この素晴らしい弟に祝福を!

月兎。

1-1 スキルにバグ発生?

弟side


異世界にやって来ました。
僕達はキョロキョロと街中を見渡して、行き交う人々を観察した。

「獣耳だ!獣耳がいる!」
「兄ちゃん見て見て!エルフもいるよ!」
「さようならニート生活!この世界なら、俺働くよ!」
「ああああ……ああああああ………あああああああああああ!!」

兄ちゃんは隣で頭を抱えて叫び声を上げている、女神様の方を振り返った。

「おい煩いぞ、俺まで頭の可笑しい女の仲間だって思われたらどうするんだよ」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

叫ぶと同時に、女神様は泣きながら兄ちゃんに掴みかかってきた。

「や、やめろぉおおお!ぼ、暴力はやめたまえ!というか、何だよ、悪かったよ!もういいよ帰ってもらっても。後は自分で何とかしてみるから」
「馬鹿!帰れないから困ってるんでしょ!?あんたどうすんの!?ねぇ、どうしよう!私これからどうしたらいい!?」
「おい女神、落ち着け。まずはこういう時の定番としては、冒険者ギルドだ。
冒険者ギルドに行って登録とかすれば、身分証とか作って貰ったり金貸して貰ったりして、その日の宿代稼げるような簡単な採取任務とか紹介して貰えるもんだ。いいから、俺について来い」
「なッ…!!ブラコンのクソニートだった筈なのに、何故こんなに頼もしいの?
あ、カズマ、私の名前はアクアよ。女神じゃなくアクアって呼んで。私が女神だってバレちゃ、私を崇拝する信者達でこの街が大変な騒ぎになるから。
住む世界は違っても、一応私、この世界で崇められてる神様の一人なのよ」

流石兄ちゃん頼もしい!兄ちゃんに任せてれば安心だね!女神様って呼んじゃ駄目なの?じゃあ…

「じゃあ…アクア姉ちゃん?」
「ッ……!!ねぇカズマ…」
「やらねぇぞ」
「何よまだ何も言ってないじゃない!」

ギャーギャーと喧嘩を始めた二人に、僕は疑問に思ったことを話す。

「アクア姉ちゃん、ギルドって何処にあるの?アクア姉ちゃんなら知ってる?」
「え、私にそんな事聞かれても知らないわよ?私はこの世界に送る事は出来ても、たまに人々の暮らしを覗いてたくらいで特に詳しい訳じゃないし。
というか、大量にある異世界の内の一つよ?そんなもの一々知るわけないでしょ?」
「コイツ使えねぇ……」

兄ちゃんは、その辺の通りすがりのおばさんに尋ねた。

「すいませーん、ちょっといいですか?冒険者ギルド的なもの探してるんですが……」
「ギルドを?あら、この街のギルドを知らないなんて、他所から来た人かしら?ここの通りを真っ直ぐ行って右に曲がれば、看板が見えてくるわ」
「いやあ、ちょっと遠くから旅して来たもので、まだこの街に慣れてなくて。どうも、ありがとうございました!……ほら、行くぞ」

兄ちゃんはおばさんにお礼を言って、教えてもらった道を歩いていくと、アクア姉ちゃんは兄ちゃんにちょっと尊敬の眼差しを交えながら褒めてきた。

「ねぇ、あんな咄嗟の言い訳とか、なんでそんなに手際がいいの?こんなに出来る男な感じなのに、なんで貴方童貞だったの?
なんでブラコンでロリコンのクソニートなんかやってたの?」
「童貞なのは別に悪い事じゃない、一生に一度の機会を大切にする事の何が悪い。あとクソニートは止めろクソビッチ。
ニートは働かなくても生きていける、勝ち組にだけ許される上級職だ。後俺はロリコンじゃない、子供が好きなだけだ。……あそこか」
「ブラコンは否定しないのね」
「うっせぇ」

僕達は冒険者ギルドの様な施設へと入っていく。冒険者ギルド…つまりハローワークみたいなものかな。
日本ではハローワークに近付くだけでアレルギー反応が出るって言ってた兄ちゃんも、ここの施設は平気みたい。

「いいかアクア、登録すれば駆け出し冒険者が生活出来る様に色々チュートリアルしてくれるのが冒険者ギルドだ。
金を貸してくれるか、駆け出しでも食っていける簡単な仕事を紹介してくれて、オススメの宿も教えてくれるはず。今日の所は登録と金の確保、そして泊まる所の確保だ」
「分かったわ。その辺は、最近トラックに飛び込み自殺して私の所に来てた多くの人達が、似たような事言っていたから把握してるわ。私も冒険者として登録すればいいのね?」
「そういう事だ。よし、行こう」

兄ちゃんは僕達を引き連れて、真っ直ぐカウンターへと向かう。

「はい、どうぞー。今日はどうされましたか?」
「えっと、冒険者になりたいんですが…田舎から来たばかりで何も分からなくて」
「そうですか。えっと、では登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」

てすうりょう?

「兄ちゃん、てすうりょうって何?」
「……冒険者登録する為にお金がいるってことだ。アクア、金って持ってる?」
「あんな状況でいきなり連れて来られて、持ってる訳無いでしょ?」

お金かぁ、僕達日本円しか持ってないよ…。
僕がシュンとした顔で受付のお姉さんを見つめていると、お姉さんが困った顔を浮かべる。
一旦受付から離れて、皆で作戦会議することにした。

「アクア、作戦変更だ。まず最低限の金を手に入れよう。お前の美貌でそこらの頭悪そうな冒険者をたぶらかして来るんだ。
アクアは黙っていれば美女だ。手数料なんてそう高いもんでもないだろ。手数料に困ってますアピールすれば、三人分なんて余裕の筈だ」
「いきなり頼りがいが無くなったけど、まあしょうがないわねニートなんだし。
いいわ、黙っていればって所が気になるけど、私の美貌で迫ればイチコロよ。まあ見てなさいな」

アクア姉ちゃんは、自信たっぷりに近くのテーブルで雑談していた二人組の冒険者に目を向けると、不自然に体をくねらせて近付いていった。
なんだか不審者みたいだけど、あの動きはなんだろう?

「相席してもよろしいかしらー?」
「ん?ああ、どう…………ど、どうぞ……」

話しかけられた冒険者達は、体をくねらせるアクア姉ちゃんを見て、明らかに引いていた。

「ねぇあなた達、こういうお店で遊ぶのって始めて?」
「へっ?いや、俺達は結構此処の常連だと思うんですが……」
「あらあら、お盛んな事ねー?ふふふ、若いわね?」

…………。

「ねぇ兄ちゃん、アクア姉ちゃんって…」
「シッ……子供は見ちゃいけません」

兄ちゃんが僕の目と耳を塞いだので、その後どうなったのか分からなかったけど、姉ちゃん達はぐったりして疲れていた。

「登録料持って来ました」
「は、はぁ……登録料はお一人千エリスになります…」

受付のお姉さんが兄ちゃん達と目を会わせないようにしていた、ホント何があったの?

「えっと…では、此方のカードに触れて下さい。それで貴方達の潜在能力が分かりますので、潜在能力に応じてなりたいクラスを選んで下さいね。
選んだクラスによって、経験を積む事により様々なクラス専用スキルを習得できる様になりますので、その辺りも踏まえてクラスを選んで下さい」

わぁああ!!カードに触った瞬間データが浮かび上がってきた!!兄ちゃんと僕はワクワクしながら、お姉さんの手元を見つめる。

「……はい、けっこうです。サトウカズマさん、ですね。
潜在能力は知力が高いだけで、後は普通……、あれ?凄いですね、幸運が非常に高いですね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ない数値なんですが……。
でもどうしましょう、これだと選択できる職業は基本職である冒険者しかないですよ? これだけの幸運があるなら、冒険者稼業はやめて、商売人だとかになる事もオススメしますが……。宜しいのですか?」

おおう……最初から冒険者稼業否定されたよ。に、兄ちゃん…大丈夫だよ!運が強いってことは危機を回避出来る可能性が高いってことだよ!!
……アクア姉ちゃんがニヤニヤして笑ってるけどね。

「ええと、その……冒険者でお願いします」
「ま、まあ、レベルを上げてステータスが上昇すれば転職が可能ですしね!
それに、初期クラスだからって悪い事は無いですよ?なにせ、全てのクラスのスキルを習得し使う事が出来ますから!」

…それって、結構美味しいんじゃないかな?攻撃魔法も回復魔法も使えるなんて万能だよね?

「では続いて……サトウソウマ君ですね。本来12歳以下の子供は冒険者にはなれないのですが、保護者同伴なら大丈夫ですよ。
知力は平均より少し高く、体力は低めですね……あら、お兄さん程ではありませんが幸運が高いですね!
あと……えええええ!?魔力と魔力容量が凄いことになってますよ!?まるで魔力のタンクみたいです!!」

ま、魔力のタンク…?
兄ちゃんが驚いて僕を見ているが、アクア姉ちゃんはあんまり驚いていない。アクア姉ちゃん曰く、僕の体から魔力がはみ出ているそうだ。
……それはマズイんじゃないかと思ったけど、魔力が減る様子は無いらしい。

「あら……?最初からスキルが備わっていますね…『動物好かれアニマグラス』と『魅了チャーム』?
……え、何よこれ…動物好かれアニマグラスの説明文が掠れて読めない?それに魅了チャームの説明文が『?』になっています!故障でしょうか…でもこんなことは一度も……」

え、バグ?こんなことってあるの?

「おいどういうことだよ駄女神、スキルがバグるってどういうことだよ!だからあの時言っただろ嫌な予感がするって!!」
「そんなこと言われても知らないわよ!!バグなんて今まで一度も起きたこと無いんだから!!」
「僕……バグのせいで動物に嫌われたりしないよね?チャームが制御不能になって襲われたりしないよね?」
「やめろぉおおおお!!フラグになりそうなことは言うなぁあああああ!!」

どうやらカードの故障というわけではないらしく、これはスキルのバグらしい。
兄ちゃん達が喧嘩してカオスになったけど、その後アクア姉ちゃんのステータスが凄すぎて大騒ぎになり、スキルのことに触れる人は誰もいなくなった。


To be continued…
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後書き
バグ発生しました。
原因は仮面悪魔が出てきた辺りから分かります。この後弟君はビーストサマナーになりました。

ビーストサマナー
人間以外の生物、主に獣モンスターや幻獣などを召喚して戦わせる職業です。
ドラクエ5のモンスター使いっぽいかもしれません、動物に好かれる体質的に考えて。

弟君は魔力量が半端ないです、彼には将来カズマ達の魔力充電器となってもらいます(笑)

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