目が覚めたら悪役令嬢になっていたので最強のヴィランズになってみたかった(失敗)

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ちゃんと作戦を立てなきゃね②

 2人とも顔をつきあわせて思案する。どうしよう。啖呵を切ったんだから手ぶらでは帰れない。

 「とりあえず、1番年長の子を5人くらい買えば来週までに市場からいなくなる、なんてことは無いわよね?」
 「ええ、多分……すみません、ご主人」

 市場でやる気のなさそうな中年男性に声をかける。子供売りの商人だ。売れ行きが悪いのか不機嫌そうな顔でこっちにやってきた。


 「見世物じゃないぞ、お嬢ちゃんたち。買う気がないなら帰ってくれ」
 「いいえ、買います。最年長の子供が欲しいんですけれど」
 「ほう!本当かね!?」 


 マベルが交渉を始めた。私は迂闊に口を挟まない方がいいわね。 
 売り場にそっと目をやるとそこに立たされているのは子供が11人。そして傍らには揺りかごが1つ。赤ちゃんがいるのだろう。

 全員悲しそうな顔を浮かべて遠くを見つめている。マベルもそうだったのかしら。本当に全員を買いたいところだけど、無計画に買って、もっとこの子達を苦しめることになるのは嫌だわ。

 「お嬢様、最年長は7歳の男の子だそうです。それから6歳が3人で、あとは5歳以下です」
 「……7歳と6歳の子を買うわ」

 今の私にできるのはとびきりの悪役になりきってこの子達を教育すること。立派に育てるにはスパルタ教育しかないわ!

 「5歳なんていらないわ!大きな子供だけが欲しいの。いいわね?」

 高圧的に、振舞うの。男は嫌な顔をしながらもお金を受け取って4人の子供をこちらに寄こした。
 私の声に怯えているのかおずおずと私に向かって挨拶をする。基本的な礼儀はできるらしい。

 「さっさと馬車にお乗り。これから地獄のような毎日が始まるのよ」

 私も礼を返してからぷい、とそっぽを向く。
 馬車へ誘導して乗り込ませてマベルの方をむく。
 マベルは呆れ顔だ。

 「お嬢様、どうしてそんなに冷たいんですか」
 「冷たくなんかないわ、主人であることを分からせてるのよ」

 それから馬車に乗り込もうとして、思い出してマベルに伝える。

 「もしも私のやり方が間違ってたら言って欲しいわ。それに子供達の心のケアもお願いね。貴方にしかできない事だわ」
 「……はい、わかりました。お嬢様は中途半端ですね」
 「フン、何よ!」

 そう、私は冷酷で残忍なヴィラン。そしてマベルはそれを支える補佐。2人でヴィランズ。
 だってそっちの方がカッコイイでしょ?

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