転生。異世界。国造り。

ノベルバユーザー338048

一話

9月27日記念すべきこの日。

僕の誕生日。

そんな日の前日。

9月26日。

真面目に生きていた僕に悲劇が舞い降りた。










僕は、都会に何千、何万といるしがないサラリーマンだ。

彼女はいないが、給料はそこそこ。

1日1日を楽しく過ごしていた。

そんなある日ーー誕生日の前日ーー仕事を終え、帰りの電車に乗ろうとしていた時

『はロー?』

英語にも、日本語にもなりきれていない粗雑な挨拶が聞こえた。なかなかに年老いた声だった。

もう時刻は10時を過ぎているので『ハロー』ですら、ないのだが......

そんな挨拶には多少驚いたものの、ここは首都。

何百万人もの人がいれば、一人や二人、ヤバい奴がいても不思議ではない。

そこまで気にせず、スマホの画面に目を落とす。だが、何度も何度も繰り返し繰り返し呼び掛けるその声に鬱陶しさを感じ、音の出所を探る。

しかし、周りも皆、スマホの画面を凝視している。

何も聞こえていないが如く。

あれ?  皆はこんな声が聞こえ続けていても大丈夫なのか?

そんなことを考えている間にも問い掛けが聞こえ続ける。

その騒音に耐えきれず、つい呟いてしまった。

「うるさい」

周りの人たちには、絶対に聞こえていないはずだ。

一人言よりもか細い声だった。

それなのに

『おお、やっと気づいてくれたか』

声が返ってきた。

今まで機械的に挨拶を繰り返していただけの謎の声が、僕の一人言を聞いて言葉を変えた。

ただ同じ言葉を繰り返していただけから、確実に意志疎通の可能性を感じさせる言葉に変わった。

戦慄する。

謎の声は、僕との会話を望んでいた。

その事を考えただけで。

『今から、転生してもらっても良いかのう? 頼みたいことがあるのじゃが』

転生?  頼みたいこと?  こいつはいったい何者なんだ?

転生って言ったら、俺は死ぬのか?

でも、どうやって?

『まあ、色々と聞きたいこともあるじゃろう。それは、こっちに来たときに答えてやろう』

何言ってんだ? 

理解が追いつかない。
 
すると、電車の到来を告げるアナウンスが入った。

その時、風が吹いた。

強風。

ではなく。

突風。

しかも一点に集中しているように感じる。

僕のすぐ後ろに。

ヤバい!!

そう思った時には、時既に遅し。

背中で膨れ上がった風に後ろから強く押される。

風が実体を持っているかのように、質量を感じる。

僕は、電車がすぐそこまで迫っている線路の上にその体を投げ出される。

ああ、死んだ。

僕は最後にそう思った。                                                

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