魔王の世界征服日記

Leiren Storathijs

第6話 征服の準備

俺は、隣の村との友好関係を更に深める為に村へ行ったが、予期せぬ王国騎士の到来により、村長の魔族との協力が暴かれ、王国の法律違反として村長が殺された。

村長が殺された事によって、俺の部下が怒り出し、魔族本来の凶暴性を表にした。

それによって、騎士は、魔物によって全滅した。

しかし、村長が殺される事で村全体の雰囲気が重くなってしまった。

「村長が死んじまった......俺たちはこれからどうしたら良いんだ......」
「みんな。村長が殺されのは、心苦しいと思うが、ここの村長はこれから俺がなる。別に村長の座を奪おうなんて考えてはいない。俺は、これでも一応魔王だからな。ここを拠点に騎士達に復讐をしようと思う。だからみんな協力してくれ」
「復讐か......しかし、王国騎士は言えば軍隊と言っても過言では無い」
「今すぐとは言ってないだろ?必ず復讐して、村長の仇を取るんだ。良いな?」
「わかった。でもしばらくこのショックは消える事は無い。だからまた今度村に来てくれ。村長は俺達が弔ってくる」
「おう。じゃあ俺は、一旦帰る。それまでみんな元気取り戻してくれよ!」

そうして俺と部下は魔王城へ帰った。

.........俺、本当に何してんだろ......。
これは、征服の第一歩と言えるのだろうか?一つの村を物資補給地点としながら、完全に俺の故郷になってしまった。最終的に征服したら、あの村に帰るのか?

『みんな!村長の仇を取ったぞ!やったな!あははは!』みたいな?完全にパッピーエンドになっちゃうよ?

そう村の事を考えていると、ウルフが首を傾げて、心配そうに俺の顔を見つめる。

そういや、ウルフも、仔犬から一気に成長したな。これが魔族と言う物か。しかも、銀毛の大型犬で、ある程度の物なら簡単に噛みちぎれるだろう牙も生えており、最初、俺が召喚する時のイメージとほぼ同じだ。

もしかして、召喚した魔物って覚醒したらみんなイメージ通りになるの?

しかし、その考えだと、一つだけ例外がある。『食用スライム』だ。

スライムは確かにゼリー状ではあるが、人の体に入れて良いものでは無いだろう。しかし、俺の作った食用スライムは、栄養満点、美容効果もある、完全なる珍食材なのだ。こいつが覚醒したらどうなるんだ?

そう考えていると、次は、ウルフが腹の音を鳴らす。

どうやら、先程倒した騎士では、腹いっぱいにならない様だ。

ウルフは、仔犬の時は、家畜の肉の千切り肉で十分だったが、大型犬になると、人間一人だけでは足らないらしい。このままだと、いずれ飢え、部下の共喰いが始まってもおかしくない。

さて、これからどうしようか。村の状況回復もまだ時間がかかりそうだし、ウルフも、騎士の頭蓋骨を咥えて空腹を我慢している。

「魔王よ、部下の召喚や物資の補給も大事だが、装備とかも揃えたらどうだ?」
「装備を買ってどうするんだ?何か意味があるのか?」
「そりゃあるに決まってるだろ。俺たち魔族は、ゲームみたいにレベルが上がる訳じゃ無いぞ?最終的には、王国騎士同等、もしくは、それ以上の装備がなければ、生身の俺達では、剣で簡単にぶった斬られる」

それもそうだった。何となく世界征服と言ってるが、これはゲームでは無い。どんなに強い魔物であろうとも、HPとかがある訳では無いので、下手すれば一撃でやられる可能性がある。

「と言っても、人間用の装備は何処にでも売ってるだろ。魔物用の装備なんて売ってるのか?例えばドラゴンとか、現に魔物が住み着いているのは、この魔王城しか無い。ドラゴンなんて飼育している所なんて無いだろ」
「それは......そうだな。しかし、ゴブリンや、ウルフ、俺トロールは、限りなく人か犬に近い魔物だ。それなら調達出来るだろう。ドラゴンや、巨大な装備は後々考えれば良い」
「よし。分かった。じゃあ何処か街へ行くか......って何処にあるんだ?」
「さぁ?」
「......周り草原しか無いからねー」

俺は、とりあえず何処かに隣の村以外に街が無いか展望台で探す事にした。

展望台に着くと、周り何処を見ても、草原。望遠鏡で覗いてみた。

「あ、あれ街じゃね?」
「遠いな......」

隣の村とは反対方向。草原のずっと先に、街らしき影が薄っすらと見えた。ただし、俺が使っている望遠鏡はそこまで高機能ではないので、レンズから見える距離は勘で確認するしか無い。

と言ってもここは、砂漠では無いので、オアシス並みの距離では無いだろう。

「見つけたなら早速行くぞ。ウルフを連れて」
「何故ウルフを連れて行く必要がある?」
「今、ウルフは、空腹が極限状態なんだ。街に着いてから何か食わせてやらねえと」
「そうか。お前、ウルフはもうお前の右腕じゃなくて、これは......ペットだな。そしてお前が飼い主だ」
「元からそのつもりだ。右腕は、ウルフに与えてあげた勲章の様な物だ。仔犬の時であっても、飼い主から名前と勲章を受け取るのは、自分の存在価値があるとして嬉しいだろ?」
「そ、そうだな......(魔王、お前犬好きなのか?)」

そうして、俺は、トロールとゴブリン達に見送られながら、ウルフと街へ出かけた。

道中、ただ広い草原が続き、勿論他の魔物も見えないが、どれ一つも目指している街以外何も見えない。

これほど広く、何も無いと、流石に淋しいし、移動も楽では無い。馬車一つも通らないんなんて、どうなっているんだ?ここら辺は。

しばらく歩くと、ようやく目指している街が見えて来た。そう、遠くからは見えなかったが、正に街である。

ウルフの様子を見ると、乾きも来たのか、涎をダラダラと垂らし、歩く速度も落ちていた。急がなくては餓死してしまうんじゃ無いかと、すぐに見える街に急いだ。

やっと街に着くと、嫌な物を見てしまった。街の入り口に二人、王国騎士の見張りが居た。

「そこの者、止まれ。ここを通るなら、通行証はあるか?」
「えぇ?そんな物持ってねぇよ......」
「ここ最近、魔物の目撃情報と、盗賊の被害届けが出ているんだ。怪しい者が入らない様に通行証が無ければ通す事は出来ないんだ」
「いや、待ってくれよ。ここまで歩いて来たってのに」

そこで、もう一人の騎士が俺に質問する。

「お前はこの街に何をしに来たんだ?」
「あー、こいつの飯と装備を買いに来ただけだ」
「かなり大きい犬だな。しかも、衰弱しているでは無いか......」
「だから出来れば急いでほしいんだが......」
「分かった。なぁ、こいつは俺が見張るから、中に入れさせてくれないか?」
「は?だが......」
「このまま、餓死させるのは可哀想だろ。すまないが、無理矢理でも入れる。後は頼む」
「おい!待てよ!」

話めっちゃ分かる騎士もいるんだなぁ......。これは、助かった。

一人の騎士によって見張りを付けながら、街に入る事が出来た。

「その犬の名前は?」
「ウルフだ。でけぇ犬だろ」
「あぁ、まるで雪山にいる魔狼並みにでかいな」
「え?そんな奴いるのか?」
「あぁ。雪山に、守護神とも言われる程のでかい狼が居てな、俺達が何度近付こうが、入り口付近で追い返されるんだ」

これは、良いことを聞いた。そいつを仲間にすれば、相当強力な部下が作れる。

「因みに、そいつはいつからそこに現れたんだ?」
「数千年前にとある勇者が魔王を倒して以来だ」

え......。まさか、生き残りか!?こいつは嬉しすぎる情報だ。諦めていた記憶が取り戻せるかも知れない!

「どうした?」
「い、いやなんでも無い。それより、早くウルフになんか食わせてやらないと」
「そう言えば金は持ってるのか?」
「ん?あぁ。金は道端に落ちていた騎士の装備を売ろう思っててな」
「あぁ、散策隊の死体か......武器屋であれば高く買ってくれるぞ」
「え?良いのか?お前らの仲間の装備だぞ?」
「あぁ、別に人が拾った物を奪って『これは王国騎士の物だ!』なんて言えないからな......」
「そ、そうか」
「よし、まず金よりウルフ君の調子がまた悪くなってるぞ。金は俺が出すから、好きな物を食わせてやれ」

こいつは一体どこまで人が良いんだ。まさか、こいつもウルフが好きなのか?

「ありがとう。ウルフ!ここにある何食っても良いってよ。あ、人間は駄目だぞ?」

飲食店に着いたので、ウルフが食いたい物を食わせてやった。

しかし、腹いっぱいに食わせたのは良いものの、金を払ってくれた騎士が笑顔でも呆れた感じに財布が空っぽになった事を確認していた。

「あはは......まさかここまで食うとは......」
「ワン!」

ウルフも、元気になった様だ。騎士の財布の事も何も気にしていない感じだった。

「よし。次は武器屋だな。俺は金がなくなったから君が装備を売って買ってくれよ?」
「あぁ、ありがとう」

やばい。さっきから俺は、魔王だってのに、感謝しかしてない......これじゃあただの犬連れの放浪人じゃねぇか......。

という訳で、武器屋に来たので騎士の装備を売り、部下達の装備を買うことした。

「えーっと、ゴブリンとトロールとこれから増やす部下だろ......」
「ん?そんなに買うのか?どう見てもウルフ君に合わない装備も買っている様だが......」
「あぁ、自分の住んでる町の方で待ってる仲間がいるんだ。そいつらの装備も買っているところだ」
「へぇ〜仲間の装備も買うとは良い人なんだねぇ。それで、仲間達は君の帰りを待っているだけとは、変な奴らだなぁ」

まぁ、あの見た目じゃ街に入れないだけなんだけどな......。
トロールは、緑色の体でとにかくでかい。
ゴブリンは、赤い体でなんか角が生えてる。

「あ、あぁ。そうだな」
「よし。これで君の目的は終わりか。良かったらまた来てくれ。君の為に通行証作っといたよ」
「マジかよ。本当に感謝しっぱなしなんだが」
「それが王国騎士の仕事だからね」

これによって俺の王国騎士への考えが変わった気がした......

そして、その騎士は、ウルフをよしよしと撫で、元気でなと言い残し、俺の手に何か袋の様な物を渡した。帰ったら見て欲しいらしい。

そして、俺に手を振って見送った。

「さぁて、良い街だったなウルフ!魔王城に帰るぞ!」
「ワン!」

その時の俺は、非常に満足し、ウキウキした状態だった。

こうして俺の部下達への買い物は終わった。


          

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