君が見たものを僕は知っている
第32話 それぞれの想い
私たちは蓮くんのお墓の前に来ていた。さっきケーキ屋さんで買った饅頭と花を供える。
「こんな見晴らしのいいところに建ててもらって良かったな」
信也くんは辺りを見渡して深呼吸している。
蓮くんのお墓は少し小高い場所にあった。町が見下ろせるような所だ。ここからは、良くいったカフェや学校、あの公園も見ることができる。
きっと蓮くんも喜んでいるのに違いない。
「よし、じゃあ報告会と行きましょうか」
信也くんいつものように場を仕切っている。
報告会とはその名のとおり、蓮くんに私達の近況を報告する会のことだ。
「うん。じゃあ、誰からいく?1人ずつの方がいいでしょ?」
凛ちゃんは信也くんと私の顔を交互に見る。
「じゃあ、俺が最初に行くよ!なんつったて蓮の1番の大親友だからな。蓮も俺の近況を気にしているだろう」
信也くんがゆっくりと墓石に近づいてしゃがみ込む。
「えっと~、まずは。あれ?何を話せばいいんだ?」
信也くんはおどおどとしている。
「いや、あんたが近況を報告するって言ったんでしょうが!?近況を早く教えてあげなよ!」
信也くんの背後から凛ちゃんの鋭い突っ込みがとんでくる。
きっと蓮くんはこのやり取りも笑いながら見ているんだろうな。
「蓮。俺は今めっちゃ勉強してるんだ。実は大学に行こうと思ってさ、凛と同じ大学に。ってもセンターまで時間はないんだけどな。まぁ、やれるだけやってみるつもり!
お前のおかげて嫌いな勉強も好きになれそうだよ。ありがとうな!凛は絶対に俺が幸せにするからな!」
満面の笑みを見せる信也くんの頭を、凛ちゃんがパシッと叩く。
「いっでぇ!なんだよ!」
信也くんは頭を擦っている。
「そんな恥ずかしいこと言ってないで、早くどいてよ!私の番!」
凛ちゃんは顔を赤く染めながら墓石の前に移動する。
「まぁ、今、この馬鹿がいったように今は勉強中。といっても信也に教えていて自分の勉強があまり出来ていないけどね。おかげで大学に受かるか不安になってきたよ」
信也くんが後ろから「なんだよそれ!」とヤジを飛ばしている。それを無視して凛ちゃんは続ける。
「今度ね家族で旅行に行くことになったんだ。温泉に入りにいって、家族団欒してくるね!こんなに毎日が楽しいのはきっと蓮くんのおかげだね!どうしようもない私の相談に乗ってくれてありがとうね!今、本当に幸せだよ!」
凛ちゃんはキラキラと輝く笑顔を見せている。
「よし!じゃあ、次は蓮くんの大好きな人の番だね!しっかりと伝えてあげるんだよ!1番知りたがってるのは、鈴佳ちゃんのことだろうからね!」
凛ちゃんはスッと立ち上がって、私の肩をポンポンと叩く。
私は凛ちゃんに促されながらゆっくりとしゃがみ込む。
「蓮くん。私はまだ将来のことはまだ考え中。でもね、迷いとかはないよ。自分が思ったことをそのままやろうってそう決めたの。今までの私は少し弱気だったから、強く生きようってそう思ったんだ。そう思わせてくれたのも蓮くんなんだよ!ありがとうね!」
私はそう言い終えて立ち上がろうとする。しかし、凛ちゃんにそれを制される。
「まだでしょ?まだ言ってないことがあるでしょ?ちゃんと想いを全部伝えてあげないとね!」
凛ちゃんはそう頬笑むと信也くんと少し離れた位置に移動する。
私はまた蓮くんに向きなおると、ゆっくりと目を閉じて、墓石に手を当てる。
「蓮くんはいつも真っ直ぐで、私が病気の時もあきらめないで励ましてくれてたよね。そんな優しくて真っ直ぐで心の強い、蓮くんが大好きだよ!私も蓮くんのように前を向いて歩くね!」
私はいつものように満面の笑顔を見せた。
運命には逆らえないし、知ることもできない。だから抵抗なんてもうしない。でも、流されるんじゃなくて、自分が乗っていこうと思う。
私達はもう一度、蓮くんに手を合わせて「またくるね」といって歩きだした。
蓮くんのいない世界にまだ少し慣れない。いや、違う。蓮くんはいつも心の中に、思い出の中にいる。私達と同じ笑顔で。
きっとまた思い出してしまうだろう。その度、悲しくなって、寂しくなって、でも幸せになって、嬉しくなって。
私達はきっと忘れない。蓮くんのことを。私達はいつでも4人で1つなんだ。
すると近くの草がガサッと動いた気がして、私はその方向に目を向ける。
一瞬だったけど、黒猫のようなものが通り過ぎた気がした。
「おーい、鈴佳ちゃん行くよ!」
信也くんの声で我にかえって私は歩き出した。
―――11月30日 23時45分
僕はアビスと名乗る悪魔と契約をした。アビスは鈴佳との契約についても話してくれた。鈴佳は僕を助けるために命をかけたんだ。今度は僕の番だ。
きっとあの時、鈴佳も僕を助けるために必死で、未来なんて見ていなかったのだろう。でも、最後に見た笑顔でわかった。鈴佳はその選択が間違いだったとは思っていなかったことを。
自分の命を犠牲にしてまでも助けたい人がいることを。今の僕には分かるよ。
それにしても黒猫って、思ってた悪魔と違うな。もっと禍禍しいものを想像していた。鈴佳もこの景色を見たんだろうな。こんな気持ちになったんだろうな。
僕も鈴佳と同じ景色を見れてよかったよ。同じ気持ちになれてよかったよ。
鈴佳が見たものを僕は知ることができたんだ。
「鈴。今までありがとう。大好きだよ」
「こんな見晴らしのいいところに建ててもらって良かったな」
信也くんは辺りを見渡して深呼吸している。
蓮くんのお墓は少し小高い場所にあった。町が見下ろせるような所だ。ここからは、良くいったカフェや学校、あの公園も見ることができる。
きっと蓮くんも喜んでいるのに違いない。
「よし、じゃあ報告会と行きましょうか」
信也くんいつものように場を仕切っている。
報告会とはその名のとおり、蓮くんに私達の近況を報告する会のことだ。
「うん。じゃあ、誰からいく?1人ずつの方がいいでしょ?」
凛ちゃんは信也くんと私の顔を交互に見る。
「じゃあ、俺が最初に行くよ!なんつったて蓮の1番の大親友だからな。蓮も俺の近況を気にしているだろう」
信也くんがゆっくりと墓石に近づいてしゃがみ込む。
「えっと~、まずは。あれ?何を話せばいいんだ?」
信也くんはおどおどとしている。
「いや、あんたが近況を報告するって言ったんでしょうが!?近況を早く教えてあげなよ!」
信也くんの背後から凛ちゃんの鋭い突っ込みがとんでくる。
きっと蓮くんはこのやり取りも笑いながら見ているんだろうな。
「蓮。俺は今めっちゃ勉強してるんだ。実は大学に行こうと思ってさ、凛と同じ大学に。ってもセンターまで時間はないんだけどな。まぁ、やれるだけやってみるつもり!
お前のおかげて嫌いな勉強も好きになれそうだよ。ありがとうな!凛は絶対に俺が幸せにするからな!」
満面の笑みを見せる信也くんの頭を、凛ちゃんがパシッと叩く。
「いっでぇ!なんだよ!」
信也くんは頭を擦っている。
「そんな恥ずかしいこと言ってないで、早くどいてよ!私の番!」
凛ちゃんは顔を赤く染めながら墓石の前に移動する。
「まぁ、今、この馬鹿がいったように今は勉強中。といっても信也に教えていて自分の勉強があまり出来ていないけどね。おかげで大学に受かるか不安になってきたよ」
信也くんが後ろから「なんだよそれ!」とヤジを飛ばしている。それを無視して凛ちゃんは続ける。
「今度ね家族で旅行に行くことになったんだ。温泉に入りにいって、家族団欒してくるね!こんなに毎日が楽しいのはきっと蓮くんのおかげだね!どうしようもない私の相談に乗ってくれてありがとうね!今、本当に幸せだよ!」
凛ちゃんはキラキラと輝く笑顔を見せている。
「よし!じゃあ、次は蓮くんの大好きな人の番だね!しっかりと伝えてあげるんだよ!1番知りたがってるのは、鈴佳ちゃんのことだろうからね!」
凛ちゃんはスッと立ち上がって、私の肩をポンポンと叩く。
私は凛ちゃんに促されながらゆっくりとしゃがみ込む。
「蓮くん。私はまだ将来のことはまだ考え中。でもね、迷いとかはないよ。自分が思ったことをそのままやろうってそう決めたの。今までの私は少し弱気だったから、強く生きようってそう思ったんだ。そう思わせてくれたのも蓮くんなんだよ!ありがとうね!」
私はそう言い終えて立ち上がろうとする。しかし、凛ちゃんにそれを制される。
「まだでしょ?まだ言ってないことがあるでしょ?ちゃんと想いを全部伝えてあげないとね!」
凛ちゃんはそう頬笑むと信也くんと少し離れた位置に移動する。
私はまた蓮くんに向きなおると、ゆっくりと目を閉じて、墓石に手を当てる。
「蓮くんはいつも真っ直ぐで、私が病気の時もあきらめないで励ましてくれてたよね。そんな優しくて真っ直ぐで心の強い、蓮くんが大好きだよ!私も蓮くんのように前を向いて歩くね!」
私はいつものように満面の笑顔を見せた。
運命には逆らえないし、知ることもできない。だから抵抗なんてもうしない。でも、流されるんじゃなくて、自分が乗っていこうと思う。
私達はもう一度、蓮くんに手を合わせて「またくるね」といって歩きだした。
蓮くんのいない世界にまだ少し慣れない。いや、違う。蓮くんはいつも心の中に、思い出の中にいる。私達と同じ笑顔で。
きっとまた思い出してしまうだろう。その度、悲しくなって、寂しくなって、でも幸せになって、嬉しくなって。
私達はきっと忘れない。蓮くんのことを。私達はいつでも4人で1つなんだ。
すると近くの草がガサッと動いた気がして、私はその方向に目を向ける。
一瞬だったけど、黒猫のようなものが通り過ぎた気がした。
「おーい、鈴佳ちゃん行くよ!」
信也くんの声で我にかえって私は歩き出した。
―――11月30日 23時45分
僕はアビスと名乗る悪魔と契約をした。アビスは鈴佳との契約についても話してくれた。鈴佳は僕を助けるために命をかけたんだ。今度は僕の番だ。
きっとあの時、鈴佳も僕を助けるために必死で、未来なんて見ていなかったのだろう。でも、最後に見た笑顔でわかった。鈴佳はその選択が間違いだったとは思っていなかったことを。
自分の命を犠牲にしてまでも助けたい人がいることを。今の僕には分かるよ。
それにしても黒猫って、思ってた悪魔と違うな。もっと禍禍しいものを想像していた。鈴佳もこの景色を見たんだろうな。こんな気持ちになったんだろうな。
僕も鈴佳と同じ景色を見れてよかったよ。同じ気持ちになれてよかったよ。
鈴佳が見たものを僕は知ることができたんだ。
「鈴。今までありがとう。大好きだよ」
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