目が覚めたら悪役令嬢になっていたので最強のヴィランズになってみたかった(失敗)

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こんな計画どうかしら?②

 けれど、大きな壁がたった今立ちはだかってしまった。
 マベルだ。
 さっきから首を絶対に縦には振ってくれない。
 ゲームの中では私の意見には絶対で、どんな無理な我儘もひとつ返事で引き受けてくれたのに!基本的に私の我儘はヒロインへの嫌がらせだったけど。

 「わかったわ。それなら一人で行きます」

 もう埒が明かない。お金さえあれば私ひとりで乗り込んでも大丈夫だろう。何せ、外に出ればそこは平和な世界。詐欺も、殺戮も、いやらしいことも、何も無いんだから。
 鏡の前で髪を整える。一応、令嬢だから大きな帽子で顔を隠した方が良いのかしら?

 するとマベルは口をわなわなと震わせて、小さく息を漏らした。

 「どうして突然子供市場なんて口に出したのですか……わ、私をお返しになさるのですか……?」

 はっとした。そうか、マベルはその心配をしていたのか。
 配慮が足りなかったわ。私の中で完結していても、口に出さなければマベルには何も伝わらないじゃない。
 ゲームのキャラクターだと言っても、この世界では立派な一人の人間だ。その考えが至っていなかった。

 「ごめんなさい、マベル。貴方をどうこうしようって訳じゃないのよ。ただ、私は……」

 そこで初めて自分の計画を声に出した。
 マベルは最初、泣き出しそうな表情を浮かべていたが、みるみる顔色が明るくなって、そして目を輝かせて最後はうんうんと頷いた。

 「お嬢様。クリスティーナお嬢様。貴方は普段意地汚くて底意地の悪い、性格が醜悪なお嬢様なだけでは無かったのですね」
 「何よその言い方は!クビにするわよ!?」

 私の怒号にも動じず、ふふふと優しく笑ってくれた。

 「それなら同行致します。マベル・カエラが、クリスティーナお嬢様を最後までお守り致しますので」

 そんな危険な場所じゃないと思うけど?
 とにかく、マベルが納得してくれたから、すぐに向かうことにした。

 ……馬車の乗り心地、これは最悪ね。車がいかに文明の賜物なのかがはっきりとわかったわ。

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