魔王の世界征服日記

Leiren Storathijs

第26話 新大陸

俺が勇者を魔王城の下敷きにして倒し、勇者の木が生えて一年が経った。

いや〜、一年で勇者倒す魔王ってこれまでに居る?いやまぁ、三度の復活含めたら数千年はいってるんだけどな......。

勇者の木は、相変わらず発光しており、その光は弱まるどころか、時間が経つにつれ、光が強くなっている。

これは何かの予兆だろうか?

さて、一年経った魔王国はどうなっているのか?それは、やっとアレが完成した事だ。

前までアレアレ言っているのは......名付けて、『地面がせり上がって緊急離脱出来るタイヤ』だ!良い名前だろ!

でも、部下に教えたら長過ぎるからと言って、『離脱車輪』になった。

いや、逆に短かすぎね?まぁ、この話はまた後にしよう。

んで今の魔王国は、完全な王国として成り立っている。一つ言う事があれば、離脱用の為、いつか新大陸に上がる為に、採掘や井戸は掘っていない。

それらは、山崩しはフロガ、水はヴォルグレイに氷を作って貰っている。因みに電気は、アエトスの風を風力発電として使って、えげつない電力を得ている。

エクウス?アレは馬だ。

ってな感じでいい感じに平和に過ごしている。

新大陸に架けようとしていた橋は流石に一年では半分も完成していない。

俺は、平和過ぎる世界を征服して絶望なる世界を作ろうと思ったんだけどなぁ......征服したその先は、また静か過ぎる平和。

俺のやった事無駄になってないよね?まぁ、一つの大陸を制覇したのは大きな一歩って所か。

そうして、それから半年が経った時、勇者の木は遂に動き出した。

「はぁ〜、今日も暇だなぁ......なんか大事起きねぇかなぁ」
「魔王よ、その大事は、既に起きているらしいぞ」
「え?」

そう言うと、フロガが興奮しながら、魔王宮の扉をぶち破り、俺に大声をあげた。

「魔王!勇者の木が何かやべぇぞ!」

扉をぶち破るお前がやべぇよ!

「何があった!?」
「勇者の木周辺がめっちゃ揺れてて、今にも何か起こりそうだ!」

俺は急いで勇者の木の下に行くと、勇者の木は真っ白に輝き、地割れを起こす程地面を揺らしていた。

「わーお......よし!お前ら!撤退の準備をしろ!こんな所で死んで今までの時間がやり直しなんて嫌だろ!」
「了解!」

そして、王宮に戻り、武に電話をする。この前、武が弄ってた鉄のプレートだ。スマホって言うらしいが、どこまで離れても遠隔で連絡出来る優れ物だそうだ。

「武、離脱車輪を起動しろ!隣の大陸まで移動すんぞ!」
「おう、分かった」

そうして電話を切った直後、魔王国全体の地面がせり上がり、下から出てきた車輪で移動を始めた。

「ハーッハッハッハ!勇者め、今復活しても無駄だ!」
「おおお!?すげえええ!あの武って野郎、どんだけ作れるもんあるんだ?」

魔王国が移動を始め、約百メートル程離れた時、勇者の木は崩壊し、中から勇者が復活した。

その勇者は、黄金の鎧を纏い、重そうな鉄の翼を生やしていた。

あれ飛べんの?

そう思った瞬間、勇者は、こちらに向かって超特急で飛んで来た。

「おいおいおい、もっとスピード上がらねぇのかよ!」
「俺様に任せろ!」

フロガは飛んで来る勇者に向かって炎の壁を作る。

しかし、簡単に弾かれ、勇者は魔王国内に入り、手に持つ剣を地面に突き刺す。

すると、魔王国に横線が入り分裂しようとする。

「あの翼をどうにか出来ねぇのか!」
「鉄ならこれならどうだ!」

ヴォルグレイは、分裂しようとする魔王国の亀裂を氷で固め、更に雨を降らす。

すると、勇者の翼は一気に錆び付き、離脱車輪に追い付けなくなった勇者は、そのまま地に落ちた。

本当に鉄なのかよ!?勇者だから『聖なる翼』とかあると思ってたのになぁ......

まぁ、これで一件落着か......

それから数分後・・・

また、フロガが慌てて俺の所に来た。

「おい魔王!このままだと海に沈むぞ!離脱車輪は、海に直行したまま進行方向変えねぇけど良いのか!?」
「安心しろ。大丈夫だ」

実はこの『離脱車輪』水陸両用なのだ!陸よりは、格段にスピードが下がるが、沈む心配は無い!

そして魔王国は、海に入り、俺は外を見ると離れていく俺の大陸と建設中の橋を見てある事に気付いた。

水陸両用なら橋要らなくね?

そう少し損に思ったが、そんな事は今更どうでも良い。次の大陸はどんな人間がいるのかなぁ......

進行方向を見ても、今は何も大陸の影すら見えない。俺は、見えるまで寝る事にした。

二時間後・・・

俺は、突然来た強い衝撃で起きる。

進行方向横を見ると、魔王国からしたら小さい、やや大きめな戦艦を見つける。

俺が寝ていたせいか、いくら警告しても反応が無い未確認物体に対して、威嚇射撃をしているようだ。

未確認物体とは、俺達の事だ。向こう側の戦艦から見て、海面をぷかぷか浮いてて且つ、確実に前に進み続けている、要塞にも見えなくもない王国を見たらどう思うだろうか?

普通なら、新大陸なのか、敵なのか、調べざる得ないだろう。

さて、どうにか敵では無い事を知らせる事は出来ないだろうか?

「良し!誰か交渉に行って来い!殺されない様に保護結界張ってやるから!」

そうして、一人の国民を小さなボートに乗せ、交渉させに行かせた。

俺は遠くから望遠鏡で見守る。

何かこの状況......食用スライムを村に行かせた時の事を思い出すな......

ボートは三十分程で戦艦に辿り着き、戦艦の船員だろうか?ボートが複数の人によって、ゆっくり引き上げられるのが見えた。

こちらからでは、船員と連れて行った国民の姿だけが確認出来るが、国民は、一言だけ言ったかの様に、すぐにボート戻り、帰ってきた。

「どうだった?」
「はい。とりあえず納得してもらった様ですが、今から大陸の方へ帰る所だったそうです。案内してくれるそうですよ!」
「そうなのか?」

いや、めっちゃ早く帰って来たけど、そんな話いつしてた?

「ならいいだろう。これを利用しない訳にはいかない。案内してもらおうじゃねぇか」

この大海原を無計画に進んでも、大陸ってのは、どこも繋がっている訳じゃない。いつの間に谷の中に入って迷子は嫌だからな。

「フロガ、大砲撃って合図してくれ」
「了解!あの戦艦目掛けて......」
「いやいやいや!上空に向かって飛ばせ......」
「おう!分かった!真上上空に目掛けて......ぶっ放せぇ!」

フロガの剛腕のアッパーによって、砲弾が真上に打ち上げられた。

良し、これで合図は出来ただろう......

その瞬間、砲弾が天井を突き破って、王宮の床をぶち抜き貫通した。

その穴からは、綺麗な海に魚が泳ぐのが見えた。

これなら良い感じの釣り堀が出来そうだ............。

「ヴォルグレイ......フロガを凍らせてこい......」
「多目に見てやれ魔王。あいつの頭ではこれが限界なんだ......」

限界って、どんだけ迷惑掛けたら済むんだよ!勇者の奇襲の際、編成をぶっ壊すわ、王宮の扉ぶち破るわ、天井と床を貫通させやがったぞ!?

ちょっと考えれば、その先どうなるかとか予測出来んだろ......これが本当の脳筋ってやつなのか?......

フロガの合図によって、戦艦側も合図を出し、進み始めた。

そして俺は、魔王国の進行方向を戦艦に変え、付いていく様に進ませた。

そうして、三時間後・・・

ようやく、大陸が見えた。俺達が進んでいる方向は何処かの港で、そこに着くらしい。

そしてやっと、戦艦と魔王国は港に隣接した。

港に着き、俺は、魔王国から地上に降りようとすると、王国兼船を見た港の人達が驚いた目で俺の事を見ていた。

そりゃそうだよな......普通、戦艦が港に隣接すれば、決まった場所に丁度収まるのだが、魔王国が隣接すると、まるで一つの島が大陸と合体した様になるのだ。

「良し!新大陸に着いたぞ!皆んな降りるぞ!」
「よっしゃあ!」

そうして、俺達は港に降りた瞬間、前方に鉄の盾を構えた特殊部隊の身なりをした人達が、銃を持って待機していた。

俺はすぐに全員に無抵抗と待機命令を出す。するとその瞬間、俺の後頭部に強い衝撃が走り、意識はそこで途絶えた。



          

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