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この素晴らしい世界にTSを!

月兎。

プロローグ

どうも、私は死んでしまったらしい。

「ようこそ死後の世界へ。私は、貴女に新たな道を案内する神です。佐藤和奈さとうかずなさん、貴女は本日午後14時21分に亡くなりました。辛いでしょうが、貴女の人生は終わったのです」

目が覚めると、そこは事務室みたいな部屋の中だった。そこに、唐突に私は突っ立っている。そして、目の前には事務椅子に座った一人の神。
何故神だと、相手の言う事をすんなり信じたのかと言えば、無駄にキラキラと後光の様なものが射していたのと、現実にはありえない位のイケメンだったから、「ああ、本物の神様なんだな」と思ってしまった。
その神の言葉を聞き、改めて自分が死んだ事を自覚した。死んだと言われて落ち着いているのは、死ぬ直前の記憶があるからだ。

それはつい先ほどの出来事だ。
引きこもりオタク生活で培った達人級のゲームスキルを遺憾いかんなく発揮し、私は近所の公園でスマ〇ラをこれみよがしにプレイして、子供達の崇拝の視線を浴びるという、私の人生において最高の時を満喫していた。

だが、そんな私のモテっぷりを妬み、そして危険視した何者かが、どうも国家権力の犬を召還する儀式を取り行なったらしい。
女子高生にもなって学校はどうしたと新人の警察官にたっぷり説教を受けた私は、軽く死にたい気分でウロウロと近所を徘徊していた。

そんな時、3DSをいじりながら私の前を歩いていた小学生男子が、信号が青になったのを確認して、そのままロクに左右も見ずに横断歩道を渡っていった。
そこに、わき見運転をしていたトラックッ…!!

ではなく。
トラクターが突っ込んで来たのだ。

耕されるッ!!

私は危うく畑の肥やしになりかけた小学生男子を、とっさに後ろから突き飛ばした所までは覚えている。

「そうですか…えっと、一つだけ聞いても?」
「どうぞ」

私の質問に、神がゆっくり頷いた。

「あの男の子は……私が突き飛ばした男の子は、生きてますか?」

大切な事だった。
人生最初にして最後の見せ場だったのだ。
命をかけて助けに入って、結局間に合わなかったなんて悔し過ぎる。

「はい、生きていますよ。もっとも、足を骨折する大怪我を負いましたが」

良かった…男の子は怪我はしたが、私の死は無駄じゃなかった訳だ。ほっとした様子の私を見た神は、小首を傾げた。

「まぁ、貴女が突き飛ばさなければ、あの子は怪我もしなかったんですけどね?」
「……え?」

この男なんつった。

「あのトラクターは、本来ならあの子の手前で止まったんです。あたり前ですよね、だってトラクターですから。そんなにスピードだって出せないし。
つまり、貴女はヒロイン気取りで余計な事したって訳です。……プークスクス」

どうしよう、コイツ引っ叩いてやりたい。

「……つまり、私は意味も無くトラクターに耕されて死んだって事か。まぁ…しょうがない。つまんない最後だったけども、まぁ……」
「耕された?いや、貴女トラクターに轢かれてなんかいませんよ?トラクターは、貴女の目の前で止まりましたから」
…………はい?

「えっ…でも、私死んだんじゃ……?」

トラクターに轢かれる寸前の記憶しかないから、それが原因で死んだと思ってたんだけど、違うの?

「貴女はトラクターに轢かれそうになった恐怖で足を滑らせ転倒、トラクターに頭をぶつけて気絶し、近くの病院に搬送。
なんだコイツ、なっさけねーのと医者や看護婦に笑われながら、目を覚ますまでそこのベッドに寝かしとけと、」
「いやぁああああああああッ!!聞きたくない聞きたくないッ!!そんな情けない話は聞きたくないッ!!」

神は耳を塞いでいる私に近寄ってくると、ニマニマと笑みを浮かべながら、態々わざわざ私の耳元で、
「そこのベッドに寝かしとけと、適当な病室のベッドに寝かされていた所を、病院で有名なドジッ子看護婦が、本来絶対に間違っちゃいけない系の薬を、点滴待ちしていた他の患者と間違えて貴女に……」
「あああああああッ!!うわぁあああああッ!!いやぁああああああッ!!嫌だぁああああああ、そんな情けない死に方ってあんまりでしょぉおおおおッ!!」
コイツ絶対神じゃないでしょッ!!

「…さて、俺のストレス発散はこのくらいにしておいて。情けなく死んだ貴女には、いくつかの選択肢があります」

コイツ…ッ!!
いやもう、話が進まないから我慢しとこう。

「それは、このまま日本で赤ん坊として生まれるか。天国的な所でお婆ちゃんみたいな暮らしをするか。さあどっち?」

なんだその身も蓋もない選択肢は。
お前いくつかの選択肢って、二択じゃねぇか。

「いやその…天国的な所ってなんですか?そもそも、お婆ちゃんみたいな暮らしって?」
「えっと、天国ってのはな。あんた達が想像している様な素敵な所じゃないんだよ。死んだんだからもう食べ物は必要ないし、死んでるんだから、物は当然産まれない。作ろうにも材料もないし。
がっかりさせて悪いけど、天国にはな、何にも無いんだ。ネットもなければテレビも漫画もゲームも無い。そこに居るのは、既に死んだ先人達のみなんだ。
勿論死んだんだから、エロい事だって出来ないし、そもそも体が無いんだから出来ないしな。彼らと永遠に意味もなく、ひなたぼっこでもしながら世間話するぐらいしかやる事がない」

何それ、ネットも娯楽も何にもないとか、天国ってより地獄じゃねぇか。
しかし、赤ちゃんになってもう一度人生やり直すって……合法的におっぱい吸える訳だけど、私女だから別に嬉しくないし今更恥ずかしいなぁ……。
いや、それしか選択肢は無いんだろうけど。
そんな残念そうにしている私を見て、神はニコニコと笑顔を浮かべた。

「うんうん、天国なんて退屈な所行きたくないよね?かと言って、今更記憶を失って赤ちゃんからやり直すって言われても、貴女にとっては今までの記憶が消える以上、それは貴女って言う存在が消えちゃう様なものですよね。そこで!ちょっと良い話があるんだよお嬢さん!」

「実はな?今、ある世界でちょっとマズイ事になってんだよね。って言うのも、俗に言う魔王軍ってのがいて、その連中にまぁ、その世界の人類みたいなのが随分数を減らされちゃってピンチなんだよ」
「……で、私が代わりにその魔王を倒せと?」

神が、フッと鼻で笑った。
この野郎。

「まさか、幾ら何でも引きこもりのオタクJKに魔王退治命じるほど鬼じゃねぇよッ!!あははははははッ!!」
ふうむ、ぶっ殺してぇ。
「話を続けるぞ。で、その星で死んだ人達って、まぁほら魔王軍に殺された訳じゃん?なもんで、もう一度あんな死に方するのはヤダって怖がっちまって、そこで死んだ人達は殆どがその星での生まれ変わりを拒否してるんだ。
ハッキリ言って、このままじゃ赤ちゃんも生まれないしその星滅びる!みたいな。で、それなら他の星で死んじゃった人達を、そこに送り込んでしまえって事になってな?」

つまり、移民政策みたいなもんか。

「で。どうせ送るなら、若くして死んだ人なんかを、肉体と記憶はそのままで送ってあげようって事になったんだ。
それも、送ってすぐ死んじまうんじゃあ意味が無いから、何か一つだけ。向こうの世界に好きな物を持っていける権利をあげてるんだ。
それは、強力な固有スキルだったり。とんでもない才能だったり。神器級の装備を希望した人もいたな。……どうだ?これならお互いにメリットがある話だろ?あんた達は、異世界とはいえ人生やり直せる。異世界の人達は即戦力になる人がやってくる。悪くない話だろ?」

なるほど、確かに悪くない話に思える。
それにあれか!強力なチート能力もらって、俺TEEEE的なあれかッ!!
しかしどうしたもんか。

「えっと、聞きたいんですけど、向こうの言葉ってどうなるんです?私、言葉喋れるんですか?」
「その辺は問題ない。俺達神による、アレな超パワーでサクッと都合よく解決済み。勿論文字だって読めるし向こうの貨幣なんかも、日本円に脳内で換算されてくれる分かり易い便利システムを採用してる。だから、後は能力か装備かを選ぶだけだ」

最早、最初に出会った時の重々しい口調は崩壊し、完全に地が出ている神。
なるほど、となるとここはやっぱ能力かな?いや、装備も捨てがたいし。
いやいや、ここは必須とも言える鑑定だとか、ステータス弄れる系だとか?
いやいやいやいや、ここは……。

「おい、早くしろー?どうせ何選んでも一緒だよ。最初から引きこもりJKでショタコンのお前なんかに誰も期待はしてないから、なんか適当に選んじゃってー。何でもいいから、早くしろー早くしろー」
「ショッ…ショタコンじゃないからッ!!性別問わず子供が好きなだけだからッ!!」

涙目で震え声で言い返すが、神は自分の髪の先の枝毛をいじりながら、私には全く興味無さそうに言った。

「なぁー、そんな事どうでもいいから早くしろー。この後、他の死者の案内がいっぱい待ってるんだからな?」

そのめんどくさそうな投げやりな態度に、流石に私もカチンときた。
じゃあ決めてあげるよ。
異世界に持っていける物でしょ?
せめて揚げ足とって困らせてやんよッ!!

「じゃあ、あんた」

私は神を指差した。
神は、髪の枝毛を弄りながら。
「あーはいはい。それじゃ、この魔方陣の中央から出ない様に…………」

そこまで言って、神はハタと動きを止める。

「……今何て言った?」

呆然と呟く神と、そして私の足元には、青く光る魔方陣が現れた。
おお、なんだこれ。
もしかしてこのクソ神を異世界に引きずり込む事に成功するっての?

「ちょっ…え、何これ。え、嘘でしょ?いやいやいやいや、ちょっと、あの、創造神様!?無効だろッ!?こんなの無効ですよね?待って!待ってッ!?」

涙目でオロオロしながら、滅茶苦茶に慌てふためく神。
その姿を見れただけで、私は既に満足していた。そのまま神を指差し。

「あははははははッ!!馬鹿にしてた相手と異世界へ強制連行ッ!!ねぇ今どんな気持ち?ねぇねぇどんな気持ち?」
「うわぁあああああッ!!ちょっお前何してくれてんだッ!?嫌だぁああああッ!!こんなちんちくりんな引きこもりJKと異世界行きなんて、嫌だぁあああああッ!!」

私は、神と共に白い光に包まれた。


To be continued…

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