冷酷無比な殺し屋が一人の高校生となって異世界転生するとこうなる

Leiren Storathijs

出発

1週間の訓練が終わり、俺たちは、出発の準備を始める。

ウィクトル「ハッハッハ!皆の者良く頑張った。まだ、全体的にレベルも低く、魔王を倒すには到底届かないが、とりあえず、王国から出発する程の力を得たと儂は見る。これより出発する為、儂から最低限の装備を与えよう。これを着たら、また此処に戻って来るが良い」

すると、国王の隣に居た近衛兵だろう兵士が其々の職業に合った装備を渡していく。

俺に渡された装備を見ると、俺は少し驚く。

一見ただの黒く分厚いコート。フードは付いて無い。が、それは俺が現実世界で殺し屋の時に着ていた服だ。

葛城「何故これを……?」

兵士は黙って特に何も答える事は無かった。

俺は更衣室に入り、それに着替える。サイズもピッタリで、服全体から掛かる体への重さも同じ、着心地は最高だった。

そして俺はその服を着て1つ思い出す。ポケットを探ると、中には殺し屋の時に使っていた全く同じ銃が入っていた。

葛城「何故だ?これは俺が使っていた物……」

その銃を暫く見つめていると、銃に重なるように俺の視界にウィンドウが開く。


別次元のアイテムを検知
現次元に合わせてアイテムの変換完了

特殊スキル
完全実弾
威力 100%
『実体のある敵に、敵体力の100%ダメージ又は、種族、タイプに関係せず25%の確率で即死効果』


葛城「これで使える様になったのか……?」

俺はそのままポケットに仕舞い、更衣室を出た。王の居る広間に戻ると、全員らしい服を着ていた。

天野「見てくれよ俺の装備!まるでゲームの世界に居る見たいだぜ!」

瑠璃川「あたしは真っ白いロープ♪どう見ても丈合って無いけど、これはこれで良いかなぁ」

仁道「嘘だろ……俺、腕装備しか無えんだけど……」

神月「何この薄いロープ……どうりで防御力が低いわけだわ」

霧咲「……僕は天野とほぼ同じじゃ無いか!」

そう皆んな騒いでいると、俺の姿に気付くと何故か会話が止まる。

葛城「ん?どうした?」

霧咲「葛城君は……正に殺し屋だね……現実世界ではそんな服で活動していたのかい?」

葛城「そうだ……何故現実世界の服があるか謎だが、これほどピッタリな服は他に無いだろう」

そう言うと国王が満足げに言う。

ウィクトル「うむ。皆よろしい。では、各自出発するが良い」

そうして全員王国の正門に集まり、出発の声を上げる。

霧咲「良し!皆んな出発するぞ!」

しかしその声に応えた者は、天野と瑠璃川だけだった。

「「おー!」」

葛城「じゃあ、まず何処へ行けば良い?リーダー?」

そう言うと、突然白い光と共に見覚えのある青年が目の前から現れた。

謎の青年「やっほー!ゆー君だよ☆そこの殺し屋とは知り合いだから良いけど、皆んなは初めましてかな?」

霧咲「貴方は?」

謎の青年「んー僕の事は、死を呼ぶ精霊さんだと思ってくれていいよ♪」

葛城「不吉な名前だな……どうして死を呼ぶんだ?」

謎の青年「あのねぇ、僕は君達をこの世界へ転生させた張本人なんだよ?殺しても生かしても僕の自由」

すると、低い声で仁道が前に出てくる。

仁道「おいてめぇ……今何つった?」

謎の青年「やめたほうが良いよ?仁道君。君に勝ち目はゼロだ」

仁道「あぁッ!?舐めてんじゃねぇぞこのクソガキがぁ!」

そう言って仁道は、勢い良く青年を殴ろうとすると、謎の力で弾き飛ばされる。

仁道「このやろおおおお!……!?ぐわああああ!!」

そこで俺は謎の青年に情報分析を試みる。


名前:Unknown
種族:少なくとも魔族
職業:不明

Lv:E???

スキル:
・?????
<現在の情報分析能力では測定不能>



な、何なんだこいつ……。少なくとも魔族ってどう言う事だ?

謎の青年「へっ、まぁいいや。とりあえず君達の目的はこの先の小さな街へ辿り着く事だ。精々頑張ると良い」

そう謎の青年は言うと、静かに光となって消える。

葛城「……」

全く意味が分からない……俺を殺し屋から高校生に転生させ、異世界に転移させるとは……一体何が目的だ?

霧咲「そ、それでは皆さん。気をとりなおして隣街まで行きましょう!」

そうして俺たちは進行を始めた。

移動中、最も最初の初めての化け物と出会う。


名前:スライム
種族:最下級魔族、粘液タイプ

Lv:3
とても粘着力が強く、捕まったら最後。体中央の核が弱点。



霧咲「も、モンスターだ!」

神月「うぇ、気持ち悪い!」

天野「先手必勝!でりゃあああ!」

天野がスライムに斬りかかると、剣の刃が核に到達する前に、スライムの体液が絡みつき、天野の身動きを取らせなくする。

天野「ひえええ!嘘だろおおお!?」

葛城「どけ天野……」

俺は、天野の剣をスライムから退かすと、核を手掴みする。

スライム「モキュモギュ!?」

葛城「弱点が見えている敵に対して、武器など要らんッ!」

そう言う俺は、核を手で握り潰す。スライムは、核が破壊されると同時に破裂し、絶命する。

霧咲「葛城君は大胆だね……」

葛城「武器の耐久力や体力の消耗をしたくなければ、一番早い方法を選べ」

瑠璃川「わぁ……葛城君は握力が強いんだね!」

霧咲「……まぁ、全員無事なのは良い事です。先を行きましょう」

次に、体長50センチ程の化け物と出会う。どうやら人間の言葉は喋れるようだがとても不快だ。


名前:ゴブリン
種族:最下級魔族、餓鬼タイプ

Lv:5
女と殺戮しか好まない下等生物。集団行動は厄介。


ゴブリン「イイオンナ、ミツケタ!マワリ、オトコ、コロス!」

狙っているのは、神月と瑠璃川だとすぐに分かった。

神月「あら、こんな下等生物にも、私の美しさが分かるのね……。いいじゃない、飼ってあげようかしら?」

瑠璃川「ちょ、神月ちゃん!コイツ私達を攫おうとしてるんだよ!?絶対攫われらヤバイ事されるに決まってる!」

葛城「なら飼ってやったらどうだ?恐らく雄であるコイツにとっては本望かもしれん」

瑠璃川「葛城君まで何言ってんの!?」

葛城「冗談だ……」

俺は銃を召喚して、ゴブリンに向ける。すると、視界に情報が表示される。

『HSクリティカル確定』

これか……俺はゴブリンの頭を狙って一発撃ち込む。弾はゴブリンの頭を貫通すると、頭上に『HSクリティカル』と表示され直後、爆散する。

天野「一撃!?マジかよ……葛城の使ってる銃どんだけ強いんだよぉ」

しかし神月は残念そうだ。

神月「あら残念。結構本気だったんだけど……」

霧咲「麗奈……お前ってもしかして……」

葛城「Sだな。ゴブリンを飼って何をしたかった知らんが、大体予想はつく」

霧咲「葛城君……君って人は……まぁ、良い。先を行こう」

それから暫く進むと、街らしき影が見えた所で悲鳴が聞こえる。

商人「だ、誰か!助けてくれぇ!」

???「お前に恨みはない……だが、俺の刀の錆となれ」

側に倒れた大きな馬車があり、襲われている者は大きな鞄を背負っている。恐らく商人だろう。

商人は刀を持った人のような黒い影に、殺されそうになっていた。

そこに霧咲が突っ込む。

霧咲「止めろおおおお!!」

しかし霧咲に気付いた黒い影は、瞬間移動で霧咲との間合いを詰め、首を斬る。

霧咲「ぐわあああ!」


霧咲 勇人

Lv:10
体力:1/1000


霧咲「ひぃッ!?た、体力が!」

???「何者だ……お前に用は無い」

葛城「なら俺はお前に用がある」

俺はすかさず黒い影に銃を撃つ。しかし弾は貫通してもダメージが入っている気配はしない。


名前:スラッシャー
種族:上等魔族、魔人タイプ

Lv:45
略奪、占領を好む。辻斬り。



スラッシャー「なら、お前も斬る」

ここで俺はポケットにしまってあった銃を取り出し、直ぐに撃つ。

この完全実弾なら低確率だが、こいつを一撃で殺せる……。しかし弾は、貫通する事も無く、スラッシャーの刀によって弾かれた。

スラッシャー「人間、魔族を舐めるなよ?」

そうすると、スラッシャーは俺との間合いを一気に詰め、脳天目掛けて刀を上から振り下ろす。

その瞬間、仁道のタックルによって危機一髪、スラッシャーが突き飛ばされる。

仁道「葛城!お前が下手こくるったぁ珍しいじゃねぇか!」

葛城「前を良くみろ!」

仁道「あ?」

仁道の前には宙に浮いたスラッシャーが何か力を溜めており、次の瞬間、スラッシャーの刀は仁道の体、心臓部を貫く。

スラッシャー「影喰らい……!」

仁道「ぐああぁッ!?クッソがあああ!!」


拳士のパッシブスキル発動
【不屈の精神】
体力が10%以下になると、最大体力分のダメージを無効化する。


仁道「やりやがったな!クソ野郎!」

仁道は、スラッシャーの首を持ち上げ、地面に叩きつけると、馬乗りになって、スラッシャーを一方的に殴り始める。

スラッシャー「グ!人間め……まだ此処で死ぬ訳にはいかないッ!」

スラッシャーは、仁道の馬乗りから離脱し、姿を消した。

仁道「っかぁ〜!全くやってくれるぜ!」

葛城「いつのまにそんなスキル覚えていたんだな」

霧咲「それより商人が無事で良かった……大丈夫ですか?」

商人は服の砂を落としながら立ち上がると、嫌味そうにがっかりする。

商人「はぁ……大丈夫な訳無いだろ?アイツのせいで今日分の荷物が全部お釈迦になっちまったよ……お前らがアイツを逃すんなら、素直に荷物を渡せば良かった……」

霧咲「すみません……」

神月「ちょっと!命を守ってあげて何よその言い草は!」

商人「へぇ、見たところ皆んな餓鬼じゃねぇか。あのな、こっちは商売して生きてんだよ。これで今日の夕飯は抜きになっちまった!あーあ、誰か俺に金でも恵んでくんねぇかなぁ!」

俺は商人を黙らせる為に、どっしりとした金袋を渡す。

葛城「これで十分だろ」

商人「……おいおいマジかよこんなにあったら今日から1年は仕事無しで生きていられるぜ……いいのか?」

葛城「俺の稼いだ金だ。使い道に困っていた所だ」

商人「うっひょ〜最高だぜ!」

そうして商人は馬車を置いてけぼりに大喜びして去っていった。

霧咲「葛城君そんな金どこで?」

葛城「本職だ。今の袋に200万は入ってる」

瑠璃川「200万〜!?凄ーい!」

神月「そんな大金渡しても良かったの?」

葛城「まだあるから」

霧咲「ははは……殺し屋の世界なんて絶対行きたくないね……」

そう雑談しながら俺たちは漸く街に着いた。

街は然程大きくは無く、さっき見た様な商人の出入りが確認できる。雑貨屋や宿等、施設も充実しており、恐らく長距離移動する商人や旅人の中間地点なのだろう。

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