フェイトトリップ ~才能の統べる世界~
第18話 魔法使いになりたくて
みなさんこんにちは、サニィです。
ゆきってなんでもできるのかな?まほーもうんどーもピアノもなんでもわたしよりじょーずです!
いーなー、わたしもあんなならいいのに。
2018年  3月28日  水曜日  朝
朝食を食べ終えて間もない頃、サニィは雪を食堂に置いて部屋に戻った。
「うんしょ、と」
サニィが抱えていたのは、誕生日の日にレオナから貰った魔導書だった。あれから毎日読み込んでいたらしく、ページを捲った後がいくつも残っている。
そんな魔導書を手にして、サニィは食堂まで急いだ。
「あ、」
食堂の扉は、引き戸だ。手で引かねば開くことは出来ない。だがサニィは、分厚い魔導書を両手で抱えていた。
(じめんはやだなー、、)
毎日毎日読む度に本棚にきちんと直して大切にしてきた魔導書を、サニィは地面に置きたくないようだ。
(どーしよー、、)
サニィが食堂の扉を見上げて呆然と突っ立っていると、背後から何者かが近づいてきた。
?「こんなとこで何突っ立ってるんだい?」
振り返ったサニィは、そのインパクトに少しびっくりした。
「だ、だれ、ですか、!?」
赤い針のような髪を後頭部で一束に纏めたその女性は、まるで荒れ狂う大河のような異形の真っ赤なローブを纏い、巨大な蝙蝠を彷彿とさせる赤黒い羽を生やし、ただでさえ大きな女性の背丈を更に上回るほど巨大な鎌を肩に掛けていた。
「あたし?あたしは八津河 美椿。ちょっと上司に連れられてこの城にやって来たのだよ。それは良いとして、何か困り事かい?」
初対面の頃のレーニャのように突っかかってくるかと思いきや、案外優しい印象を受けたサニィ。美椿への好感度は悪くない。
「あ、はい、えっと、ここのドアあけてください!おねがいします!」
そう言ってサニィはぺこりと頭を下げた。
「うん、いいよ。」
美椿はそう言うと、食堂の扉を押した。
バキッ
「あ、」
…扉が開いた。引き戸が、押して開いた。
「ありがとーございます!えー、っと…みはら…さん?」
「あっはは、“みはる”だよ。礼はいいからさっさと行くといいさ。」
「あ、はい、わざわざありがとーございます!それでは!」
サニィは深々と頭を下げ、食堂の中へ入っていった。
(…ま、いっか。ばれないばれない…)
美椿は壊れた扉をそっと壁に立て掛けた。
「何をしているのですか美椿。」
(はひゃぁぁぁ!?)
美椿が恐る恐る振りむくとそこには、怒り顔の理子がいた。
「私が少し目を離した隙に、何てことをしているのですか!兎も角此方へ来なさい!」
「いやいや違うんですよ、何も閻魔様の話を聞くのが嫌とかそんなでは、、」
「貴方を咎めるのはまた次の機会にしますから、今は話を聞いて下さい!」
理子はそう言うと美椿の服の襟を掴み、そのままズリズリと引っ張って行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ゆきおまたせー!」
「おかえりサニィ。どこ行ってたの?」
「これー。」
サニィは手に持っていた魔導書を雪に見せた。
「あー、魔導書取りに行ってたのか!」
「うん!」
サニィは喜色満面の笑顔で頷くと、魔導書を背伸びしながら机の上に置き、雪の隣の椅子に座った。
「えっと…」
一ページずつ魔導書を捲るサニィ。
「これおしえて!」
サニィが指差したのは、氷魔法のページだった。
「えーっと…教えてって…どんなことを?」
「ぜんぶー!」
楽しそうな笑顔でそう言うサニィに、雪は少々肩を落としつつも、喜んで要望に応えた。
そういえばまだ魔導書に書いてある内容を詳しく説明していなかったので、この場を借りて説明しようと思う。
魔導書とは、言わば魔法に関する図鑑のような物であり、多くの魔導書は一ページ一魔法という表記が定番である。ページの左上四分の一に魔法陣の図が描かれ、その右には上から順に「名称」「制御難度」「消費魔力」の三項目が書かれている。「消費魔力」に関しては、魔法を使用する者の実力に応じて変化するため、魔法力が100の者が全力を賭けて使用したと仮定した際の値が印されている。魔法の中には詠唱が必要な物もあるが、詠唱は上記の三項目の下、且つ魔法陣の図の右に書かれることになる。これでページの上半分は埋まる。下半分には上半分に書いたことも含め、対象となる魔法の詳細が記されている。例えば、攻撃魔法の場合は魔法の描く軌道、補助魔法の場合は魔法の効果が、事細かに記されている。
それぞれの魔法の癖を見抜き、学ぶことで、戦術的な活用の幅が広がるため、魔法使いは誰しもが魔導書を読んで勉強するものだ。サニィも、魔法使いになりたくて、勉強するのだ。
「んー…そーだなー…」
(ていうかこの魔導書…漢字多いな…)
雪はサニィの期待に応えるために、暫く必死で考えた後、口を開いた。
「よし、じゃあまずは氷魔法がどんな魔法か、から教えよう!サニィはどんな魔法かわかる?」
「??」
サニィは首を傾げた。
「んー、、と、ほら、燃えるーとか、光るーとか!」
「あ、はい!」
サニィは何か思い出したのか、意気揚々と挙手をした。
「お!なになに?」
「こーる!」
「そう!凍るね!正解!」
「やったー!」
サニィと雪を見ていると、幼稚園児と先生のマンツーマンの授業を見ているような気分になってくる。
「例えば、えーっと…」
雪はキョロキョロと周りを見渡した。何かを探しているのだろうか。
「あ、あそこにルカさんがいるでしょ?」
「うん。」
「ここで氷魔法を唱えると、」
雪はサニィが側で見守る中、食後に食堂の椅子で寝ているルカに向けて、手を翳した。雪の掌に、水色の小さめの魔法陣が展開される。
「氷魔法!」
淡く光った魔法陣から青白い球体が飛び出し、光の尾を帯びながらルカに命中した。直後、ルカを氷塊が包み込んだ。
「おお~…!」
手をパチパチしながら感嘆するサニィ。
「こんなふうになるね!」
雪は自慢げな顔でサニィを見た。
「どうやってるの?」
「え?」
「どうやってまほーだしてるの?」
目を輝かせて雪にそう訪ねるサニィ。
「どうやって…?」
「わたしもそれやってみたい!」
「んー、、」
雪は困った。サニィが好奇心を持っているのは別に良い。ただ、天才型の雪は、今まで魔法の唱え方など考えたことも無かったため、どう教えるべきか、悩んだ。
「えっと…なんか…身体中にある何かを…その…手の周りに集めて…それをちょっと…何か…ほら…ぐぐぐーってして…たら…そのうち…出てくる…?」
教え方など、浮かばなかった。
「?わかんない。」
訝しげな顔をして首を傾げるサニィに、お手上げ状態の雪。
「…私もわかんないや…他の皆に聞いてみて?」
雪は机に倒れ込みながら弱気な声でそう言った。
「わかった!みんなにきーてくるね!それでゆきにもおしえてあげる!」
サニィは食堂を後にした。そして手当たり次第に、雪にした質問と同じ質問をした。
まずは(いつの間にか氷塊を破ってた)ルカの場合。
「んー…ファーってしてシュルルーってしてグググーってしてスポン!だよ!」
次にアトの場合。
「魔法なー…なんだ?…全身に流れてる水みたいのを手の周りに集める感じだな。」
次にスカンの場合。
「えーっと…手のひらから何か出す感じかなぁ…」
次にトカゲンの場合。
「難しい質問をするね…蜘蛛が生まれたときから糸の張り方を知っているように、蠅が生まれたときから飛び方を知っているように、魔法っていうのは本能で操るようなものなんだ。だから…人それぞれ感じ方が違うし、僕が教えられることじゃないよ。」
(人間は体内の魔素を感じ取る遺伝子を持ってないからどう頑張ろうが魔法は使えないんだけど…言いにくい…)
…次にザニの場合。
「何かな、ほら、マジシャンみたいな?こう…うん。」
次にレーニャの場合。
「そんなん考えたこともねぇな。他を当たってくれ。」
次に吹雪の場合。
「そうねぇ…んー…身体中の重いものを一部でも何でも良いから手のひらに集めて、魔法陣を…こう…考えて、集めたものを通す…?感じかなぁ…」
次に理子の場合。
「多くの者は魔法を唱える時、よく水をイメージします。体内に水が流れているのをイメージし、そこから水を引いて魔法陣に通すようなイメージを実践すると、魔法が唱え易くなりますよ。あくまでイメージですがね。」
次に美椿の場合。
「あー、こう…ポヒュン!って感じかね、ポヒュンって…」
城の中にいたのはこれで全員。サニィは結局よくわからず仕舞いで、雪のいる食堂にトボトボ歩いていった。
「おかえりサニィ。何かわかった?」
「ううん。」
俯いて首を横に振るサニィ。
「…まあ、焦らなくてもいいんじゃない?そのうちわかるよ!」
その言葉を聞いたサニィの目に、明るさが戻った。
「そうだね!ちょっとわたしにははやかっただけかもしれないよね!」
雪は微笑ましい顔でサニィを見ていた。
「それにまだがっこういってないもんね!」
「学校?ああ、学校か、」
雪は久しく忘れていたようだ。
「がっこーにいけばまほーおしえてくれるのかな?」
訝しげな顔で首を傾げるサニィ。
「…どーかなー?…でも、多分教えてくれるよ!」
「教えてくれる」その言葉を聞いたサニィは、目を輝かせていた。
「がっこーいつからだっけ?」
「え…4月10日…だよ?」
サニィは更に目を輝かせた。
「もうすぐだぁ!いっしょにいこーね!ゆき!」
雪は何故か涙をこぼしていた。そして、いきなりサニィに抱きついた。
「ふぇ!?、な、なに、?ゆき、」
雪は涙を更に、滝のように、流していた。
「いっしょ行こうね~、、!」
抱きつかれた瞬間こそ戸惑ったサニィだったが、雪の言葉に嬉しくなったのか、雪に抱きつき返した。
「うん!いっしょいこ!」
サニィはまだ知らない。この世界の何たるかを。ただ、今は夢踊らせていても良いのかも知れない。
ゆきってなんでもできるのかな?まほーもうんどーもピアノもなんでもわたしよりじょーずです!
いーなー、わたしもあんなならいいのに。
2018年  3月28日  水曜日  朝
朝食を食べ終えて間もない頃、サニィは雪を食堂に置いて部屋に戻った。
「うんしょ、と」
サニィが抱えていたのは、誕生日の日にレオナから貰った魔導書だった。あれから毎日読み込んでいたらしく、ページを捲った後がいくつも残っている。
そんな魔導書を手にして、サニィは食堂まで急いだ。
「あ、」
食堂の扉は、引き戸だ。手で引かねば開くことは出来ない。だがサニィは、分厚い魔導書を両手で抱えていた。
(じめんはやだなー、、)
毎日毎日読む度に本棚にきちんと直して大切にしてきた魔導書を、サニィは地面に置きたくないようだ。
(どーしよー、、)
サニィが食堂の扉を見上げて呆然と突っ立っていると、背後から何者かが近づいてきた。
?「こんなとこで何突っ立ってるんだい?」
振り返ったサニィは、そのインパクトに少しびっくりした。
「だ、だれ、ですか、!?」
赤い針のような髪を後頭部で一束に纏めたその女性は、まるで荒れ狂う大河のような異形の真っ赤なローブを纏い、巨大な蝙蝠を彷彿とさせる赤黒い羽を生やし、ただでさえ大きな女性の背丈を更に上回るほど巨大な鎌を肩に掛けていた。
「あたし?あたしは八津河 美椿。ちょっと上司に連れられてこの城にやって来たのだよ。それは良いとして、何か困り事かい?」
初対面の頃のレーニャのように突っかかってくるかと思いきや、案外優しい印象を受けたサニィ。美椿への好感度は悪くない。
「あ、はい、えっと、ここのドアあけてください!おねがいします!」
そう言ってサニィはぺこりと頭を下げた。
「うん、いいよ。」
美椿はそう言うと、食堂の扉を押した。
バキッ
「あ、」
…扉が開いた。引き戸が、押して開いた。
「ありがとーございます!えー、っと…みはら…さん?」
「あっはは、“みはる”だよ。礼はいいからさっさと行くといいさ。」
「あ、はい、わざわざありがとーございます!それでは!」
サニィは深々と頭を下げ、食堂の中へ入っていった。
(…ま、いっか。ばれないばれない…)
美椿は壊れた扉をそっと壁に立て掛けた。
「何をしているのですか美椿。」
(はひゃぁぁぁ!?)
美椿が恐る恐る振りむくとそこには、怒り顔の理子がいた。
「私が少し目を離した隙に、何てことをしているのですか!兎も角此方へ来なさい!」
「いやいや違うんですよ、何も閻魔様の話を聞くのが嫌とかそんなでは、、」
「貴方を咎めるのはまた次の機会にしますから、今は話を聞いて下さい!」
理子はそう言うと美椿の服の襟を掴み、そのままズリズリと引っ張って行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ゆきおまたせー!」
「おかえりサニィ。どこ行ってたの?」
「これー。」
サニィは手に持っていた魔導書を雪に見せた。
「あー、魔導書取りに行ってたのか!」
「うん!」
サニィは喜色満面の笑顔で頷くと、魔導書を背伸びしながら机の上に置き、雪の隣の椅子に座った。
「えっと…」
一ページずつ魔導書を捲るサニィ。
「これおしえて!」
サニィが指差したのは、氷魔法のページだった。
「えーっと…教えてって…どんなことを?」
「ぜんぶー!」
楽しそうな笑顔でそう言うサニィに、雪は少々肩を落としつつも、喜んで要望に応えた。
そういえばまだ魔導書に書いてある内容を詳しく説明していなかったので、この場を借りて説明しようと思う。
魔導書とは、言わば魔法に関する図鑑のような物であり、多くの魔導書は一ページ一魔法という表記が定番である。ページの左上四分の一に魔法陣の図が描かれ、その右には上から順に「名称」「制御難度」「消費魔力」の三項目が書かれている。「消費魔力」に関しては、魔法を使用する者の実力に応じて変化するため、魔法力が100の者が全力を賭けて使用したと仮定した際の値が印されている。魔法の中には詠唱が必要な物もあるが、詠唱は上記の三項目の下、且つ魔法陣の図の右に書かれることになる。これでページの上半分は埋まる。下半分には上半分に書いたことも含め、対象となる魔法の詳細が記されている。例えば、攻撃魔法の場合は魔法の描く軌道、補助魔法の場合は魔法の効果が、事細かに記されている。
それぞれの魔法の癖を見抜き、学ぶことで、戦術的な活用の幅が広がるため、魔法使いは誰しもが魔導書を読んで勉強するものだ。サニィも、魔法使いになりたくて、勉強するのだ。
「んー…そーだなー…」
(ていうかこの魔導書…漢字多いな…)
雪はサニィの期待に応えるために、暫く必死で考えた後、口を開いた。
「よし、じゃあまずは氷魔法がどんな魔法か、から教えよう!サニィはどんな魔法かわかる?」
「??」
サニィは首を傾げた。
「んー、、と、ほら、燃えるーとか、光るーとか!」
「あ、はい!」
サニィは何か思い出したのか、意気揚々と挙手をした。
「お!なになに?」
「こーる!」
「そう!凍るね!正解!」
「やったー!」
サニィと雪を見ていると、幼稚園児と先生のマンツーマンの授業を見ているような気分になってくる。
「例えば、えーっと…」
雪はキョロキョロと周りを見渡した。何かを探しているのだろうか。
「あ、あそこにルカさんがいるでしょ?」
「うん。」
「ここで氷魔法を唱えると、」
雪はサニィが側で見守る中、食後に食堂の椅子で寝ているルカに向けて、手を翳した。雪の掌に、水色の小さめの魔法陣が展開される。
「氷魔法!」
淡く光った魔法陣から青白い球体が飛び出し、光の尾を帯びながらルカに命中した。直後、ルカを氷塊が包み込んだ。
「おお~…!」
手をパチパチしながら感嘆するサニィ。
「こんなふうになるね!」
雪は自慢げな顔でサニィを見た。
「どうやってるの?」
「え?」
「どうやってまほーだしてるの?」
目を輝かせて雪にそう訪ねるサニィ。
「どうやって…?」
「わたしもそれやってみたい!」
「んー、、」
雪は困った。サニィが好奇心を持っているのは別に良い。ただ、天才型の雪は、今まで魔法の唱え方など考えたことも無かったため、どう教えるべきか、悩んだ。
「えっと…なんか…身体中にある何かを…その…手の周りに集めて…それをちょっと…何か…ほら…ぐぐぐーってして…たら…そのうち…出てくる…?」
教え方など、浮かばなかった。
「?わかんない。」
訝しげな顔をして首を傾げるサニィに、お手上げ状態の雪。
「…私もわかんないや…他の皆に聞いてみて?」
雪は机に倒れ込みながら弱気な声でそう言った。
「わかった!みんなにきーてくるね!それでゆきにもおしえてあげる!」
サニィは食堂を後にした。そして手当たり次第に、雪にした質問と同じ質問をした。
まずは(いつの間にか氷塊を破ってた)ルカの場合。
「んー…ファーってしてシュルルーってしてグググーってしてスポン!だよ!」
次にアトの場合。
「魔法なー…なんだ?…全身に流れてる水みたいのを手の周りに集める感じだな。」
次にスカンの場合。
「えーっと…手のひらから何か出す感じかなぁ…」
次にトカゲンの場合。
「難しい質問をするね…蜘蛛が生まれたときから糸の張り方を知っているように、蠅が生まれたときから飛び方を知っているように、魔法っていうのは本能で操るようなものなんだ。だから…人それぞれ感じ方が違うし、僕が教えられることじゃないよ。」
(人間は体内の魔素を感じ取る遺伝子を持ってないからどう頑張ろうが魔法は使えないんだけど…言いにくい…)
…次にザニの場合。
「何かな、ほら、マジシャンみたいな?こう…うん。」
次にレーニャの場合。
「そんなん考えたこともねぇな。他を当たってくれ。」
次に吹雪の場合。
「そうねぇ…んー…身体中の重いものを一部でも何でも良いから手のひらに集めて、魔法陣を…こう…考えて、集めたものを通す…?感じかなぁ…」
次に理子の場合。
「多くの者は魔法を唱える時、よく水をイメージします。体内に水が流れているのをイメージし、そこから水を引いて魔法陣に通すようなイメージを実践すると、魔法が唱え易くなりますよ。あくまでイメージですがね。」
次に美椿の場合。
「あー、こう…ポヒュン!って感じかね、ポヒュンって…」
城の中にいたのはこれで全員。サニィは結局よくわからず仕舞いで、雪のいる食堂にトボトボ歩いていった。
「おかえりサニィ。何かわかった?」
「ううん。」
俯いて首を横に振るサニィ。
「…まあ、焦らなくてもいいんじゃない?そのうちわかるよ!」
その言葉を聞いたサニィの目に、明るさが戻った。
「そうだね!ちょっとわたしにははやかっただけかもしれないよね!」
雪は微笑ましい顔でサニィを見ていた。
「それにまだがっこういってないもんね!」
「学校?ああ、学校か、」
雪は久しく忘れていたようだ。
「がっこーにいけばまほーおしえてくれるのかな?」
訝しげな顔で首を傾げるサニィ。
「…どーかなー?…でも、多分教えてくれるよ!」
「教えてくれる」その言葉を聞いたサニィは、目を輝かせていた。
「がっこーいつからだっけ?」
「え…4月10日…だよ?」
サニィは更に目を輝かせた。
「もうすぐだぁ!いっしょにいこーね!ゆき!」
雪は何故か涙をこぼしていた。そして、いきなりサニィに抱きついた。
「ふぇ!?、な、なに、?ゆき、」
雪は涙を更に、滝のように、流していた。
「いっしょ行こうね~、、!」
抱きつかれた瞬間こそ戸惑ったサニィだったが、雪の言葉に嬉しくなったのか、雪に抱きつき返した。
「うん!いっしょいこ!」
サニィはまだ知らない。この世界の何たるかを。ただ、今は夢踊らせていても良いのかも知れない。
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