死は刹那なり

Leiren Storathijs

プロローグ

「体が溶けるッ!体がッ!誰か助けてくれ!あ、あ、ああぁあぁ!!」



その日の空は赤く染まり、赤い雨が降っていた。



紅き雨と赤黒い空は、人間達は初め何か空気汚染かと思っていたが、雨に触れた者の体は強力な酸によって体が溶け、



空気を吸う者は、一瞬にして肺が腐る。



それを知った彼らは、外出時は特殊な防護服とガスマスクが無ければ生きて行けない事を知った。



しかしまだ誰も、この異常現象の真相を知る者は居ない。



「今日も降ってんなぁ……必ず防護服とガスマスクってこんなのいつになっても慣れないよ……」



その防護服は、本来危険な化学物質から身を守る物であって、この雨を防ぐ物では無い。



長時間受ければ、その服はどんどん機能が低下し、最後には服が破れ、体に浸透する。



「早く帰らないと!あぁもう間に合わない!こんな所で死にたく無いッ!」



勿論、木は枯れ、人間以外の生物、植物が生きて行くのは、あまりに酷すぎる環境。いや、生まれたとしても、その命は間もなく絶たれる。



そしてそんな不毛の大地に更なる絶望は襲ってくる。



月は光無く黒く染まり、風は吹き荒れ、水一滴も存在しない世界に。



「来たぞ……またアレが来る!皆んな!家に戻れ!」



空から一つの大きな血の塊が、大地を裂く時、『その時』はやってくる。



収穫の時だ。



酸の雨は鋭い刃と変わり、地上の者を貫く。



「あ……終わった……まだ死にたく無かったな……」



吹き荒れる風は、命を奪う乾いた風となり、凡ゆる物を腐らせる。



「駄目だッ!こんなんじゃ体を守れねぇ!うわあああ!!」



黒き月は見た者を狂人化させ、同族の共喰いを始める。



「お父さん!あのお月様なんか変だよ?」
「おい!見るな……」



世界が絶望に満ちた時、空から降ってきた血の塊アレは、孵化する。



死は刹那。その世界は、使者によって狩られた。

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