神々を従えし者

ロート

危険な存在

何事もなく退屈な入学式もようやく中盤に差し掛かった頃。
先程助けた子には悪いことをしたと今更ながら罪悪感が出てきた。けどあれで良かったのだ。なぜなら、とある事情で俺は、いや、俺達は世間から忌み嫌われている。俺は、どんなに変な噂が立とうが、嫌われようが、一向に構わない。しかし、あのままあの場に残っていたらそれを見た人が誤解をし今後良くない噂をあの子に立たせてしまう。それだけは、絶対に避けたかった。
理由は至極簡単だ。あの子の未来を潰したくなかったのだ。あの冷たい言葉は人を近づけさせないための代行措置だ。この最悪な運命に縛られるのは俺だけで良いのだ......
そして、この学園では俺の事はまだ知られてはいないだろうが、知られるのは時間の問題だろう。
そうなると一緒にいる所を見られると厄介なのだ。
このまま他人とは極力、学園生活では関わらないようにしようと俺は再度心に誓った。
それと話は変わるが今日は入学式と称してはいるが、正式には、適性検査がメインなのだ。
この学園は1部の天才しか入れない。王族とか、貴族、一般軍のお偉いさんの子供とかが殆どだな。だって英才教育されてるし....あとは、奇跡的に才能があった一般人の俺ら平民かな。
割合的には7対3くらい?
学園長の長ったるい挨拶をぼーっと聞き流したらいつの間にか入学式が終わり、例の適性検査になった。
適性検査と1口に言っても色々とある。まず測るのは、その人の総魔力量だった。学園の所有しているとてつもなくデカい《魔核大水晶》と言う、触れると魔力量を測ってくれるやつにみんな1人ずつ触れていく。そしてその後に、その人に魔法適正を調べる。その人に適性のある系統を賢者の《魔顕本》が色で教えてくれるのだ。

生徒が1人ずつ大水晶に触れていく。

(へぇー。みんな魔力が一般人とは桁違いだな。俺の魔力はどうなんだろう。)

「えー。次は....フェイトだな。」

と、子供くらいの身長の少女が台に乗りながら俺を呼ぶ。背伸びしていて何だかカワイイな。と思っていたら心を読んだかのように「身長は低くても私は一端の大人だ。それよりもさっさとしろ。それともその無能そうな脳みそをかち割って欲しいか?アァ?」

(おぉ、めっさ目付き怖いんだけど...)

そんな事を繰り広げながら俺は大水晶に触れた。

「さっさとそうすれば良いものを手こずらせやがって....まずは自分の内側に意識を向けてみろ。何か見えてくるだろう。それをずっと集中して感じておけ。」

何だか、さっきの1件で俺にだけ雑な扱いをするようになったロリっ子教師に従い俺は目を瞑り体の内側に意識を向けた。
目をつぶった最初はただの真っ暗闇だったが、段々と何かが闇から滲み出るように浮かんできた。俺はその浮かんできた物に不信感とそれとは逆に途方もない安心感を覚えた。不信感を感じたのはとてつもない魔力の塊が俺の目には12個映っていたからだ。その不審な12個の魔力の塊はまるで時計のように等間隔で並んでいた。

1の場所の魔力はまるで触れたら最後、決して消滅しない地獄の炎のような荒々しい赤色を。

2の場所の魔力は空に浮かび下界の人々を優しく見守る太陽のような高貴な橙色を。

3の場所の魔力は光の届かない深海のような深い青色を。

4の場所の魔力は全てを癒すような柔らかい緑色を。

5の場所の魔力は触れたものを全て穢して行くような不穏な紫色を。

6の場所の魔力は一片の曇りも無い大空のような空色を。

7の場所の魔力は全てを飲み込み自らの虚無へと誘うような黒色を。

8の場所の魔力は見た者全てに勇気を与えるような力強い黄色を。

9の場所の魔力は時として厄災をもたらし人々の恐怖を煽るような茶色を。

10の場所の魔力は全ての闇を浄化し平和をもたらすような神々しい白色を。

奇数の魔力はまるで悪魔のような深くて底知れない魔力を感じる。
そして偶数の魔力はまるで天使や神のような温かでこちらも底知れない魔力を感じた。

しかし黒魔力塊は精緻な意匠の施された神代文字が浮かぶ鎖で杭を打たれ、 
そして白魔力塊もまた暗黒文字と呼ばれる物が浮かんだ鎖で囚われていた。

何だよこれは.......訳が分からん。しかし、
初めて自分の魔力を見たがこんな色をしていたんだな。しかし何か、この魔力懐かしい感じがする......なんだろうこの感覚は.....

「ばっ.....ばかなっ!魔力量が測れないだぁ?!まさかこの大水晶を持ってして測れない程の魔力を持っているとでも?.....いやいやそんな訳はない.....これはこの学園が開校して以来全て1度たりとも測定を間違えたことなどない程の正確さなのだからな。私も疲れているらしい。
ハァ...君、この事を学園長に伝えて欲しい。バケモノが居るとな。全く面倒な生徒が来たもんだ。仕事が増えるじゃないか......」

何か試験官がブツブツ呟いて、その後に近くの補助職員に何か話していた。ハッキリ聞こえなかったが、魔力がどうたら言っていたな。
まさか、魔力関係で結果が人よりもやばかったとか?!
そういや、何か言われていた職員の顔が若干引きつっていたような....
いや、まさかねぇ.....

その後は無事(?)測定諸々が終わり大トリの魔法適性のお時間が来た。
そして少し中年太りをしてお腹周りが重そうなメガネをかけた先生が壇上に上がり、説明をしてくれた。
「えー次に君たちにして貰う適性検査の説明だ。まずエレメント系だな。
赤色なら、炎系統。青色なら、水系統。緑色なら、風系統。茶色なら、地系統。空色なら、天候系統。と言う俗に言う5大エレメントと言うのに属する。
そして、珍しい物になると白だと精霊系統と言う普通の人間では見るどころか認知することすら出来ない精霊を、聖域から召喚、使役したり
また逆に黒色だと悪魔系統と言うこちらも普通の人間では認知することすら出来ない悪魔を冥界から召喚、使役することが出来る。そして.......」そんな詳しい説明を横に俺は昔の知識を掘り起こしていた。
確か、悪魔系統の属性は他の5大エレメントはもとより、希少エレメントのどれよりも絶対的に数が少ない。なぜかと言うと、悪魔は従う際に大きな代償を要求してくるのだ。それのせいで命を落とす人も少なくないとか......代償は悪魔によって異なるが大まかに言うと、召喚者の寿命か召喚された際の依代としての肉体を要求してくる。それも魔法適性の特に高い肉体だ。
正直、タチが悪い。この事でタダでさえ印象が悪いのに追い討ちをかけるかのように王都での惨殺事件があったため最早、悪魔召喚士の株は落下に落下を繰り返し最早、世間の敵として認識されてしまっている。
そして話は少し変わるが数年に何回かどの属性にも属さない新属性が発見されている。
確か、我が愛しの妹もそうだったっけ?

まぁ、妹の話は難癖もあるからまた今度ね。

「では、検査会場に各自向かいたまえ。」
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俺は、最初の魔力の有無を話していたロリっ子教師が言っていた魔力がおかしいっていう言葉がまだ引きずっていた。
はぁ...まぁもうどうしようもないな。
と沈んだ気持ちを何とか持ち直して適性魔法の検査会場に向かった。
そこで、いかにも不健康そうな顔色のヒョロヒョロな試験官がこう話していた。

「いいかい?魔法は魔力量に比例するように強力になる。だから限界を超えて魔法を行使すると運が良くて体が内部からの魔素の圧力に耐えきれずに弾け飛ぶ。
そして運が悪いと魔力が暴走し魔人化や、魔物化。
そうなったらもう分かるよね?大勢の人を殺すことになる。
そして、暴走が起こるのは自分に適性のある魔法及び魔力は遺伝子レベルで固く自分に結ばれている。
だから、肉体がそれに追いつかない程の魔法行使は気をつけた方がいい。
自分の身が可愛いならね.......

と、まぁ脅しは置いといてそんなことはここ数十年起こってないからあまり心配しなくてもいい。

じゃあお待ちかねの魔法適性のお時間だ。
最初の君からだね番号札を渡すからその番号が書かれた塔に入っていってね。」

最初に呼ばれたのは金髪のイケメン君だった。
何かどぎつい香水を振り撒いてニヤニヤしている。
そして声高々と

「俺様にはどんな魔法が待っているのだろうなぁ。ここに居る芋臭い田舎者の平民共とは格が違うものなぁ。ハーハッハッハ!」

そう言い残して1番塔に行った。

その後も何事もなく俺の番になった。
俺の番号札に書かれていたのは10番塔。
今まで呼ばれていた生徒が行っていた塔は1〜5番塔。いくらなんでもおかしくないか?

「先生。俺のだけ違う気がするのですが。間違いないですか?」

と言うと先生は

「いや、それで間違いない。さぁ行っておいで。検査官が待っているよ。」

と言うので疑問に思いながら俺はだいぶ遠い10番塔へと向かった。


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更新がとても遅れてしまい本当にすみませんっ!

テスト勉強やテスト。体育祭が立て続けに押し寄せてきて更新が予定よりも大幅に遅れてしまいました。

さて、今回は少し魔法系の物に触れてみました。何か話がごっちゃ混ぜな気もしないでもないですがそこはご愛嬌って言う所で(笑)

これからも頑張りますので今後ともよろしくお願いします!

今回も感想を書いてくれると嬉しいです!
それではまた次回でお会いしましょう〜

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