁぁぁ!」
大声で叫び、セリムは持っていた武器、フライパンを力一杯地面に叩きつけた。が、地面に叩きつけたはずのフライパンは地面に当たるとまるで意志を持ち、反撃するかのようにセリムの顔に向かって跳ね上がり、セリムの頰をフライパンの腹で叩いた。
「うぅぅぃぅ、痛ぇぇぇ…… なんで渡してくる武器がフライパンなんだよぉ!」
すでに腫れ始めている頰を抑え、涙を流しながらセリムはマオをにらむ。
「なにを言ってるんですか? マオがただのフライパンを武器として渡すわけないでしょう」
「そ、それはつまりこのフライパンに何かしらの力が秘められてるのか⁉︎」
セリムが期待するように瞳を輝かせる。
そんなセリムの瞳をマオは真っ直ぐに受け止め小さく頷く。
「それは神殿にふらりと現れて一ヶ月ほど料理を作ってくれたコックファファフィんからの贈り物、通称『ファファフィのフライパン』です!」
「やっぱりただのフライパンじゃねえかよ!」
セリムの期待を物の見事に裏切るマオであった。
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