エリートヤンキーの嫁にならなきゃいけないのですが

千桜

9話 心の芯3

「昨日は結婚して欲しいとか言われて、不審者だと思っただろ?笑」

 驚き過ぎて思考が停止していた。と素直に告げると「やっぱそうだよな~!」と豪快に笑った。

 どうしてそんな事言ったの?胸中の疑問を形にしようと口を開きかけたが、彼の言葉が僅かに早く耳に届いた。
 「ダメもとでお願いするけど、父親が回復するまで店を手伝って欲しいんだ。お客さんの洋服を仕立てたり、直すのを手伝って欲しい。」
 勿論時給は払う。彼の、切実な様子にただならぬ気迫を感じ、放課後の時間がある時にお店に来ることで話しがまとまった。

 「結婚して欲しいって言ってたけど、あれって結局どういう事?」
ようやく訊くと、
 普通に頼んだら、断られる確率の方が高いから。なんとか印象に残して話しを聞いてもらう方法を考えてたら、咄嗟に。
 バツが悪そうに掻いた頬には、細かな痣が刻まれている。

 本当に結婚したい訳では無い事に一先ず安心し、また明日お店に来ることになった。
「そういうば!」
 実は昨日の下校時、他校の生徒と喧嘩している所を目撃してしまって、見つからないように息を潜めていたのだ。
 なんで喧嘩してたの?お客さんが来たので寸でのところで、喉に押し戻した。
 どした?振り向いた彼に、やっぱり何でもないと言って、店を後にした。

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