魔王の世界征服日記

Leiren Storathijs

第15話 勇者の侵攻

俺は、何の力も見せる事は出来ず、颶風の凶鳥アエトスを部下に戻した。

魔王城に戻る際、アエトスの力を使ったが、城に戻っても、気まずさは残っていた。

その気まずさとは、未だに、アエトスが俺が殆どの力を失っている事にいつまでも溜息を出しているからである。

それほど残念な事なのか?昔の俺は、本当にどんな奴だったのか、更に疑問が深くなる。

馬鹿だったのは、元々で、しかし、アエトスを唸らせるほどの力は持っていたと......。はぁ......さっぱり人物像が想像付かねえ。

そうして、城に戻ると、先に戻っていた部下のゴブリンが慌てた様子でこちらに寄って来た。

「魔王様!大変です!」
「どうした?そんな慌てて」
「ゾンビの数が......半分以下に減ってます!」
「それマジ......?俺の想像通りじゃねぇか!半分以下に減れば、勇者の襲撃、そして、相当な力を持つってよ!?」
「現在も、少しずつですがゾンビの反応が消えてて......」
「おいおい、更に現在侵攻中かよ......」

俺は、急いで展望台に登り、周りを王国方面を眺める。そして、望遠鏡を覗くと、遠くから一人の剣士が迫るのを見つけた。

俺は、すぐ部下に、防衛命令を出す。

「防衛命令だ!ゴブリンは、勇者を迎え撃てる様に正面を守れ!トロールは、その前衛。ヴォルグレイとフロガ後衛で、ドラゴンとアエトスは、展望台の上にて、攻撃の期を待て!」

お?俺今、めっちゃ魔王っぽくね?部下を全員率いってるじゃん!

いや、今そんな事考えている場合じゃねぇ......。とにかく守らねえと!

全力で部下で防衛線を張ると、遠くからようやく声が聞こえてきた。

「魔王!!今すぐ貴様をぶっ倒す!勇者になってから暇が無え程忙しいんだよおおおお!」

そんな理由かよ......だが勇者の力は、本物だ!走りながらでも、ゾンビになった騎士達をなんの躊躇も無くぶった斬っているからだ。

そして、最初に勇者の剣とぶつかったのは、アエトスだった。

「うおおおおおお!......お?」

アエトスは、急降下しながら、足で勇者を鷲掴み、遠くへ一発で投げ飛ばした。

「おおおおお!?ああああ!」

......はっっっや!?一瞬で終わってしまった......。

「流石はアエトスだ」

ヴォルグレイは、アエトスを見て感心する。

「これは、どう言う事だ?勇者が弱過ぎる......」
「ヴォルグレイ。アエトスは一体何者なんだ?」
「アエトスは、魔王部下四天王の中で最も戦略や、魔王の知恵として、役目を果たしていた者だ。しかし、今の突進は、何も考えていない。掴んで投げる事を意識して行った行動だと思う」
「その通りだ、ヴォルグレイよ。勇者も我の予想通りに動き、結果、投げで終わってしまった」

そんな馬鹿な......いやしかし、これはまだ一回目だ。これを覚えて、勇者はまた襲撃しに来るだろう。

俺の珍しい魔王の働きに、防衛線の部下は、勇者来るまでは、真剣な表情だったが、今は、勇者の弱さに唖然としていた。

「おいおい!魔王さんよ!どうなってんだこりゃあ!まったく......勇者が来るって言うから今まで以上に燃えていたのに、どうしてくれんだぁ?この冷めた熱は!」
「あー、再燃の準備しておいてくれ」

城に全部下を戻し、城の魔王の座に座ろうとすると、座の後ろに大きな水槽が出来て居るのに気付いた。

その水槽の中には、サメが居た。サメはなぜか落ち着かなそうに左右にずっと泳いでいて、俺を見つけると、更に素早く回転する。

「おい、どうしたんだ?サメ」
「何故俺を呼ばない!?勇者ってなんなんのか知らねえけど、戦うんなら俺も連れて行けよ!」
「そりゃ無理だ。お前は常に水中に居ないと死ぬだろ?それに、出せたとしても、いちいち運ぶの面倒だ」
「そりゃ無えぜ!俺は、何のために召喚されたんだ!」
「あの荒波を突っ切る為だけだ。まぁまぁ、餌とかやるから、ここで一生過ごしてろ」
「なんなら、せめて、外に池でも作って放してくれ!此処じゃ窮屈過ぎる......」
「あ、出番は無くて良いんだな?何なら、今、水槽の水抜くから、下水道通じて、海に出ると良い」
「分かった.......」

こうして、サメは海に帰ったのだった......。

まぁ?いつでも召喚出来るし?元々サメは失敗作であって気に入らなかったんだ。そして、このまま部下に置いても需要が無いだろう。

さて、勇者が侵攻してくるなんて言うから、久しぶりと感じる程本腰を入れちまった訳だが、こうも、呆気なく終わってくれるとやる事が無くなってしまう。

「なんか他にやる事ある?」
「やるべきと言うなら、探すべき四天王は、あと一匹。しかし、アエトス回収に戻ってきたばかりだろ?とりあえず休んだらどうだ?」
「そうだな......ちょっとばかし寝るわ......見張り頼むわ。ふぁ〜あ」

俺は部下に見張りを頼んで休む事した。

アエトス回収も、早くは終わったが、実際三日掛かってるからな。そう考えると、休む事が先決だと思うだろう。

そうして、休憩時間は、六時間も寝てしまった。起きると日はくれ、他の部下は寝ていたが、トロールだけ唯一起きて見張っていた。

流石最初から居る、相棒だぜ。

「あー、よく寝た。トロール、お前は休まなくて良いのか?」
「あ?あぁ、起きたか。お前が寝ていた間特に何も起こらなかったぜ」
「そうか、何にも起こらなかったんだな。てか、勇者ってどこまで飛んで行っちまったんだ?」
「知らね。こっちに来ないかよりはマシだろ」
「そうだな!......んじゃ、後の見張りは俺に任せろ。寝すぎてもう寝れねぇわ。明日は最後の四天王探しに行くぞ」
「あいよ」

そうして、俺は、全員の部下を寝かせ、俺だけ見張りに残り、朝を待つ事にした。


朝になると、最初にウルフが起き、それから次々と起きて、朝の身支度をそれぞれ始める。

そこで俺は思った。

魔族の朝ってこんな感じなのか?俺のイメージだったら、朝の雄叫びを上げ、魔族っぽい雰囲気を出すんだが......

いや、平和過ぎる。一番最初にも俺は言った。脅威が無く、この世界は平和過ぎると。

朝起きて、身支度をし、朝飯食って、さぁ行くぞ!って......そこらの人間と生活同じじゃねぇか!

いや、まぁ、これが普通なら良いんだけど。

ってな訳で、さぁ、今日も新しい一日の始まりだ!

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