フェイトトリップ ~才能の統べる世界~

ルカ

第5話 (雪の)誕生日!


 みなさんこんにちは。サニィです!

 きょうは1がつ31にち、ゆきのおたんじょうびです!

 おいしいケーキとかあるのかな!?たのしみだなぁ…。

 あ、そういえばおたんじょうびプレゼントもよういしたんだー。ゆき、よろこんでくれるかな!?


   2018年  1月31日  水曜日  早朝


 サニィは今日も、揺さぶられて目が覚めた。

「…んん、、ゆきぃ?」

 しかし、揺さぶっていたのは雪ではなかった。

「僕だよ。サニィ。」

 ルカだ。

「…ルカさん?」

「そ、ルカさん。」

「…ウトウト」

 サニィの瞼は、今にも閉じそうだった。

「…先に顔洗ってくる?」

「ん、、、」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「めがさめた!!」

「よっしゃ!やっとちゃんと話せる!」

「ルカさん。」

「何?」

「なんでこんなはやくおきたの?」

「それはねぇ…ゴニョゴニョ」

 ルカは訝しげに首を傾げるサニィの耳元に手を当て、事情を話した。

「…んふふふ、、おもしろそー!」

「じゃあ、ご協力お願いします!」

「りょうかい!」

 二人とも、兵士の如く敬礼をした。
 今日、雪にはお誕生日サプライズを食らわせるらしい。そこで、雪には夕方に起きてもらうよう、睡眠魔法[スリープ]をかけられた。

 おかげで、雪が目覚めたのは夕方だった。

「…ん、、ふぁああぁぁ、、よく寝た、、」

「…あれ?サニィがいない!?…ていうか周りに誰もいない!?」

 起きた雪の周りには、誕生日を祝ってくれる人はいなかった。雪は焦った。そして、窓の外を見た。

「…夕方!?」

「…なあんだ、、なら皆食堂かな、、」

「きっとケーキでも用意して待ってるんだね。」

 雪は歩いて食堂に行った。その間、誰一人としてすれ違わなかった。

(…兵士さん達も全員集めたのかな?そんな大げさな…)

 雪は食堂の扉を勢いよく開けた。

「おっはよーー!!」

 しかし、返事は無かった。それどころか誰もいなかった。

「…あれ?」

(食堂じゃない?…じゃあどこに皆いるの?…というか…今日は…やけに外が静か……気のせい…かな…?)

 雪は小走りで外に出た。その間も、誰一人としてすれ違わなかった…。

「…??」

 外に出ても、誰もいなかった。声も聞こえない。雪はただ焦った。そして走り出した。

「…皆ーー?」

 走って皆を探した。どこの民家も、灯りは点いていなかった。

「サニィー!!」

「ルカさーん!!」

「アトさーん!!」

「レーニャさーん!!」

「スカンさーん!!」

「理子さーん!!」

「トカゲンさーん!!」

「ソティアさーん!!」

「レオナさーん!!」

「お父さーん!!」

「お母さーん!!」

 必死に叫んだ。必死に呼んだ。空き地、路地裏、民家、洞穴、屋根、夜まで必死に探した。最後に丘の上から町を見下ろした。しかし誰も見つからなかった。城の皆はもちろん、町の人さえいなかった。

「ハァハァ、夢…なのかな…?」

 思いきり頬をつねった。自然と歯を食いしばるほどの痛みが、雪に現実であることを伝えた。

「誰もいない…なんて…そんな…」

 雪は膝をつき、泣いた。夕方に起きてからというもの、誰にも会わず、誰の声も聞こえず、呼び続けても誰も出てこない。雪はただ寂しく、悲しく、泣いた。

「うぅぅ、、皆、、どこいったの?、、いたずら、、なら、、もういいよ、、出てきてよ、、お願いだから、、出てきてよ、、、」

 泣いてわめいて泣き疲れて、雪は城に戻ることを決意した。帰るときも誰もおらず、ただ静寂が流れていた。

 城に着いた。とぼとぼと歩いて帰ったのでかなり時間がかかった。全身が重く、息苦しい。早くこの悪夢が覚めないものかと思いつつ、城の扉を開いた。

「あ!おかえり!ゆき!」

 そこにはサニィがいた。雪は自分の目を疑い、同時に先ほど流しきったはずの涙をもう一度流していた。

「サニィ…!!」

 雪は嬉しさのあまりサニィに抱きついた。サニィは少し嬉しそうだった。

「ゆきさみしかった?」

「寂しくないわけ、、ないじゃないの!、」

「あら、雪、以外と遅かったわね。」

「待ちくたびれてケーキ食べようかと思ってたよ。」

「お父さん!お母さん!」

 その後ろには、ルカを始めとする城の皆がいた。

「ふふ~ん、どうだった?魔法の世界は。」

 ルカが腰に手を当て、得意気に言ってくる。

「??魔法??」

 雪は首を傾げた。

「ん?魔法ってわかんなかった?誰もいなかったでしょ?あれ魔法だよ。雪だけ、誰もいない世界連れて行ったのだ!」

 ルカが誇らしげにそう言った。

「な、なんでそんなことするんですか!!」

「そりゃあ誕生日だから。サ・プ・ラ・イ・ズ!」

「うれしいでしょ?」

 ルカがサプライズ宣言したのに合わせて、サニィが雪に聞いた。

「こんなの嬉かないわよ、、とんだ災難だったわ、、」

「でも、家に帰ったら皆いるって、嬉しかったでしょ?」

「…ん、まぁ、そりゃあ、ねぇ、嬉しい…けど…うん…」

(反応が…微妙だぁ…!!)

(いや、ルカ、これめっちゃはしゃいで喜ぶとでも思ったのか?少なくとも俺もこういう反応するぞ?)

 ルカとアトの、心の会話である。

(いや、でも、次のは!!)

「ゆき!」

「ん?何?」

 突然サニィが呼んだかと思うと、袋をゴソゴソし始めた。
 そして、何かを取り出した。

「おたんじょうびおめでとう!」

 それは、雪の結晶の形をしたブローチだった。

「うわぁぁ//」

 嬉しそうに受け取る雪を見て、サニィも満面の笑みを浮かべた。

「ふぶきさんにていあんしてつくってもらったの。おれいはふぶきさんにいってね!」

「でも、提案したのはサニィだから、お礼を言うね。ありがとう。」

 雪はサニィの頭を撫でた。サニィの笑顔がどんどん柔らかくなっていく。

「こちらこそー!」

「そして、お母さん。あ、ありがとね。」

 少し照れくさいのだろうか。雪は目をそらしながら礼を言った

「別に…そんなのすぐ作れるわ。」

 そっぽを向いてそう言う吹雪に、ザニが笑いながら言った。

「ぷふふふふwすぐにってw一週間空き時間にちまちま作ってw「自信作ができたわ!!」って言ってたのはw吹雪じゃんw」

 吹雪は顔を真っ赤にした。

「ザ、ザニ!そ、そんな恥ずかしいこと!言わないでよ!」

「うん!もっかい惚れ直sぁばはあぁ!」

 ザニはビンタされた。吹雪は神の中では弱い方とは言え、そのビンタはプロレスラー級だ。

「な!?ザ、ザニくん!…よくも…よくもザニくんを…!お前だけは…絶対にゆるさん!」

「いいぞいいぞ~ルカく~ん!!」

「敵は討つぞ!ザニくん!」

「あんたら一回黙りなさいよぉ、、」

 二人で大はしゃぎするルカとザニに、吹雪は終始呆れ、周りのギャラリーは楽しんで見ていた。さらにそこに参戦する者も出る始末だった。
 結果的には、「ケーキを食べよう」ということに落ち着き、皆で食堂に向かったのだが、その道中に雪は、皆がいるという喜びを噛み締めるのだった。
 ルカの「サプライズ」は成功したと言えるだろう。
 ルカが食堂へ向かう間「計画通り」と声を漏らしたらしい。
 どこまでか計画通りだったかはわからない。もしかすると、ずっと前から計画通りで、これからもルカの計画通りに進むのかもしれない。


コメント

  • 無人

    とてもキャラクターの個性が強く、
    記憶に残っています。
    物語の内容は、ありきたりなものですが、ルカさんらしさが出ていると思っています。
    次回作を楽しみにしてます。

    2
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品