ある日、僕は異世界に転移した

桂坂優子

    日曜日で大学が休みだったので、お昼に街まで買い物に行き、歩いて帰る途中だったらしい。突然、目眩に襲われ、そのまま意識を失ったという。その時に何が起こったのかは分からなくて、特に襲われる心当たりもないらしい。周りに他の通行人もいなかったそうだ。

   彼女の話を聞いて、一つ気になる点があった。日曜日で大学が休みだった、というところだ。

「君が目眩がしたのは5月20日なの?」

   彼女は何言ってるの?という怪訝な顔をした。

「勿論よ。今日は5月20日でしょ。ほら」

   彼女はスマホを見せてくれた。確かに5月20日日曜日と表示されている。でもそれはおかしい。

「いや、今日は何日か分からないよ」

「だってスマホが」

「いや、スマホは当てにならない。それにそもそもここが日本かどうかすら分からないんだ」

「何ですって!」

「とにかく問題はそこじゃないんだ。君が目眩がしたのが、5月20日なのがおかしいんだよ。なぜって……僕がこっちに来たのも5月20日なんだ。しかも時間もだいたい同じくらい」

「え、どういうこと?   意味わかんない」

「つまり、君と僕は同じ日のほぼ同じ時刻に似たような現象に遭遇したわけだ。なのに君は今、ここに来た。僕より一日遅れでね」

    喋りながら僕は、彼女がここに来た時間は昨日僕が来たのと一日違いの同じ時刻かも知れない、と思った。それは一体どういうことだろう?    合理的に考えれば、彼女は丸一日かけてこの場所に移動してきたということか。いや、そもそも僕が目覚めた時点で時間が経っていないことからしておかしいから、結局説明がつかない。

    彼女はまだ事情が飲み込めない風で、ちょっと茫然としている。僕はここで説明を続けても仕方ないと思い、彼女を昨夜泊まった家に連れてゆくことにした。

「まあ、とにかく、家に行こう!」

「家?   家があるの?   あなたの?」

「家というか小屋というか、とにかく空き家なんだ。昨日僕が発見して昨夜はそこで寝た。実はこの森から出るルートがまだ分からないんだ」

「そんな!   こんなとこでずっと過ごすなんて嫌!」

   彼女は叫ぶとともに青ざめて、急に無言になってしまった。まあ、それは自然な反応だろうな。それでも今は、彼女に現状を受け入れてもらうしかない。パニックになられるとこっちが困る。

「先のことは後で考えることにして、ここじゃ話はできないだろう?」

僕は、彼女を無理やり引きずるようにして、落胆した彼女を連れて、例の家に戻った。

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