女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜
第74話 事の前
「と、言う訳でここへ来るのはちょっと長い間難しくなりそうなんだ」
「そう……なのか……」
魔族の件やレオルとの簡易的な約束(?)をパルメに伝えた。人間の王――最も大きい、元の世界で言えばアメリカみたいな感じの国があるらしいからそこへ行く事になったと。
俺が来た時はテンションマックスだったのが、一気に急降下したようだった。犬みたいだなこいつ。動物みたいな可愛さ。
それにしてもめっちゃしょんぼりしてるな。
流石に申し訳なくなってくる。
……仕方ない。
「パルメ、デートしようぜ」
「デート?」
「ああ。仕事なら後で俺も手伝うからさ。今日は目いっぱい遊ぶぞ」
まぁ手伝うと言ってもたかが知れてるのだが。
息抜き程度にはなるだろう。
◆
「祭りの時以来だなー、ユウトと歩くの」
「そうだな」
以来、と言ってもそんな昔の事ではないが。
パルメは忙しい。アホの子だが、仕事が出来ない訳ではない(らしい)ので尚更だ。ちなみにレオルは暇そうにしている。が、多分あれはあれで忙しいのだろう。
あの話をした後すぐに飛んでっちゃったからな。
もしかしたらラリアからすぐにでも離れたかったのかもしれないが。
……いや、一応仲直りって形になったんだから流石にそんな大人げない事はしないか、あいつも。
竜の海は、俺が初めて来た時とほとんど変わらない程に復旧していた。
そもそも町にはあんまり被害が出てなかったらしいが。
ちなみに。
竜王とその嫁さんが普通に歩いてたら騒ぎになってしまうので、セレンさんが化粧の魔法? みたいなのをかけてくれた。
俺たち同士ではいつも通りに見えているが、他の人たちから見たら全くの別人に見えるらしい。
便利だなぁ魔法。
勿論誰もが使える魔法ではないらしいが。
みんな使えたら吸血鬼のお株が奪われてしまう。
「なあユウト」
「うん?」
「どれくらいかかりそうなんだ?」
「そうだな……」
なんて言ったっけかあの国。
とりあえず移動手段としては船と竜車らしいが、移動と交渉とまた移動とで……半年ぐらいだろうか。交渉がスムーズにいけばまた違うのだろうが、行って即オーケーを出してくれるわけでもないだろう。多分。
竜人と吸血鬼と人間。
この三つが結ばれれば、後は大規模な勢力はエルフ族だけだ。
魔族だけに集中するんじゃなくて、魔神にも警戒しないといけないんだよな。厄介だ。本当はパルメも連れていきたいんだがなぁ。俺の目の届く範囲にいて欲しい。本音はな。戦力的な意味でも大きいし。
流石に竜の海的には納得のいくものではないだろう。
「とりあえず半年ぐらいだろうな。そうしたら一回戻って来るけど、魔神とかの動きも警戒しつつだとエルフとの和解は難しそうだな……一年くらいかかるんじゃないか」
「そっか……」
落ち込む――とは違った様子で考え込むパルメ。
こいつ黙ってれば無茶苦茶可愛いのになぁ。
言動がアホの子過ぎて、なんというかこう、恋愛対象として見れてない。俺に好意を寄せてくれてるのは分かるんだが、子どもに好かれてるみたいだ。
「なあユウト。あそこ入ろう」
「あそこ?」
パルメが指さした場所は、なんというか城っぽい建物だった。如何にもファンタジーな感じの。こんな建物あるんだな。
「何するとこなんだ?」
「うーんと……お酒とか飲んだり歌とか歌ったり」
カラオケか。
この世界にもあるんだな。
でも俺、この世界の歌とか全然知らないぞ。まともに覚えてる曲なんてロード〇ブメジャーとかバンプオブチ〇ンとかの有名どころくらい。
ミーハーなんです。
音楽とかそれほど興味あった訳じゃないから大体うろ覚えだ。絶対歌える自信があるのなんて幼稚園児とかが歌う民謡くらいだぞ。
「と、とにかく行こう!」
「分かったから。押すなって」
なんかちょっと様子がおかしいな。
先に酒でも飲んだのか? 落ちてるもんとか食ってないだろうな。
入ってみると、物凄く目がチカチカした。
小学生みたいな感想になって申し訳ないが、チカチカするんだよ本当に。色んな色があってごちゃごちゃしてる感じ。
受け付けのところへ行き――
「ど、どうしよう。あたしやり方知らない」
「ええ……」
俺も知らんよ。
「大人二人で」
「……? はい、二名様ですね。こちらのお部屋へどうぞ。お時間は?」
なんか首を傾げられた。
おかしい事言っただろうか俺。
「無制限で!」
と言ったのはパルメだった。
無制限なんてあるの? と思ったら店員さんは普通に頷いて、部屋のある場所を伝えられた。
何かさっきからおかしい気がする。
取返しのつかない場所まで誘導されていっているような……
ここカラオケなんだよな?
他の部屋から音楽とか全然聞こえてこないけど。
そもそもそういう機械とかあんのかなこの世界。
見た事ないけど。
部屋に入って、ようやく俺はここが何なのか分かった。
巨大なベッド。
シャワールーム。
大人の玩具(っぽいやつ)。
うん。
ラブホだねこれ。
そう言えば元の世界でもラブホの外見ってあんな感じのあったよ。何かおかしいと思ってたんだ。カラオケなはずなのに歌は全然聞こえないし。
大人二人で、と言った時に首を傾げられたのも当然だろう。
子どもが来る場所じゃないもんここ。
パルメを侮っていた。
これがミラとかだったら最初から警戒出来たのだが。
「お前、ここがどういう場所か知ってて連れてきたのか?」
「こうでもしないと子作りしてくれないと思って」
若干もじもじしながら言うパルメ。
子作りって……
ダイレクト過ぎるだろうこいつ。
もうちょっと包めよ。オブラートに。あれ美味しいよなオブラートに包まれた飴みたいなやつ。名前知らないけど。
「一年……そういう事か」
大体10ヵ月くらいなんだよな、確か。
ギリギリ間に合うか間に合わないかぐらいの感じ。
「セレンたちに許可はとってある」
「マジかよ」
根回し良いなパルメのくせに。
じゃあ、俺から聞く前に知ってたのか。
こいつ案外役者だな。
気付かずにここまでのこのこついて来てしまった俺が馬鹿過ぎるというのもあるが。まさかパルメに一杯食わされるとは思わなかった。
ていうかやっぱりパルメの中ではセレンさんが正妻扱いなんだな。
正妻より先に子どもを産むかもしれないという事を先に伝えておくのか。一夫多妻制ってめんどくさいな。俺が選択した事ではあるんだけど。なし崩し的に。
……というかそういう状況に陥ったのもこいつの行動の結果なんだよな。
レオルを納得させるために仕方なく、とあの時は思っていたが、あれももしかしたらパルメの役者根性の結果なのかもしれない。
しれないだけで真実は知らないが。
「……間に合わないかもしれないぞ」
「別に。男いなくても子どもは産める」
その通りだが。
そもそも俺の気持ちはどうなんだ。
うん、否定的なものはないな。
見てくれは可愛いし、こいつと接してきて人間的に好きな部分も出てきた。些か早い気もするが、そんな事言ったらセレンさんもミラもそうだしな。ディーナはまだだが。
だがしかし、子どもを残して旅に出るって死亡フラグみたいでちょっとやだな。
どっちの意味でも。
俺の方でも、パルメの方でも。
「まぁ、流石にあたしでもここへ来てさぁやるぞってならないのは分かってる。だからお酒とか薬とかの力を借りてやろう」
「それはお前、悪い男がやる手だろ……」
レディキラーとか呼ばれる酒があるらしいしな。
甘くて飲みやすいのに度数が高くてべろんべろんになりやすいって言う。それにしてもこいつ今さらりと薬と言ったが、それは合法なんだろうな。
「大丈夫。竜の海で密かに流行っているらしい、ただの媚薬だ」
「媚薬なんて言葉をまさか自分の耳で聞く日が来るとは……」
ファンタジーって凄いな。
小説よりも奇なりってか。
「さぁ、まずは飲もう。飲んでそういう雰囲気になろう!」
「やっぱお前馬鹿だよ……」
冷蔵庫からアルコールが入っていると思われる瓶を取り出し、テーブルの上に逆さに置いてあったグラスに並々と注ぐパルメ。
別に俺、酒が好きな訳じゃないんだけどなぁ。
未成年だし。
日本の法律だったらアウトだ。
ここ日本じゃないけど。
でもなんかこう。
なんとなく二十歳まではやめとこうかなって思ってたんだけどね。
好奇心にはやっぱ抗えないんだよ。
法律で縛られてないなら別にええやんって感じで手を出してしまった。別にうまいとは思わなかったから日常的に飲む訳じゃないが。
……まぁ、こういう時ぐらいはいいか。
ビールとかただの苦い液体だと俺は思ってるけど、それでも酔うには酔うしな。
とりあえずあれだな。
飲む前にシャワー浴びとくか。
「そう……なのか……」
魔族の件やレオルとの簡易的な約束(?)をパルメに伝えた。人間の王――最も大きい、元の世界で言えばアメリカみたいな感じの国があるらしいからそこへ行く事になったと。
俺が来た時はテンションマックスだったのが、一気に急降下したようだった。犬みたいだなこいつ。動物みたいな可愛さ。
それにしてもめっちゃしょんぼりしてるな。
流石に申し訳なくなってくる。
……仕方ない。
「パルメ、デートしようぜ」
「デート?」
「ああ。仕事なら後で俺も手伝うからさ。今日は目いっぱい遊ぶぞ」
まぁ手伝うと言ってもたかが知れてるのだが。
息抜き程度にはなるだろう。
◆
「祭りの時以来だなー、ユウトと歩くの」
「そうだな」
以来、と言ってもそんな昔の事ではないが。
パルメは忙しい。アホの子だが、仕事が出来ない訳ではない(らしい)ので尚更だ。ちなみにレオルは暇そうにしている。が、多分あれはあれで忙しいのだろう。
あの話をした後すぐに飛んでっちゃったからな。
もしかしたらラリアからすぐにでも離れたかったのかもしれないが。
……いや、一応仲直りって形になったんだから流石にそんな大人げない事はしないか、あいつも。
竜の海は、俺が初めて来た時とほとんど変わらない程に復旧していた。
そもそも町にはあんまり被害が出てなかったらしいが。
ちなみに。
竜王とその嫁さんが普通に歩いてたら騒ぎになってしまうので、セレンさんが化粧の魔法? みたいなのをかけてくれた。
俺たち同士ではいつも通りに見えているが、他の人たちから見たら全くの別人に見えるらしい。
便利だなぁ魔法。
勿論誰もが使える魔法ではないらしいが。
みんな使えたら吸血鬼のお株が奪われてしまう。
「なあユウト」
「うん?」
「どれくらいかかりそうなんだ?」
「そうだな……」
なんて言ったっけかあの国。
とりあえず移動手段としては船と竜車らしいが、移動と交渉とまた移動とで……半年ぐらいだろうか。交渉がスムーズにいけばまた違うのだろうが、行って即オーケーを出してくれるわけでもないだろう。多分。
竜人と吸血鬼と人間。
この三つが結ばれれば、後は大規模な勢力はエルフ族だけだ。
魔族だけに集中するんじゃなくて、魔神にも警戒しないといけないんだよな。厄介だ。本当はパルメも連れていきたいんだがなぁ。俺の目の届く範囲にいて欲しい。本音はな。戦力的な意味でも大きいし。
流石に竜の海的には納得のいくものではないだろう。
「とりあえず半年ぐらいだろうな。そうしたら一回戻って来るけど、魔神とかの動きも警戒しつつだとエルフとの和解は難しそうだな……一年くらいかかるんじゃないか」
「そっか……」
落ち込む――とは違った様子で考え込むパルメ。
こいつ黙ってれば無茶苦茶可愛いのになぁ。
言動がアホの子過ぎて、なんというかこう、恋愛対象として見れてない。俺に好意を寄せてくれてるのは分かるんだが、子どもに好かれてるみたいだ。
「なあユウト。あそこ入ろう」
「あそこ?」
パルメが指さした場所は、なんというか城っぽい建物だった。如何にもファンタジーな感じの。こんな建物あるんだな。
「何するとこなんだ?」
「うーんと……お酒とか飲んだり歌とか歌ったり」
カラオケか。
この世界にもあるんだな。
でも俺、この世界の歌とか全然知らないぞ。まともに覚えてる曲なんてロード〇ブメジャーとかバンプオブチ〇ンとかの有名どころくらい。
ミーハーなんです。
音楽とかそれほど興味あった訳じゃないから大体うろ覚えだ。絶対歌える自信があるのなんて幼稚園児とかが歌う民謡くらいだぞ。
「と、とにかく行こう!」
「分かったから。押すなって」
なんかちょっと様子がおかしいな。
先に酒でも飲んだのか? 落ちてるもんとか食ってないだろうな。
入ってみると、物凄く目がチカチカした。
小学生みたいな感想になって申し訳ないが、チカチカするんだよ本当に。色んな色があってごちゃごちゃしてる感じ。
受け付けのところへ行き――
「ど、どうしよう。あたしやり方知らない」
「ええ……」
俺も知らんよ。
「大人二人で」
「……? はい、二名様ですね。こちらのお部屋へどうぞ。お時間は?」
なんか首を傾げられた。
おかしい事言っただろうか俺。
「無制限で!」
と言ったのはパルメだった。
無制限なんてあるの? と思ったら店員さんは普通に頷いて、部屋のある場所を伝えられた。
何かさっきからおかしい気がする。
取返しのつかない場所まで誘導されていっているような……
ここカラオケなんだよな?
他の部屋から音楽とか全然聞こえてこないけど。
そもそもそういう機械とかあんのかなこの世界。
見た事ないけど。
部屋に入って、ようやく俺はここが何なのか分かった。
巨大なベッド。
シャワールーム。
大人の玩具(っぽいやつ)。
うん。
ラブホだねこれ。
そう言えば元の世界でもラブホの外見ってあんな感じのあったよ。何かおかしいと思ってたんだ。カラオケなはずなのに歌は全然聞こえないし。
大人二人で、と言った時に首を傾げられたのも当然だろう。
子どもが来る場所じゃないもんここ。
パルメを侮っていた。
これがミラとかだったら最初から警戒出来たのだが。
「お前、ここがどういう場所か知ってて連れてきたのか?」
「こうでもしないと子作りしてくれないと思って」
若干もじもじしながら言うパルメ。
子作りって……
ダイレクト過ぎるだろうこいつ。
もうちょっと包めよ。オブラートに。あれ美味しいよなオブラートに包まれた飴みたいなやつ。名前知らないけど。
「一年……そういう事か」
大体10ヵ月くらいなんだよな、確か。
ギリギリ間に合うか間に合わないかぐらいの感じ。
「セレンたちに許可はとってある」
「マジかよ」
根回し良いなパルメのくせに。
じゃあ、俺から聞く前に知ってたのか。
こいつ案外役者だな。
気付かずにここまでのこのこついて来てしまった俺が馬鹿過ぎるというのもあるが。まさかパルメに一杯食わされるとは思わなかった。
ていうかやっぱりパルメの中ではセレンさんが正妻扱いなんだな。
正妻より先に子どもを産むかもしれないという事を先に伝えておくのか。一夫多妻制ってめんどくさいな。俺が選択した事ではあるんだけど。なし崩し的に。
……というかそういう状況に陥ったのもこいつの行動の結果なんだよな。
レオルを納得させるために仕方なく、とあの時は思っていたが、あれももしかしたらパルメの役者根性の結果なのかもしれない。
しれないだけで真実は知らないが。
「……間に合わないかもしれないぞ」
「別に。男いなくても子どもは産める」
その通りだが。
そもそも俺の気持ちはどうなんだ。
うん、否定的なものはないな。
見てくれは可愛いし、こいつと接してきて人間的に好きな部分も出てきた。些か早い気もするが、そんな事言ったらセレンさんもミラもそうだしな。ディーナはまだだが。
だがしかし、子どもを残して旅に出るって死亡フラグみたいでちょっとやだな。
どっちの意味でも。
俺の方でも、パルメの方でも。
「まぁ、流石にあたしでもここへ来てさぁやるぞってならないのは分かってる。だからお酒とか薬とかの力を借りてやろう」
「それはお前、悪い男がやる手だろ……」
レディキラーとか呼ばれる酒があるらしいしな。
甘くて飲みやすいのに度数が高くてべろんべろんになりやすいって言う。それにしてもこいつ今さらりと薬と言ったが、それは合法なんだろうな。
「大丈夫。竜の海で密かに流行っているらしい、ただの媚薬だ」
「媚薬なんて言葉をまさか自分の耳で聞く日が来るとは……」
ファンタジーって凄いな。
小説よりも奇なりってか。
「さぁ、まずは飲もう。飲んでそういう雰囲気になろう!」
「やっぱお前馬鹿だよ……」
冷蔵庫からアルコールが入っていると思われる瓶を取り出し、テーブルの上に逆さに置いてあったグラスに並々と注ぐパルメ。
別に俺、酒が好きな訳じゃないんだけどなぁ。
未成年だし。
日本の法律だったらアウトだ。
ここ日本じゃないけど。
でもなんかこう。
なんとなく二十歳まではやめとこうかなって思ってたんだけどね。
好奇心にはやっぱ抗えないんだよ。
法律で縛られてないなら別にええやんって感じで手を出してしまった。別にうまいとは思わなかったから日常的に飲む訳じゃないが。
……まぁ、こういう時ぐらいはいいか。
ビールとかただの苦い液体だと俺は思ってるけど、それでも酔うには酔うしな。
とりあえずあれだな。
飲む前にシャワー浴びとくか。
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