目が覚めたら悪役令嬢になっていたので最強のヴィランズになってみたかった(失敗)
聞いてない、聞いてないわ!③
少しばかり表情が和らぐお父様。よし、今だ!
「今日は大事なお話があるのだけれど」
「その前に、座って話さないか。私も歳だ。腰が痛くてかなわん」
お父様がコートを使用人に渡しながら別の部屋へ移ろうとする。
私は黙ってそれに続いた。コレット家の間取りが完璧に頭に入っているわけではない。ここで何かヘマをするわけにもいかない。
お父様の後ろについて入った部屋はちょっとした小部屋だった。私の部屋の三分の二くらいの大きさかしら?
「さて、話とはなんだね」
向かい合わせの小さな椅子に腰かけて私にも座るように促した。
私もなるべく上品に座るとどこから使用人が紅茶を運んでくれる。こぽこぽと暑い湯気をたててマグカップに赤い茶を満たした。
お父様がまだ熱いだろうにひとすすり。美味しそうに飲んだ。
そのタイミングで私は口を開いた。
「私、奴隷商人になりたくて子供を買ったの」
ゴブポォと奇妙な音がした。目の前のお父様が真っ赤になっていた。あと胸元が濡れている。
決定的な瞬間を見逃してしまったけれど、多分吹き出したんだろうな。いやね、汚いわ。
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