痴漢されている少女と目が合った時、僕は初めて人を助ける為の勇気を振り絞った

新米武術家

第11話 決戦

 俺は屋上の扉を開けた。
 目の前には恒彦が木製のチェアに座り込んでこちらを驚いた表情で見ていた。近くにはななく……天音がこちらを見て座っていた。

 「おい! お前! あいつ等はどうなった! なんでお前が両足でここに立ってるんだ!」

 「なんでって、倒したからに決まってるだろ」

 恒彦は立ち上がると震えた足と手を隠そうともせずに、こちらに銃口を向けた。

 「ひ、百人だぞ! マフィア直属の腕利きの傭兵だぞ! ふざけるな」

 「百人か。案外、手間取った訳だ」

 俺は歩きながら近付くと、恒彦は怯えた声をあげ、苦渋で歪んだ顔をする。撃鉄を起こすと再びこちらに向けた。

 「来るな! 来ると撃つぞ!」

 「撃つならちゃんと持って撃て。間違って自分の足に穴が開くことになるぞ」

 「ん?」

 恒彦は自分の足元を見る。今どきそんなのに引っかかるなよ。

 俺は勢いよく駆けていく。恒彦は驚いたようでリボルバーのトリガーを引き、乾いた音を鳴らすが弾丸は明後日の方向に飛んでいく。

 「俺は今からお前を殴る!」

 技術なんで度外視の顔面パンチをお見舞いする。おお! 思ったより飛んだな。

 「これがお手本だ」

 俺は恒彦の側により、つま先で軽く横腹を小突くも反応がない。伸びてるようだ。

 「保次郎様……」

 声のした方を向くと天音が身体を震わせながら俺の名前を呼んだ。
 
 「天音……迎えに来た」
 
 衝動に促されるまま天音に駆け寄る。
 手を縛られているようで解いてやる。
 今の今まで我慢していたんだろう。天音は俺に抱きつくと声を荒らげて泣いた。黒い長髪が頬を撫でる。

 「怖かったよ、怖かった!」
 
 「ごめんな遅くなって」

 少し躊躇ったが天音の頭に手を置いてゆっくり、ゆっくり撫でた。
 それともう限界だ……

 「天音……俺の携帯から執事に連絡してくれ……俺はちょっと疲れたから寝る」 

 俺は天音に待たれかかったまま目を瞑る。好きな人と身体を寄せているだけでこんなに安心感と多幸感があるなんて知らなかった。
 やっぱり俺は天音のことが大好きだ。

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