Angel fall

流水 山葵(るすい わさび)

1話

カラオケからの帰り道。
楸十葵(ひさぎ とき)、椿翔太(つばき しょうた)、榎弘佑(えのき こうすけ)の三人は、ハイテンションで道を歩いていた。
「いやー、新曲入っててよかったな」
「めっちゃ盛り上がったやんな」
「また来ような」
ぺちゃくちゃとよそ見をして歩いていると。
信号の赤に気づかず、横断歩道に足を踏み出してしまう。
「ちょっと、危ないよ!」
急に声をかけられ驚く十葵。
目の前を急速に車が走り抜ける。
「あっぶなかった……」
「だから言ったでしょ。危ないって」
隣で信号待ちをしていた少女が笑顔でこちらを見ている。
よく見れば、スタイルもよく健康的で、ショートパンツと中々セクシーな格好をしている。
「あ、す、すみません……ありがとう」
照れたように笑う十葵に、少女は軽く微笑むとスマホに視線を戻す。
「ちょっと……いや、かなり可愛いな」
「おいおい、轢かれかけてその感想かよ」
弘佑が「おいおい」とツッコミを入れる。
「信号赤やったん。全然気つかんかったな」
翔太も驚いたように信号を見ている。
「前方不注意事故の元、か。気をつけよう」
そして、青になるのを待つ三人。
が、次の瞬間。
遠くで甲高い声が響いたと思うと、コンクリートがまるで紙吹雪のように宙を舞う。
十葵達のところにまで謎の突風が吹いてくる。
「なんや、この風!」
翔太達が叫び声がした方へ視線を移動させると。
「なんだ……あれ」
機械で出来たような巨人の化物が道路に立ち塞がっていた。
手には大きな機械の斧のようなものを握りしめている。
吹き飛ばされる地面。
楽しい日曜日の街中は一気に地獄と化していた。
「に、にげな……!」
翔太が呟く。
が、腰が抜けて立ち上がれない。
「弘佑……行けるか?」
「あぁ、行ける!」
巨人の雄叫びとともに、翔太に肩を貸して、走り出す十葵と弘佑。
翔太も不安定ながらなんとか走っている。
走り出す瞬間。逃げる方とは逆、巨人の方向へと向かう少女の姿が見えた気がしたが、気のせいだろう。
「とにかく逃げるぞ!」
「つっても、どこに!?」
「どっか、隠れへん!?」
「ダメだ!あんな化物、建物くらい簡単に破壊する!とにかく離れるぞ!」
十葵達が必死で逃げる中、後方で化物の唸りが聞こえる。
同時に大きな地響きが起き、転んでしまう十葵達。
気づくと化物が自分達のすぐ真横で倒れていた。
「し、死んでるん?」
翔太が震える声で聞いてくる。
「わかんねぇ。とにかくここから離れ」
弘佑が呟いた瞬間、地面に影ができる。
それが化物が起き上がった影だと知ったのは、自分たちのすぐ真横に斧が飛んできてからだった。

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