女神と一緒に異世界転移〜不死身の体と聖剣はおまけです〜
第44話 三人寄らば三人の嫁
「光のハイエルフか」
「……貴様は吸血鬼の王か」
吸血鬼とエルフ。
その頂点と頂点が、今ここで相対した。
なんっつうかよ。
安心感が凄いな。
敵だと思ってた時はただただこいつが怖かったのに。
味方の今は、何よりも心強い。
だが。
「邪魔すんなレオル。これは俺の戦いだ」
「……ふむ」
と頷いたレオルは、俺の首裏に手刀を喰らわせた。
……!!
お前、それ最悪死ぬやつなんだぞ……!
とか思いながら。
俺は気を失った。
◆
目を覚ますと、知らない天井だった。
……いや、嘘だ。
知ってる天井だ。
竜王の城の部屋だ。
多分、俺が泊まってた部屋。
……あの後どうなったんだ。
「目を覚ましたか、ユウト。良かった良かった。勢い余って殺してしまったかと思ったぞ」
「…………普通ここはセレンさんじゃないのかよ」
「そんな事を余に言われてもなぁ」
で。
「で、どうなったんだ」
「うむ。すまん、光のハイエルフは仕留め損ねた。が、戦争そのものは竜人側の勝利に終わった」
「……セレンさんやミラは」
「セレンとやらの事を余は知らんが、マリアの奴が全員無事だと言っていたぞ」
「……そうか」
そうか。
それなら良かった。
「……その、ありがとな。助けに来てくれて」
「礼には及ばん。余が困ったら助けて貰うしな」
「喜んで助けさせて貰うよ」
こいつが困るような場面で俺が役に立つとは思えないが。
「そういえば、光のハイエルフって女じゃなかったのか? お前、口説いたとか言ってただろ」
「世代が一つ変わっていたようだな。前は女だったのだ」
そうなのか。
……こいつ何年生きてんだ。
エルフは長生きと聞いていたが、そのエルフの世代が変わってもこいつは生きてるとなると何百年とかいう単位じゃないんじゃないか?
「いずれにせよ、これでエルフ族とは完全に敵対したがな」
「……竜王の城にお前がいるってことは、竜人とは手を結ぶって事で良いのか?」
「仕方ないだろう。友人の嫁が長では余も手を出せん」
「…………」
あれ? 退路封じられてね?
これで俺がパルメは嫁じゃないとか言い出したらこいつ何しでかすか分からんぞ……
どうしよう。
「……俺はパルメと結婚した覚えはないんだが」
「そうなのか? じゃあ奴は嘘つきだな。殺そう」
「冗談だ冗談。おいおい、冗談も通じないような奴だったのか吸血鬼の王ってのは」
「ふむ。余は気付いていたぞ。お前も面白い冗談を言うものだ」
やばい。
かなり危ういバランスで吸血鬼と竜人が繋がっている。
しかもそのトップ同士がやろうと思えば殺し合いを出来てしまう距離にいる。
どっちが勝つかは分からないけど、どっちが勝っても俺に得は無い。損しかしない。
どっちも馬鹿なのがやばい。
一番やばいのがそこなんだよ。
と、ちょうどそのタイミングで
「邪魔するぜ!!」
バァン、と扉を開けて入ってきた奴。
言わずとも分かるだろう。
パルメだ。
「……竜王か」
「げ。吸血鬼の王」
げ。とか言うな。
何がきっかけで爆発するか分からない爆発物を抱えている気分だ。
「邪魔をしに来たなら帰るんだな。余はユウトと大事な話をしている」
「あたしだってユウトと話に来たんだ。そもそもここはあたしの家だぜ」
落ち着けお前ら。
ステイクールだ。
クールに行こうぜ。
吸血鬼とか冷血なんじゃないのかよ。
超熱血じゃん。
熱血馬鹿じゃん。
「よーしパルメ。俺の嫁。こっちに来い。お前は邪魔なんかじゃない。邪魔なんかじゃないぞ。それからレオル。お前は俺の友達だ。ここで暴れるなよ。嫁の家って事は俺の家でもある。暴れるな」
とにかくこの爆発物共の導火線をどうにかしてぶった切るしかない。
その方法は今のところ思いついてないが、爆発を延ばしながら考えよう。
「分かった。あたしはユウトの嫁だから旦那に従う」
「ふむ。確かにユウトの家を壊すのは忍びないな」
こえー。
どうしようこいつら。
「レオル、心配してくれてありがとな。助太刀もマジ助かった。だがそろそろ帰らないと仕事とか溜まっててヤバいんじゃないのか?」
「ゆむ。故に帰りたくない」
「ただのダメ男じゃねぇか! 早く帰れ!」
「マリアに叱られるのだ……」
「叱られて懲りろ!」
俺を看ててくれたのは助かるが、それってもしかしなくても仕事をしなくて良い言い訳に使っていただけだろう。こいつ、友情をなんだと思ってやがる。
「まぁ冗談は冗談として置いといて、そろそろ余は帰るつもりだった。……竜王と話してな」
「今の竜王はユウトだ。あたしは引退だな」
えっ。
「ふむ。竜王がユウトに代わるのか。ならば改めて言う必要もないな。竜人と吸血鬼、手を取り合って行こう」
えっ。
レオルは何やら満足気な顔で帰っていった。
死の山も海も森も消えた今、ちょっと遠いだけの場所になっているのだ。レオルくらいの吸血鬼だったらちょっと行ってくると言って来れてしまうような関係になってしまった。
……えっ?
「俺、竜王なの?」
「うん。そうだぞ」
いつの間にそんな事になったんだ。
竜人じゃないのに。
これからも旅する気満々だったんだけど。
「あぁ、仕事は引き続きあたしがやるからいーよ。でも、名義上はユウトになるから印鑑とかが変わるくらいだな」
ちょっと待って。
放って置いたら引き返せなくなる気がする。
「俺とお前って結婚したっけ?」
「さっき俺の嫁って言ってくれたじゃないか」
吸血鬼の王がそう言わないと納得しなさそうだったからね。
いやでも言ってしまったからには結婚しないといけないのか……?
俺はハーレムでも一向にかまわないが、正妻たるセレンさんに意見を聞かないとまずいんじゃないか?
「セレンとミラには話してあるぞ」
「えっ」
「ユウトがあたしと結婚して竜王になるって」
「なんですと」
それでなんて反応したんだあの二人は。
「二人も納得してくれてた。あたしは側室だし、二人の顔を立てないとな」
「いや、いやいやいや」
話がどんどん逃げられない方向に展開されて行く。神は俺を見捨てたのか。
とにかく二人に確認をとろう。
一体何がどうなってるんだ。
◆
「今、優斗さんは半強制的に……いわゆるハーレムな状態になってます」
おぉう……
セレンさんの口からハーレムなんて言葉が聞ける日が来るなんて。
「吸血鬼の王は、優斗さんが竜王なら竜人と手を結ぶと言っていました。もう完全にその気になってます。優斗さんが竜王になる場合と言うのは、優斗さんが既に結婚していて本妻がいる状況で、そこに現竜王……パルメさんが側室に加わる場合になります」
「で、パルメもその気だからもう俺に逃げ道はない、と。ついでにセレンさんにも逃げ道ないですよね」
本妻――正妻を選ぶならセレンさんだ。
これは譲れない。
「……まぁ、そうなりますよね。立場上、現在優斗さんは私の夫です。ミラちゃんの夫でもあり、パルメさんの夫でもあります」
「……ミラは別に加えなくても良かったんじゃ」
「ボクだけ仲間外れとか嫌だし」
……という事だった。
何か知らない間に嫁が出来てました。
それも三人。
……えぇ……。
「……貴様は吸血鬼の王か」
吸血鬼とエルフ。
その頂点と頂点が、今ここで相対した。
なんっつうかよ。
安心感が凄いな。
敵だと思ってた時はただただこいつが怖かったのに。
味方の今は、何よりも心強い。
だが。
「邪魔すんなレオル。これは俺の戦いだ」
「……ふむ」
と頷いたレオルは、俺の首裏に手刀を喰らわせた。
……!!
お前、それ最悪死ぬやつなんだぞ……!
とか思いながら。
俺は気を失った。
◆
目を覚ますと、知らない天井だった。
……いや、嘘だ。
知ってる天井だ。
竜王の城の部屋だ。
多分、俺が泊まってた部屋。
……あの後どうなったんだ。
「目を覚ましたか、ユウト。良かった良かった。勢い余って殺してしまったかと思ったぞ」
「…………普通ここはセレンさんじゃないのかよ」
「そんな事を余に言われてもなぁ」
で。
「で、どうなったんだ」
「うむ。すまん、光のハイエルフは仕留め損ねた。が、戦争そのものは竜人側の勝利に終わった」
「……セレンさんやミラは」
「セレンとやらの事を余は知らんが、マリアの奴が全員無事だと言っていたぞ」
「……そうか」
そうか。
それなら良かった。
「……その、ありがとな。助けに来てくれて」
「礼には及ばん。余が困ったら助けて貰うしな」
「喜んで助けさせて貰うよ」
こいつが困るような場面で俺が役に立つとは思えないが。
「そういえば、光のハイエルフって女じゃなかったのか? お前、口説いたとか言ってただろ」
「世代が一つ変わっていたようだな。前は女だったのだ」
そうなのか。
……こいつ何年生きてんだ。
エルフは長生きと聞いていたが、そのエルフの世代が変わってもこいつは生きてるとなると何百年とかいう単位じゃないんじゃないか?
「いずれにせよ、これでエルフ族とは完全に敵対したがな」
「……竜王の城にお前がいるってことは、竜人とは手を結ぶって事で良いのか?」
「仕方ないだろう。友人の嫁が長では余も手を出せん」
「…………」
あれ? 退路封じられてね?
これで俺がパルメは嫁じゃないとか言い出したらこいつ何しでかすか分からんぞ……
どうしよう。
「……俺はパルメと結婚した覚えはないんだが」
「そうなのか? じゃあ奴は嘘つきだな。殺そう」
「冗談だ冗談。おいおい、冗談も通じないような奴だったのか吸血鬼の王ってのは」
「ふむ。余は気付いていたぞ。お前も面白い冗談を言うものだ」
やばい。
かなり危ういバランスで吸血鬼と竜人が繋がっている。
しかもそのトップ同士がやろうと思えば殺し合いを出来てしまう距離にいる。
どっちが勝つかは分からないけど、どっちが勝っても俺に得は無い。損しかしない。
どっちも馬鹿なのがやばい。
一番やばいのがそこなんだよ。
と、ちょうどそのタイミングで
「邪魔するぜ!!」
バァン、と扉を開けて入ってきた奴。
言わずとも分かるだろう。
パルメだ。
「……竜王か」
「げ。吸血鬼の王」
げ。とか言うな。
何がきっかけで爆発するか分からない爆発物を抱えている気分だ。
「邪魔をしに来たなら帰るんだな。余はユウトと大事な話をしている」
「あたしだってユウトと話に来たんだ。そもそもここはあたしの家だぜ」
落ち着けお前ら。
ステイクールだ。
クールに行こうぜ。
吸血鬼とか冷血なんじゃないのかよ。
超熱血じゃん。
熱血馬鹿じゃん。
「よーしパルメ。俺の嫁。こっちに来い。お前は邪魔なんかじゃない。邪魔なんかじゃないぞ。それからレオル。お前は俺の友達だ。ここで暴れるなよ。嫁の家って事は俺の家でもある。暴れるな」
とにかくこの爆発物共の導火線をどうにかしてぶった切るしかない。
その方法は今のところ思いついてないが、爆発を延ばしながら考えよう。
「分かった。あたしはユウトの嫁だから旦那に従う」
「ふむ。確かにユウトの家を壊すのは忍びないな」
こえー。
どうしようこいつら。
「レオル、心配してくれてありがとな。助太刀もマジ助かった。だがそろそろ帰らないと仕事とか溜まっててヤバいんじゃないのか?」
「ゆむ。故に帰りたくない」
「ただのダメ男じゃねぇか! 早く帰れ!」
「マリアに叱られるのだ……」
「叱られて懲りろ!」
俺を看ててくれたのは助かるが、それってもしかしなくても仕事をしなくて良い言い訳に使っていただけだろう。こいつ、友情をなんだと思ってやがる。
「まぁ冗談は冗談として置いといて、そろそろ余は帰るつもりだった。……竜王と話してな」
「今の竜王はユウトだ。あたしは引退だな」
えっ。
「ふむ。竜王がユウトに代わるのか。ならば改めて言う必要もないな。竜人と吸血鬼、手を取り合って行こう」
えっ。
レオルは何やら満足気な顔で帰っていった。
死の山も海も森も消えた今、ちょっと遠いだけの場所になっているのだ。レオルくらいの吸血鬼だったらちょっと行ってくると言って来れてしまうような関係になってしまった。
……えっ?
「俺、竜王なの?」
「うん。そうだぞ」
いつの間にそんな事になったんだ。
竜人じゃないのに。
これからも旅する気満々だったんだけど。
「あぁ、仕事は引き続きあたしがやるからいーよ。でも、名義上はユウトになるから印鑑とかが変わるくらいだな」
ちょっと待って。
放って置いたら引き返せなくなる気がする。
「俺とお前って結婚したっけ?」
「さっき俺の嫁って言ってくれたじゃないか」
吸血鬼の王がそう言わないと納得しなさそうだったからね。
いやでも言ってしまったからには結婚しないといけないのか……?
俺はハーレムでも一向にかまわないが、正妻たるセレンさんに意見を聞かないとまずいんじゃないか?
「セレンとミラには話してあるぞ」
「えっ」
「ユウトがあたしと結婚して竜王になるって」
「なんですと」
それでなんて反応したんだあの二人は。
「二人も納得してくれてた。あたしは側室だし、二人の顔を立てないとな」
「いや、いやいやいや」
話がどんどん逃げられない方向に展開されて行く。神は俺を見捨てたのか。
とにかく二人に確認をとろう。
一体何がどうなってるんだ。
◆
「今、優斗さんは半強制的に……いわゆるハーレムな状態になってます」
おぉう……
セレンさんの口からハーレムなんて言葉が聞ける日が来るなんて。
「吸血鬼の王は、優斗さんが竜王なら竜人と手を結ぶと言っていました。もう完全にその気になってます。優斗さんが竜王になる場合と言うのは、優斗さんが既に結婚していて本妻がいる状況で、そこに現竜王……パルメさんが側室に加わる場合になります」
「で、パルメもその気だからもう俺に逃げ道はない、と。ついでにセレンさんにも逃げ道ないですよね」
本妻――正妻を選ぶならセレンさんだ。
これは譲れない。
「……まぁ、そうなりますよね。立場上、現在優斗さんは私の夫です。ミラちゃんの夫でもあり、パルメさんの夫でもあります」
「……ミラは別に加えなくても良かったんじゃ」
「ボクだけ仲間外れとか嫌だし」
……という事だった。
何か知らない間に嫁が出来てました。
それも三人。
……えぇ……。
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