魔王の世界征服日記

Leiren Storathijs

第21話 完全なる力

俺は、兵士が全滅した王国を更に攻め、建物を破壊し、国民を持ち帰る事で王国を陥落させた。

その後、魔王城は安全であると民に煽りながら数ヶ月で『魔王街』を築き上げた。

魔王街に住む元王国の国民達は、殆どの者が勇者を忘れ、貶していた。

そこで俺は、数ヶ月経っても尚来ない勇者は何をしているのか気になり、支配前の国民が言った『完全なる復活』の意味を調べる事にした。

世界中を走り回っていたエクウスの記憶によると、俺が四天王回収の為行っていた、山や島の地下に勇者しか入れない地下洞窟があるらしい。

「さぁて、って事は、その地下洞窟は四つしか無いって事で良いのか?」
「まぁ、そうなるな」

探索メンバーは、洞窟の大きさも考え、ウルフ、エクウス、魔王の三人で行く事にした。

「よぉし、ウルフ。今日は洞窟探検だ!楽しみだな」
「ワン!」
「なんかお前ら最早、犬と飼い主だな......」

そうして最初は、ヴォルグレイに出会った洞窟に着いた。

ヴォルグレイは確かにこの洞窟にすっぽりハマる様に寝ていたが、この奥は見た事が無い。

そして奥に入ると、最初結界を破った時と同じ感覚。何かが弾け飛ぶ感覚がした。

「お?どうやら勇者の結界も何の問題も無く割ることが出来た様だな......」

結界を破り更に奥へ進むと、白い大広間が見え、中心に青白い球体が浮かび、大きな一つの部屋となっていた。

そこはまるで、地下神殿の様だった。

「ここが?勇者の完全なる力がある場所か......」
「魔王が触れただけで割れる結界ってどこもセキュリティが薄いなぁ......」
「んで、この浮かぶ球体は何だ?」
「さぁ?......ん?下に石版があるぞ?」

球体のすぐ下に文字の書いてある石版があった。そこには、『第一の主人公補正』と書いてあった。

「主人公補正?なんだそりゃ?」
「あー、魔王。こりゃ俺達負けるかも知れねえ......」
「あ?なんだ、怖気付いたか?」
「主人公補正ってこれまたとんでもねぇ力作り出したもんだ......」
「だから何なんだよそれ」
「まぁ、簡単に言えば物語の主人公っているだろ?普通だったら絶対負ける所に『補正』っつうもんが掛かって、運命を無理矢理捻じ曲げちまうんだ」
「嘘だろ......そんなのってありかよ......てか主人公って勇者の事かよ!」
「クゥン......」

ウルフもこの絶望にひれ伏しそうになる。

「大丈夫だ、ウルフ。俺達は絶対負けねぇ。運命を捻じ曲げられるんなら、逆にそれを戻してやろうぜ!」
「ワン!」

ウルフは直ぐに機嫌を取り戻し、尻尾を振る。

「ってな訳で、これが勇者の完全なる力って奴だな!
「この世に絶対なんて存在しねぇ!最後まで足掻いてやろうぜ!」
「アオォォン!」
「よし帰るか......」

こうして、完全なる力とは、主人公補正と言うあまりにも理不尽過ぎる力と言う事が分かった。

俺は、残りの三つもどうせ同じだろうと思いながら魔王城へ帰った。

魔王城に帰ってから約一時間後・・・

魔王城から見える地平線、大体四天王が居た位置から、突然光の柱が出現した。

「お?勇者か?」
「遂に、完全なる力が全て目覚めたか......俺達の死のカウントダウンが始まったぞ」
「おいおい、そんな事言うなよ。さっき神殿に行った時に決めたんだよ。理不尽な力なんてぶっ壊してやるってな!」
「そうか......そうだな。出来る限り足掻いてみるか......言っておくが、あの力で魔王は死んだんだ」
「なるほどな」

しばらくすると、出現した光の柱は力を強め、四つの柱が一本にまとまり、凄まじい地響きと同時に魔王城目の前に光が落下した。

「うおおお!!??え?まだ準備して無いんだけど!?」
「そう、正に同じ状況だった。勇者の奇襲により、俺達は負けたんだ」
「えええええ」

勇者の奇襲。理不尽な力に、どうしようも出来ない状況。しかし、俺は諦めない。だってこれ魔王生活二周目って事だよね!?

ゲームの二周目って言ったら、クリア出来なかった所を、強くてニューゲームでクリアするでしょうがぁ!こっちにはルシファー先輩が居るんだよ!

「ヴォルグレイ!俺の事は放っといて、魔王街の奴等を全員避難させろ!ルシファーの力でぶちかますぜ?」
「分かった!後は任せたぞ!」

そして、街の避難を開始すると、光が落下した地点から、鼓膜が破れそうなくらいの叫び声が聞こえた。

「魔王!!久し振りだな!今、これにて、貴様に終止符を打つ!」
「久し振り!生きてたんだなぁ!元気にしてたか?」
「今度こそ貴様をぶっ倒して、ニート生活を取り戻させて貰うぜ!うおおおお!」

相変わらず俺を倒す理由変わって無え!

俺は、切り札に呼びかける。

「ルシファー先輩!全員の避難は完了したので派手にやっちゃってくだせぇ!」
「なんだ?突然下に回ったな......まぁ、全力を出して良いと言うのなら良いだろう」

そして、ルシファーは両腕を大きく広げ、唱える。

『宇宙を支配せし暗黒物質よ、今全てを飲み込め!ダークマター・ノヴァ!』

すると、勇者の頭上に超巨大の黒い球体が現れ、一気に何もかも吸い込み始める。

勿論の事、魔王街を吸い込み、王国の残骸を吸い込み、地割れを起こして山や丘を吸い込み、俺まで吸い込まれそうになる。

「やばいやばいやばい!俺まで吸い込まれたら、終わっちゃうよ!?」
「オラァ!魔王!俺様に掴まれ!地面をガッシリ掴むぜ!」
「うおおお!」

しかし、勇者は何故か耐えようともせず、全く吸い込まれる気配が無い。

黒い球体は異常な程の引力で、遂には、宇宙から隕石の雨を降らす。

それでも勇者は、余裕な表情だった。

すると、勇者が上に手を伸ばすと、球体を消した。

同時に球体が吸い込み続けていた物が一気に地面に落下する。

「ええええええ」
「嘘だろ......」
「馬鹿な......!」
「終わりだ!魔王!うおおおお!!」

勇者は一気に俺との間合いを詰め、俺に向かって剣を振り下ろした。

そして、俺の意識は此処で飛んだ。

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