魔王の世界征服日記

Leiren Storathijs

第28話 新魔王国・改

俺は、新大陸に上陸すると、魔王だからと言う理由だけで、突然地下牢に入れられてしまった。

地下牢では、召喚能力を応用し、転移能力を開発した所為で、将軍やの王様やの色々と面倒な事にはなったが、何とか脱出する事は出来た。

そして俺は今、無事地下牢を脱出したが、後ろから全力で追いかけてくる将軍から必死に逃げている途中である。

「うおおお!此処は何処だー!このままじゃ俺の体力が切れるのも時間の問題だ」
「魔王が街中で逃走中!警備で手が空いている者は追跡に回れ!」

魔王が人間から逃げると言う普通は、あってはならない状況。しかし、俺もスーパーマンでは無い。

体力も人間並みだ。そう言えば仲間は何処に居るんだ!?

俺は、エクウスを呼ぶ、口笛を吹いてみる。

「来い!エクウス!」

しかし反応は無かった......
ここで捕まったら確実に殺される!どうすりゃいいんだ?

こんな時にフロガが牢屋をぶち抜いていれば良いんだがなぁ......
そう思うと、その予想は当たってしまった......

一方、フロガの牢屋・・・

「現在、魔王の飼っていたとされる猛獣は昏睡中。どうなされますか?」
「ククク、あんなに暴れていた猿がぐうぐう寝てんぞ?このまま永遠の眠りにつかせたらどうだ?」
「つまり殺せと言う事ですか?」
「あぁ、今頃魔王は、コイツの事を必死に探してんだろ。だが此処は最も深いとされる地下牢だ。本部の裏エレベーターからしか通じて無いんだからな」
「それもそうですね......」

現在フロガは、騎士団本部の裏昇降機しか入り口が無い最深地下牢に捕まっていて、処刑されようとされていた。

そこで最深地下牢の管理人が魔王の名を口にした瞬間、フロガは目を覚ました。

「ま、魔王......だと?」
「あ?お前なんか言ったか?」
「いえ?何も?」

そしてフロガは、一気に覚醒し、雄叫びをあげる。

「魔王......魔王!うおおおおああ!誰だてめぇらは?」
「な!?目を覚ましただと?おい!今すぐにでも遅く無い!睡眠剤を投与しろ!」
「は、はい!」
「睡眠剤だぁ?まさか......俺を殺そうとしていたのかー!そうはさせるかぁ!」

フロガは、目の前の鉄格子を、無理矢理捻じ曲げ、薬を投与しようとする研究者を投げ飛ばす。

「後はおめぇだけだなぁ?まぁ、お前だけは許してやる」
「は、はぁ!?」
「俺の魔王は、無闇な殺しを避けるからな。優しいだろぉ!ガハハハ!」
「クソッ!このイカレ猿め!」
「ひっでぇ言いようだなぁ!まぁ、猿だけど!良し!一緒にお前も此処から出ようぜ?」
「だ、大丈夫だ!俺は昇降機がある!」
「そう言わずに〜お前を天国まで連れてってやるよ!」

そして、フロガは管理人を掴み、握り拳で、天井を思いっきり殴る。

その衝撃で、手の中にいる管理人は、悲鳴をあげる。

「グボェッ!やめろ!死ぬっ!」
「ガハハハ!ちったぁ我慢しろ!この天井、どんだけ分厚いんだ?まぁ、殴ってりゃあ地上に辿り着くだろ!オラオラオラァ!」

戻って魔王・・・

俺がフロガの事を考えた瞬間、地響きが起きた。

「な、なんだ!?」
「クソ......次から次へと!」

次に、地面が砕け散る様な轟音が響き、鼓膜を破りそうな獣の咆哮
が聞こえた。

「ウオオォォ!!......やっと地上だぜえぇ!」
「あ?ふ、フロガ......?」
「この声は!まさかあの獣が目覚めたと言うのか!」

俺は、すぐに声の方へ行くと、フロガは俺を見つけ、近寄って来た。

「魔王!やっと会えたじゃねぇか!」
「お、おう!無事だったか!」
「ま、処刑される直前だったがな!ガハハハ!」

それって笑って良い事なのか?相変わらずフロガは、能天気だな......

そこで俺は、フロガが何か握っているのを見つけた。

「フロガ、何だそれは?」
「あーこれか?処刑の執行人が居たんだが......一緒脱出しようと思ったら、いつの間に握り潰していた様だ!」

フロガが握り拳を広げると、原型をとどめていない、フロガが言うには恐らく人であっただろう肉塊があった。

「おいおい......殺しちゃ意味が無いだろう」
「 それは、体が脆かったのが原因だな!ガハハハ!」

まぁ良い、これで今の状況を変えられる!

「フロガ!今俺は脱獄の後に騎士達に追われているんだ!俺はこの国を新しい拠点にするから、復興が面倒にならない程度に脅威を与えてやれ!」
「了解だぁ!うおおおお!」

フロガは、命令を受けると、民家を三棟程破壊した。

しかし、騎士達の勢いは収まるどころか、更に増させてしまったようだ。

「くっ!あの猛獣を止めろ!とにかく止めるんだ!」
「クソッ!フロガ!他の仲間の場所は知らないのか!」
「あー、知らね。俺も呼びかけに応じて来たんだから、他の奴らも呼べば来るんじゃね?」
「チッ......呼べば良いんだな?」

俺は、距離を段々と縮めて来る騎士達に囲まれながらも、他の仲間の名を叫んだ。

「ヴォルグレイ!氷は溶かせばいつでも復興出来る!出来る限り氷漬けにしろ!」

すると、今までフロガの熱気で暑かったこの場が、突然冷気に包まれる。

そして、王国の所々にある排水口から凍り始めた。

それは、徐々に広がり、遂には騎士達の足を固める。

「な、何が起こっている!?あ、足が動かないッ!」

氷は、周辺の民家を巻き込んだ所で止まった。どうやら恐らく地下にいるヴォルグレイには、これが限界なのだろう。

「くそぉっ!こんな凍りなど、どおって事無いわ!」

その中、将軍だけ、力だけで氷を砕き、ゆっくりと近づいて来る。

なんて使命感の強い将軍だ。だがもう終わりだ!さっきまで俺は逃げ回っていたが、立場逆転だ!

「これが最後だ......アエトス!邪魔な輩共を、吹き飛ばせ!」

そう言うと、何処からか分からないが、地面から風が吹くのを感じる。

すると、その風が突然竜巻を起こし、氷で固まっていた騎士達を一気に吹き飛ばした。

「ぐわあぁああ!魔王めっ!この国を渡す訳にはッ!......」

そうして、殆どの騎士は身動きが取れなくなり、気絶した。

「さーて、この国を乗っ取る準備を始めますか!」
「うっしゃあ!地下にいる仲間を全員解放して来るぜ!」
「あぁ、頼む!」

全仲間解放後、俺は、前の王国の様に洗脳活動を始めた。魔王は実は良いやつだと思い知らしめるのだ。

「この場にいる全国民よ!騎士達が倒れる中悪いが、俺の話を聞いてくれ!」

すると、国民達は、こちらに顔を向けた。

「この王国をこんな無残な姿にして、まず謝ろう!騎士達を吹き飛ばしたのは、計画を邪魔されたくなかっただけに仕方なくやった事なんだ!」

「俺の計画は、ただこの王国を乗っ取るだけでは無い!この世界に戦争を無くす為でもある!」

ここで、国民が反論する。

「何が戦争無き世界だ!お前らがその戦争の火種を撒いてんだろうが!俺たちは、過去も魔王の襲撃を受けた被害国なんだ!」

過去も魔王の襲撃を受けた?覚えてねぇな......んな事はどうでも良い。

「それも済まなかった!だが!今の俺は、そんな事は考えていない!俺が求めるは、平穏な平和そのもの!自国繁栄の為に無駄に戦を広げ、無駄に命が失われていく今の時代!俺はそんな今の世界を見ていられないのだ!」

「戦に負ければ、勝利した国に根こそぎ物資を奪われ、貧困した生活を送る事になる!そんな生活はもう嫌だろう?俺は、魔物の王、魔王だが、逆に世界を魔物で埋め尽くし、人間と魔物が共存出来る様になれば、戦争の火種も、戦争の理由も無くなる!」

ここで、国民達の心情に変化が訪れる。

「くっ!確かにそうだ。もう戦争は嫌だ。そのせいで俺は、家族まで失ってしまった......だけど!魔物に占領されるこの悔しさはどうなるんだ!」

「安心しろ。そんな悔しさは、その内無くなるさ、俺はこの国、否、この世界を変える!戦争無き、平和なる世界に!」

「分かった......信じよう。俺たちはどうやら魔王たる存在に勘違いしていた様だ。ははは......魔王が世界の平和か......今でもそれだけは信じられねぇや。でも事実なんだよな?」

「あぁ、事実だ」

「分かった!なら、騎士達を起こそう。我々が説明すれば、きっと信じてくれる筈だ」

ククク......ハーッハッハッハ!我ながら名演技だった!世界の平和?そんな事する気なんて更々無いッ!魔物達がいくら強奪、殺人をしようが、それが日常であると、思い知らせるんだよ!

って言う予定だがな......。

そうして騎士達が起きた後、必死に国民が説明する事で、最初は信じなかったが、意見に呑み込まれる様に、騎士全員がそれを信じた。

しかし、将軍ただ一人、怒りの表情を浮かべ、頭を抱えながら、ベンチに座っていた。

そしてこの王国は魔王、俺の物となった。

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