フェイトトリップ ~才能の統べる世界~

ルカ

第14話 後片付け


 みなさんこんにちは、サニィです。

 ゆきがげんきになりました!わたし、うれしくてないちゃいました!ゆきはしんぱいしないでいいーなんていってたけど、あれはだれでもしんぱいしますよ!

 やっぱりげんきがいちばんですね!


   2018年  3月17日  土曜日  朝


 龍神を撃退した次の日、朝食後、城の住人は会議室に集められた。

「ゆきー、けがだいじょーぶ?」

「完璧なんだよ。それが。」

「ソティアさん、本当に大丈夫なんですか?」

「ええ。少なくともゴーレム40体は対峙できるぐらい大丈夫。」

 ソティアと雪は早くも完治しているようだ。

「遅いわねールカ。」

「そうですね。折角の休日なので早く用件を伝えてほしいのですが…」

 ルカ以外が会議室に集まってもうすぐ一時間、皆が待ちくたびれていたその時、会議室の扉が開き、ルカが入ってきた。

「ごめんごめん、待たせたねー。」

 誤り方が軽い気がする。

「何でもいいが、美風と雷子は待ちくたびれて帰ったぜ。」

 レーニャは欠伸をしながらルカにそう伝えた。

「えー、、人手は多い方が助かるんだけどなぁ、、まいっか。えっと、皆には、町の片付けを手伝って貰いたくて集まって貰った!だからまぁ、手伝って?ください?」

「おう、いいぜ。」

「いいよー。」

「おかたづけー!」

 皆が結構あっさり受け入れてくれたのを見て、ルカは少なくとも嬉しかったようだ。

「よーし!それじゃあまずは瓦礫のてっ…」

 張り切ってそう言い始めたルカだったが、突然、言葉が止まった。そして少し考えた後、口を開いた。

「やっぱりいいや、解散で!」

 ルカのその言葉で、群衆はどよめき立った。

「待たせといてそれはねぇだろ!!」

「時間返せ!」

「そうだそうだ!」

「いやー、ごめんごめん!そんじゃ!」

 ルカはそう言うと、会議室の窓から城の外へ飛び立った。

「あ、逃げやがった!」

「捕まえろー!」

 そう言って、レーニャやアトなど、群衆の大半が城の外に飛び出していった。
 城の中に残った者達は、皆唖然としていた。

「ねーゆき、」

「何?」

「たいへんだね。みんな。」

「大人って皆ああなのかな?」

「皆じゃないですよ。」

 サニィと雪の会話に入ってきたのは理子だった。

「この城に住む者達は、皆特殊です。その気になれば、世界を滅ぼすことさえ容易にやってのけることでしょう。」

「そーなんですか?」

 サニィはそう言って首を傾げた。

「ええ。ですから貴方達は、彼らのようにはならないように。」

 理子は少し微笑みながらそう言った。そして丁度その時、会議室の窓から淡い光が差し込んできた。

「そう来ると思いました。」

 サニィと雪は急いで窓の外を見た。

「なにこれ!?」

 そこには、ホワイトバックした世界が広がっていた。というよりは、目の前が真っ白すぎてよくわからないのが本音だ。

「何も見えないじゃん!」

「りこさん!これなんですか?」

「おそらく、ルカが町を片付けているのでしょう。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「まったく、人の善意を素直に受け止めてもらいたいよね~、」

 そう言って真っ白な世界の上に浮いているのはルカ。右手を横に突き出して掌を広げている。どうやら何らかの魔法を維持しているようだ。

「そろそろ集まったかな?」

 そう言ったルカが右手の掌を収めると、世界は元の色を取り戻した。ここでわかった。ルカは、世界を丸々一個包み込むほど巨大な魔法陣を展開していたのだ。その魔法陣を使って唱えていた魔法は、凝集魔法アグロメレーション。魔法陣の範囲内にある物体を、魔法陣の中央に任意で移動させる魔法だ。ルカが集めていたもの、それは魔法が解けた後、ドムレカの町に積み上げられていた。瓦礫だ。昨日の騒動で広範囲に散らばった木片や灰などが、ルカの魔法によって一カ所に集められた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ~ドムレカ城 会議室~

「あ、みえた!」

 白い光が晴れると、町には見上げるほどの瓦礫の山が出来ていた。

「ええ…これ何…?」

「ああー、多分これは材料だよ。」

 ソティアだ。どうやらソティアもルカを追っては行かなかったようだ。

「ざいりょーですか?」

「うん。町を作る材料。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おおー、集まってるねー。」

 ルカはいつの間にか、ドムレカの町に戻ってきていた。積み重なった瓦礫の山を見上げて背伸びをした後、両手を胸元に持ってきた。

還元魔法リダクション!」

 ルカが掌を左右に大きく広げながらそう言うと、巨大な青白い魔法陣が、ドムレカの町を包み込んだ。

「指定!10に0.8!」

 すると、魔法陣は光を増し、半時計回りに旋回し始めた。瓦礫の山が段々と無くなっていく。それと同時に、家屋と思われるようなシルエットも、魔法陣の中に見えてきた。
 しばらくそんな状況が続くと、魔法陣は徐々に薄くなり、そのまま消えていった。魔法陣が消えた町に広がっていた景色は、全日の朝と何ら変わりのない町の風景だった。草木も露店も、何事もなかったかのように、町の一員として聳えている。昨日一日が、まるで夢であったかのようだ。

「よ~し!終わった終わった!」

 背伸びをしながら町に踏み入るルカ。その頃ドムレカ城の会議室では、ルカの魔法を間近で見ていたサニィが大はしゃぎしていた。本当に、魔法というものが大好きなのだろう。だから、夢を見るのだ。
 その後、ドムレカの住人達はそれぞれの家に帰っていった。その様子を誇らしげに眺めていたルカを、アトやレーニャ達が捕まえに来たのは、言うまでもないだろう。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品