神官マオは鈍器で女神の教えを広げたい
マオは人が多分…… 好き
初心の街オフタク。
北にはプレンティ神殿のある山、西にはまだ踏破されていない深い森、南には先が見えないほどの広大な海、東に行けば王都があるという街である。
この世界では「冒険をするならオフタクかドンソンから」と皆に言われるような街であり、冒険初心者が中堅あたりになるまではお世話になる街の一つであった。
「街です! 一ヶ月ぶりの街ですよ! 野盗の皆さん!」
「ソウデスネ」
街が見えてきた事に興奮気味なマオとは対照的に野盗四人組の表情は暗い。
彼らは小さな村を襲った後にマオに暴力…… 神の愛を受けた人達である。捕まらなければ何とでも言い訳は出来たであろうが今は首と手を繋ぐようにして鎖で縛られているため逃げるに逃げれない状態なのだ。
そして村を襲った盗賊というのはこの世界では即死刑である。
襲ったんだから殺されても文句ないよね? というのが一般的な考え方で正当防衛も大いに喜ばれるような世界だからだ。
その考えから言えばマオがやったように顔面がちょっと見れないように変形させたり、体の中身が色々ぐちゃぐちゃになってはいるものの殺されていないというだけで幸運とも言えるだろう。
仮に連れていかれた先で死刑が待っているとしてもだ。
「何故そんなに残念そうな顔をしているのですか? 街ですよ? 人ですよ?」
「いや、俺にはなんで街に来ただけでそんなに興奮しているのかがわからないんだが……」
かなり汚れてはいるが着ている服から神官であるという事は男も襲った時から気づいてはいた。
そして男の知るプレンティの神官は月に四度程街に降りてきては希望する住人を集めてのお祈りや聖書の朗読などをしている。
そのため街に来るのが初めてではないはずなのだ。
「神殿出てから一ヶ月も森の中で一人だったんですよ! 一人!」
『え……』
鎖で繋がれた野盗達は思わず絶句した。
神殿から出てきた神官であることはなんとなく察してはいたがまさか一ヶ月も彷徨っていたとは考えもつかなかったのである。
「し、神殿ってプレンティ神殿ですよね? その神殿を出てから一ヶ月も彷徨ってたんですか?」
「そうですよ? 全く街への案内板でも付けてほしいものです」
プンプンという音がしそうな怒り方をしているマオであるが野盗達は顔面蒼白であった。
(み、未踏破である帰らずの森の中で一ヶ月も生活してただとぉ⁉︎)
マオは自分が迷っていたのはプレンティ神殿のある山だったと思っているのだが現実は違う。
マオはプレンティ神殿の山で迷っている内に西にあるまだ誰も最奥に到達したことがない未踏破の森の中へと迷い込んでいたのであった。
未踏破の森の通称は帰らずの森。
冒険を始めたばかりの初心者が間違って入り込むとまず帰ってこれないと言われるような森なのだ。
森の中には凶悪なモンスターや生き物を喰らう植物なども生息しておりベテランでも攻略が遅々として進んでいないのが現状なのだ。
盗賊達がそんな森にいたのはプレンティ神殿の森にある隠れ家へと帰るための近道として使用したからに過ぎない。逃げるだけならなんとでもなるからだ。
もっともマオからは逃げられはしなかったのだが。
「ああ、街! 人がゴミのように蠢く街!」
「あ、姉さんは人間がお嫌いで?」
恐る恐ると言った様子で好奇心に負けたオトコがマオへと尋ねる。
するとマオは「こいつナニ言ってるの?」と言わんばかりに顔をしかめて見つめ返してきた。
「ん? どこをどう聞いたらマオが人間嫌いに聞こえるんですか?」
「いや、だってゴミみたいにって…… いえ、何でもないです!」
マオの手が自然と鎖で肩から下げてある聖書の取っ手へと向かうのを見て男は慌てて両手を振りながら否定する。
「変な人ですね? さ、街に行きますよ!」
片手で手にした鎖を引っ張り、マオは街へと向かい歩き出した。当然、鎖で腕を縛られている盗賊四人も歩かざるを得ないわけで。
彼らは行きたくもない死刑執行が待つ街へと向けてマオの上機嫌な様子で辛うじて鼻歌と聞き取れるものを行進曲として聴きながら進むしかないのであった。
北にはプレンティ神殿のある山、西にはまだ踏破されていない深い森、南には先が見えないほどの広大な海、東に行けば王都があるという街である。
この世界では「冒険をするならオフタクかドンソンから」と皆に言われるような街であり、冒険初心者が中堅あたりになるまではお世話になる街の一つであった。
「街です! 一ヶ月ぶりの街ですよ! 野盗の皆さん!」
「ソウデスネ」
街が見えてきた事に興奮気味なマオとは対照的に野盗四人組の表情は暗い。
彼らは小さな村を襲った後にマオに暴力…… 神の愛を受けた人達である。捕まらなければ何とでも言い訳は出来たであろうが今は首と手を繋ぐようにして鎖で縛られているため逃げるに逃げれない状態なのだ。
そして村を襲った盗賊というのはこの世界では即死刑である。
襲ったんだから殺されても文句ないよね? というのが一般的な考え方で正当防衛も大いに喜ばれるような世界だからだ。
その考えから言えばマオがやったように顔面がちょっと見れないように変形させたり、体の中身が色々ぐちゃぐちゃになってはいるものの殺されていないというだけで幸運とも言えるだろう。
仮に連れていかれた先で死刑が待っているとしてもだ。
「何故そんなに残念そうな顔をしているのですか? 街ですよ? 人ですよ?」
「いや、俺にはなんで街に来ただけでそんなに興奮しているのかがわからないんだが……」
かなり汚れてはいるが着ている服から神官であるという事は男も襲った時から気づいてはいた。
そして男の知るプレンティの神官は月に四度程街に降りてきては希望する住人を集めてのお祈りや聖書の朗読などをしている。
そのため街に来るのが初めてではないはずなのだ。
「神殿出てから一ヶ月も森の中で一人だったんですよ! 一人!」
『え……』
鎖で繋がれた野盗達は思わず絶句した。
神殿から出てきた神官であることはなんとなく察してはいたがまさか一ヶ月も彷徨っていたとは考えもつかなかったのである。
「し、神殿ってプレンティ神殿ですよね? その神殿を出てから一ヶ月も彷徨ってたんですか?」
「そうですよ? 全く街への案内板でも付けてほしいものです」
プンプンという音がしそうな怒り方をしているマオであるが野盗達は顔面蒼白であった。
(み、未踏破である帰らずの森の中で一ヶ月も生活してただとぉ⁉︎)
マオは自分が迷っていたのはプレンティ神殿のある山だったと思っているのだが現実は違う。
マオはプレンティ神殿の山で迷っている内に西にあるまだ誰も最奥に到達したことがない未踏破の森の中へと迷い込んでいたのであった。
未踏破の森の通称は帰らずの森。
冒険を始めたばかりの初心者が間違って入り込むとまず帰ってこれないと言われるような森なのだ。
森の中には凶悪なモンスターや生き物を喰らう植物なども生息しておりベテランでも攻略が遅々として進んでいないのが現状なのだ。
盗賊達がそんな森にいたのはプレンティ神殿の森にある隠れ家へと帰るための近道として使用したからに過ぎない。逃げるだけならなんとでもなるからだ。
もっともマオからは逃げられはしなかったのだが。
「ああ、街! 人がゴミのように蠢く街!」
「あ、姉さんは人間がお嫌いで?」
恐る恐ると言った様子で好奇心に負けたオトコがマオへと尋ねる。
するとマオは「こいつナニ言ってるの?」と言わんばかりに顔をしかめて見つめ返してきた。
「ん? どこをどう聞いたらマオが人間嫌いに聞こえるんですか?」
「いや、だってゴミみたいにって…… いえ、何でもないです!」
マオの手が自然と鎖で肩から下げてある聖書の取っ手へと向かうのを見て男は慌てて両手を振りながら否定する。
「変な人ですね? さ、街に行きますよ!」
片手で手にした鎖を引っ張り、マオは街へと向かい歩き出した。当然、鎖で腕を縛られている盗賊四人も歩かざるを得ないわけで。
彼らは行きたくもない死刑執行が待つ街へと向けてマオの上機嫌な様子で辛うじて鼻歌と聞き取れるものを行進曲として聴きながら進むしかないのであった。
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